ワンオペ育児ストレスでアルコール依存症になった主婦が立ち直った話
40代男性 ある日、子育てセンター利用者のB子さん(20代女性)から電話がかかってきました。

A子さん(30代女性)が昼間からお酒を飲んで、子どもをほったらかしているようです。きちんと子どものことを見ている様子がなく、交通量の多い道路で子どもだけでいる姿も何回か見ています。
先日も園のお迎えで子どもを乗せて自転車に乗っていて、転んでいるところに出くわしたので助けに行ったら A子さんから強いお酒の匂いがしたんです。これは通報しなければならないのだろうけど 自分でするのが怖いので センターで代わりに通報してくれませんか。
その連絡を受けたときには既に子育てセンターは閉所していましたが、所長はじめ職員全員がまだ帰っていなかったので、すぐさま情報共有をして、私が虐待対策部署へ通報を行いました。
A子さんについての調査はすぐに行われたようで、私にも事情聴取がありました。

この状況を最も把握しているであろうB子さんからも話を聴きたいのですが。
…ということだったので、B子さんに私から「協力してくれもらえませんか」お願いをして、私が同席するという条件で聴き取りに応じてもらいました。
さらに私と子育てセンターの所長が虐待対策チームに加わることになり、より詳しい調査に参画することになりました。
A子さんの過剰な飲酒行動は事実で、B子さんだけでなく園の先生や他の保護者、近隣住民もそのことを確認していました。
また、Aさんはいわゆる「ワンオペ育児」の状況下でストレスが溜まっていて、飲酒行動からアルコール依存傾向になっていたようでした。
そして虐待対策のチームとして、 子どもの安全を確保する Aさんの心理的負担に対応する アルコール依存の治療につなげる …といった3本柱で A子さんへの支援がスタートしました。
まず「子どもの安全を確保する」ことから、当初は子供を一時保護することが検討されました。
しかしA子さんの夫が事の重大さに気づいたことから 会社を時短勤務にしてもらうことができました。
そこで一時保護ではなく継続して園生活を送ってもらい、預かり保育などを利用したり、ファミリーサポートセンターを利用して子どもを預かってもらう方法を増やしました。
続いて「Aさんの心理的負担に対応する」ことから、臨床心理士がサポートにつくことになりました。
また、私たち子育てセンターも相談やお話に応じることで この部分の支援の一端を担いました。
A子さんは人と話すことが増えて、少しずつではありますが 負担感が軽減していった様子でした。
さらに「アルコール依存の治療につなげる」ことから、保健所の職員に介入してもらって、A子さんはアルコール依存治療を行っている病院への通院を開始しました。
また、B子さんが

断酒会というものがあるらしいです。私はアルコール依存ではないですけど、Aさんと一緒に断酒会に参加してもいいですよ。
…と申し出てくれたので 地域の断酒会を探して紹介してもらい、2人でそこに参加するようになりました。
これらの成果もあってA子さんの飲酒行動は比較的短期間でなくなりました。
夫の育児協力を得られたことや、園やファミリーサポートセンター、保健所、病院、断酒会、私たちの子育てセンターなど A子さんが「頼れるところ」が増えたことによって、彼女は少しずつ心理的にも安定するようになり、少なくとも今までのような育児放棄をすることはなくなりました。
アルコール依存の治療は長期戦でその後も通院を続けていますが、B子さんからは

Aさんは落ち着きを取り戻しつつあるのが目に見えてわかります。
…という報告をもらっているので、ひとまず安心できるところまでたどり着いた次第です。
アルコール依存症とアルコール中毒の違いは?
アルコール中毒は、短時間に大量にアルコール飲料を摂取した結果(いわゆるイッキ飲みなど)、意識を失い生命さえも危険な酩酊状態を呈する「急性アルコール中毒」と、長年にわたる大量の飲酒により生じるさまざまな問題を総称した「慢性アルコール中毒」に分けられます。
俗に“アル中”と呼ばれる状態は、厳密にはアルコール依存症のことを指します。アルコール依存症は「アルコール摂取に関するコントロールが効かなくなった状態」と定義されます。
一度アルコール依存症になってしまうと、ひとたび酒を飲みだすと「ほどほどでやめる」ということができなくなります。酔いつぶれるまで飲んでしまい、目が覚めるとまた酒を求める(これを「連続飲酒」と呼びます)ので、社会生活も家庭生活もうまくいかなくなります。それがお酒のせいであるとわかっていても尚、やめられなくなってしまうのです。
治療としては、断酒が理想とされます。一方で、そのための中間目標として、お酒の量を減らす「節酒」をまずは目指して治療を開始することもあります。これは、依存の程度や体質、生活の状況によっても変わりますので、主治医との相談が必要です。とにかく、「自分ではコントロールできない」のが依存症ですので、治療のためには医療機関の受診が必須です。 引用元:千葉県
