うつ病から引きこもり無職になった人が障害者雇用で社会復帰した話
これは2015年5月~2016年7月にあった、大人になってから発達障害がわかった人が社会復帰した話です。
登場する人物
Aさん:30代男性、発達障がい者
Bさん:30代男性、Aさんの友人
Cさん:40代男性、精神保健福祉士
Dさん:男性ハローワーク職員
私:30代男性、社会福祉士(相談窓口担当)
うつ病から引きこもり無職になった人を精神医療につないだ
Aさん(30代男性)は元々は会社員として働いていましたが、2014年の夏ごろからうつ病で休職しはじめました。会社側は「休職期間は1年間あるからゆっくり休むように」…と伝えていたのですが、Aさんは年度末で自主的に退職してしまいました。
退職しても失業保険などの手続きをすることなく、家にひきこもり外出すらできないような状況でした。
Aさんが休職しはじめたころから 時々電話で話を聴いていた友人のBさん(30代男性)は「どこかに相談に行こう」と勧めて、2015年の5月に二人で相談窓口にやってきたのです。
Aさんは窓口で話を聴く限りは普通の人に見えましたが、うつ病に至った理由を尋ねると

さほど忙しい仕事ではなかったものの チームワークが取りづらくて ストレスが溜まっていました。
そのことから精神保健福祉士のCさん(40代男性)にも話に入ってもらい、より詳しい話を聴きました。
Aさんの自覚としては、こだわりが強く 人に押しつけやすかったことや、他の人のやり方が気に入らないとイライラしてしまう…ということでした。

働きたい気持ちはあるけれど、チームワークが求められる仕事や その点に配慮してもらいやすい仕事が見つかりそうにない。うつ病の症状もなかなか良くならないから 絶望的な気持ちになっている。
Bさんからは

Aさんは元々成績優秀で有名大学も卒業していて能力は高いのだけれど、趣味がマニアックで ちょっと風変わりな面もある。なんとなくですけど、最近よく聞く「大人の発達障害」っぽく見えます。
Aさんの通院先を聴くと精神科専門医ではなく、内科・神経科・心療内科を標榜し、医師も内科の専門医でということでした。
そのことからAさんを精神医療につなぐことと、仕事で社会復帰できる方法を考えることになりました。
アスペルガー症候群の診断
まず、Cさんは精神保健福祉士の仲間や心理士などのネットワークを活用し、Aさんが通いやすい場所にある精神科専門医がいる医療機関を探しはじめました。
また、Bさんが言っていたように大人の発達障害の可能性があるならば、それも判断できる医師がいるところを探したところ、Cさんの知人の心理士がZ病院を紹介してくれました。

通院先をZ病院に変更してはどうですか?
…と勧めたところ、Aさんは当初は渋っていましたが、Bさんからの説得もあって 病院を変更することに決め、2015年7月にZ病院を受診しました。
Z病院では心理検査や知能検査なども行ってもらうことができ、その結果 2015年9月にAさんは自閉症スペクトラム(アスペルガー症候群)と診断されました。
発達障害なら精神障害者保健福祉手帳を取得し障碍者雇用の道も
Z病院の医療ソーシャルワーカーから

発達障害のある人は精神障害者保健福祉手帳を取得できる可能性がある。手帳があれば障害者雇用に応募できるし、障害者雇用なら配慮もしてもらいやすい。
…と情報提供を受けました。ただし初診から6ヶ月が経過する必要があるため、AさんはBさんの協力もあって通院を続けました。
そして2016年3月に精神障害者保健福祉手帳を申請し、同年5月に3級の手帳が交付されました。そのころにはAさんのうつ状態はかなり良くなっており、労働意欲もありました。
手帳を取得してすぐにハローワークへ行き、障害者雇用の相談を主に担当するハローワーク職員のDさんから求人の情報を提供してもらったり 相談に乗ってもらったりしていました。
また、Dさんは関係機関との連携も上手く、Cさんや私とも連絡調整をして これまでの経緯などを勘案して、複数の求人をAさんに提供してくれました。
結果、Aさんは未経験の業種ではあるものの、パソコンが得意であるなどといった良いところを活かして企業のIT関連部署に雇用されました。
ASD(自閉スペクトラム症、アスペルガー症候群)の症状とは?
【related posts】社会的なコミュニケーションや他の人とのやりとりが上手く出来ない、興味や活動が偏るといった特徴を持っていて、自閉症スペクトラム、アスペルガー症候群といった呼び方をされることもあります。問診や心理検査などを通して診断されます。親の育て方が原因ではなく、感情や認知といった部分に関与する脳の異常だと考えられています。
■会議などの場所で空気を読まずに発言してしまい、ひんしゅくを買う ■視線があいにくく、表情が乏しい ■予想していないことが起きると何も考えられなくなり、パニックを起こす ■自分なりのやり方やルールにこだわる ■感覚の過敏さ、鈍感さがある(うるさい場所にいるとイライラしやすい、洋服のタグはチクチクするから切ってしまう) ■手先が不器用である ■細部にとらわれてしまい、最後まで物事を遂行することが出来ない ■過去の嫌な場面のことを再体験してイライラしやすい
上記のような症状のために他の人とうまくコミュニケーションを取ることが出来なかったり、学校や仕事で上手くいかなかったりして二次的にうつ病等、他の精神的な病気になるケースもあります。
引用元:NCNP病院
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