ワンオペ育児に疲れた!児童相談所への通報でネグレクトが解決した話
これは保護者が日常的に飲酒して子どもに虐待(ネグレクト)をしていた話です。
登場する人物
Aさん:30代、女性、子育てセンターの利用者
Bさん:20代、女性、Aさんの友達で子育てセンターの利用者
Cさん:年齢不明、女性、虐待対策部署の職員
子育てセンターの所長
ネグレクトの通報
2019年4月のある日、Bさん(20代女性)から電話がかかってきました。

Aさん(30代女性)が昼間からお酒を飲んで、子どもをほったらかしているようです。きちんと子どものことを見ている様子がなく、交通量の多い道路で子どもだけでいる姿も何回か見ています。
先日も園のお迎えで子どもを乗せて自転車に乗っていて、転んでいるところに出くわしたので助けに行ったら Aさんから強いお酒の匂いがしたんです。これは通報しなければならないのだろうけど自分でするのが怖いので センターで代わりに通報してくれませんか。
その連絡を受けたときには既にセンターは閉所していましたが、所長はじめ職員全員がまだ帰っていなかったので、すぐさま情報共有をして、私が虐待対策部署へ通報を行いました。
ワンオペ育児のストレスからアルコール依存症に
Aさんについての調査はすぐに行われたようで、私にも事情の聴き取りがありました。

状況を最も把握しているであろうBさんからも話を聴きたいのですが。
…ということだったので、Bさんに私から「協力してくれもらえませんか」お願いをして、私が同席するという条件で事情の聴き取りに応じてもらいました。
さらに私と所長が虐待対策のチームに入ることになり、より詳しい調査に参画することになりました。
Aさんの過剰な飲酒行動は事実で、Bさんだけでなく園の先生や他の保護者、近隣住民もそのことを確認していた様子でした。
また、Aさんはいわゆる「ワンオペ育児」の状況下でストレスが溜まっていて、飲酒行動からアルコール依存傾向になっていたようでした。
そして虐待対策のチームとして、
子どもの安全を確保する
Aさんの心理的負担に対応する
アルコール依存の治療につなげる
…という柱で Aさんへの支援がスタートしました。
子どもの安全確保
まず「子どもの安全を確保する」ことから、当初は子供を一時保護することが検討されました。
しかしAさんの夫が事の重大さに気づいてくれたことから 会社を時短勤務にしてもらうことができました。
そこで一時保護ではなく継続して園生活を送ってもらい、預かり保育などを利用したり、ファミリーサポートセンターを利用して子どもを預かってもらう方法を増やしました。
母親の心理的負担の対応
続いて「Aさんの心理的負担に対応する」ことから、臨床心理士がサポートにつくことになりました。
また、私たち子育てセンターも相談やお話に応じることで この部分の支援の一端を担いました。
Aさんは人と話すことが増えて、少しずつではありますが 負担感が軽減していった様子でした。
アルコール依存の治療
さらに「アルコール依存の治療につなげる」ことから、保健所の職員に介入してもらって、Aさんはアルコール依存治療を行っている病院への通院を開始しました。
また、Bさんが

断酒会というものがあるらしいです。私はアルコール依存ではないですけど、Aさんと一緒に参加してもいいですよ。
…と申し出てくれたので 地域の断酒会を探して紹介してもらい、2人でそこに参加するようになりました。
これらの成果もあってAさんの飲酒行動は比較的短期間でなくなりました。
夫の育児協力も得られたことや、園やファミリーサポートセンター、保健所、病院、断酒会、私たちの子育てセンターなどAさんが「頼れるところ」が増えたことによって、彼女は少しずつ心理的にも安定するようになり、少なくとも育児放棄をすることはなくなりました。
アルコール依存の治療は長期戦でその後も通院を続けていますが、Bさんからは

Aさんは落ち着きを取り戻しつつあるのが目に見えてわかります。
…という報告をもらっているので、ひとまず安心できるところまでたどり着いた次第です。
アルコール依存症とアルコール中毒の違いは?
【関連記事】アルコール中毒は、短時間に大量にアルコール飲料を摂取した結果(いわゆるイッキ飲みなど)、意識を失い生命さえも危険な酩酊状態を呈する「急性アルコール中毒」と、長年にわたる大量の飲酒により生じるさまざまな問題を総称した「慢性アルコール中毒」に分けられます。
俗に“アル中”と呼ばれる状態は、厳密にはアルコール依存症のことを指します。アルコール依存症は「アルコール摂取に関するコントロールが効かなくなった状態」と定義されます。
一度アルコール依存症になってしまうと、ひとたび酒を飲みだすと「ほどほどでやめる」ということができなくなります。酔いつぶれるまで飲んでしまい、目が覚めるとまた酒を求める(これを「連続飲酒」と呼びます)ので、社会生活も家庭生活もうまくいかなくなります。それがお酒のせいであるとわかっていても尚、やめられなくなってしまうのです。
治療としては、断酒が理想とされます。一方で、そのための中間目標として、お酒の量を減らす「節酒」をまずは目指して治療を開始することもあります。これは、依存の程度や体質、生活の状況によっても変わりますので、主治医との相談が必要です。とにかく、「自分ではコントロールできない」のが依存症ですので、治療のためには医療機関の受診が必須です。
引用元:千葉県