売れない土地を相続したが所有権を放棄したい一家の土地処分方法の話
これは2020年1月から2021年10月にかけて起きた、売れなかった土地をやっとの思いで手放せた話です。
私は当時35歳の主婦で、実家からは遠く離れた場所に住んでいます。
実家の父親は当時74歳で三人兄弟の長男、2020年に癌が見つかり、現在も治療中です。
田舎の土地を相続!売りたいが売れない問題
事の発端は2015年の祖母の他界です。
祖母は遠方の県に住んでいましたが、認知症が進んでからは私たちの住む県の老人施設に移り住み、もともと住んでいた広大な土地は空き家となっていました。
遠方のため誰も家の手入れをすることが出来ませんし、祖母の退院の見込みもないため、その土地はとりあえず更地にしていました。
その後に祖母が亡くなり、土地の相続を長男である父が受け持ちます。
土地を売りに出しましたがなかなか売れないため、父は毎年固定資産税を払い続けていました。
土地の所有権はいらないからといって放棄することはできません。民法では、不動産の所有権について「所有者のない不動産は国庫に帰属する(民法第239条第2項)」としています。 これは勘違いしがちな文章なのですが、いらない土地は所有権を放棄すれば国のものになるというわけではありません。なお、このほかのどの条文にも土地の放棄について書かれたものはありません。基本的に、土地の所有権は使わないからといって放棄することはできないのです。
基本的に土地を放棄することはできません。ただし、両親が所有している土地などで、相続の際に相続放棄をすれば、土地の所有権を放棄することができます。
引用元:スマイティ

売ることも寄付することもできない負動産
しかし2020年に入ってから父に癌が見つかったことで 父も自分の死後のことを考えるようになってきました。
そこで父・母・姉・私の4人で集まり家族会議をし、この土地をどうするか考えることになりました。
相続した土地は意外と広大でしたが、遠方で誰も行きませんし、母親も姉も私も、結局誰もほしがらない土地だったため「売れないなら寄付をすればいいのでは」という話になりました。
父が不動産業者に

土地が売れないなら 寄付をしたいのだが。
…と交渉しました。私たちは不動産から自治体に寄付をしてくれるだろうと思っていたのですが、

無理です。寄付は出来ません
…とピシャリ。事故物件でもないのになぜ?

その売れない土地の税金を 結局は市民の税金で賄わなければならないからです。どうしても売れなかった土地を引き取ってくれる自治体は少ないですよ。
私たちは、この事実を知り 打ちひしがれました。

売ることも寄付することも出来ないなんて…じゃあ一体どうしたらいいのか。相続した私たちが税金を払い続けて保有しておくしかないのか…。
売れない土地を引き取る不動産業者との出会い
その数か月後に私は なかなか売れない土地でもお金を出せば引き取ってくれる不動産業者があることを知りました。
土地を売るでもなく、寄付するでもなく、必要な手数料を払って引き取ってもらうのです。
引き取ってもらうのにお金がかかるのは意外でしたが、毎年の固定資産税をこれから先何十年にも渡って払い続けるよりはいいだろうと考えて、私たち家族はこの業者に土地の引き取りをお願いすることに決めました。
そこからはトントン拍子で、契約書(紙)だけのやりとりで あっという間に土地を手放すことができました。そこでかかった経費の総額は35万円ほどでした。

もっと早くに頼めば良かったよねえ。
…と今では家族で笑い話になっています。
将来も土地が売れないかも!子供の代まで引きずりたくないからこその選択
土地を相続したものの、どうせ手放すことになるのなら、早めに家族で話し合うことが大切です。
いらない土地=負動産は、ゆくゆくは子供の負担にもなりますから、今は何の問題なくても 子どもたちの代まで問題を引き継ぐこと自体に私たちは不安を感じました。
親が元気なうちに売りにだすか、どうしても売れないなら 引き取ってもらう方が良いと思います。
毎年毎年 いらない土地を保有する経費をしぶしぶ払い続けるよりも、自分が元気のあるうちに土地問題から解放されることをオススメします。
相続人が93人いる空き家!相続放棄しない相続人の末路は!?
先祖代々から受け継いだ土地を「要らない!」と相続人同士で押し付け合ったりするのも争族の原因になりますから、見て見ぬふりをせずに、早めに対処しておいた方がいいです。
見て見ぬふりというのは たとえば相続人の名義変更などを怠って放置しておくことです。何も知らない子孫が こんな とんでもないことに巻き込まれているケースもあります。
兵庫県姫路市にあるこの空き家は50年以上前に住人が亡くなってから誰も住んでおらず、相続人は総勢200人、うち93人の生存が確認されています。
こんなボロボロになっても撤去されないのは所有者が多すぎるから。
この空き家の所有者の家系図を姫路市が120万円かけて作成して200人もの相続人を確認したようですね。 120万円…ここで使われたのはもちろん血税ですが、この費用はあとで相続人に請求されるのだろうか!?
2021年11月中旬時点では 93人中54人から連絡があり、54人全員が相続放棄の手続きを取るということです。
39人からは返信がないそうですが、相続放棄の期限は3か月。
この人たちは放っておいたらどんなことになるのかがわかっていないのだと思いますが、後々かなりヤバいことになります。
ここの撤去費用の見積もりは500万円なので、相続放棄しなければ単純承認とされ(相続したとみなされる)相続人全員に500万円の請求がいきます。
「そんなの知らなかった!」「無理!払えません」では済まない話です。
相続放棄しなければ、それらの負債をもすべて責任をもって払うべき義務を持つ相続人のままですから。
この姫路市の空き家はかなりのレアケースですが、先祖代々に長年大事にされてきた土地を手放すのは勇気が要ると思います。
でも今やらなければ、後々さらに苦しむことになるかもしれません。自分だけでなく子孫もです。
相続が発生した場合はよく調べてみて「これはちょっとヤバそうだな…」と感じたら、相続放棄の正規の手続きを取ることを検討した方がいいでしょう。
こういう痛い事例はかなりありますし

ちなみに「私は相続放棄して、親の遺産をもらわなかった」という人が結構いるんですが、ほとんどが「相続放棄した」と思い込んでいるだけで、実際は「相続分の放棄」であることが多いです。
「相続放棄」と「相続分の放棄」は違います。家庭裁判所を通さないと相続放棄はできませんので ご注意を。
相続した売れない土地を寄付することはできないのか?
どうしても土地が売れなかった場合は寄付するという方法もあります。
とはいっても「売れない土地」だけに 誰もが寄付を受領するわけではありません。
寄付先としては ■自治体(市町村など)へ寄付 ■法人に寄付 ■個人に寄付 の3通りがありますが、個人と法人に渡る場合は寄付というよりも「譲渡」です。
自治体への寄付
自治体は基本的には 自治体で利用する目的がない土地の寄付は受けません。
寄付を受けるとしてもその際の条件もきっちり決まっています。どうにもこうにも売れなかった土地がその条件に合致するかどうか…。
もし自治体が寄付を受けてくれるのであれば無償で受け付けてもらえますが、そういった寄付を受付している自治体自体がとても少ないのが現状ですので、土地の寄付はなかなか難しいと思われます。
法人への譲渡
法人の場合は事業の拡大や保養所としての利用などの用途で 土地の譲渡を受けてくれるケースがあります。
法人ではかかる費用が経費扱いにできるため、個人への譲渡と比べると寄付へのハードルは低いかもしれませんが…「売れない土地」となると、それを欲しがるかどうかは微妙かもしれません。
個人への譲渡
自治体でも法人でも「売れない土地」を受け取ってくれるかどうかはビミョーであるように、個人もまったく同様ですが、一つ可能性があるのはその土地の隣人が欲しがるかもしれないということです。
「隣の土地は借金してでも買え」という言葉があるくらいです。
売れないということは寄付になる可能性が高いかもしれませんが、隣地の所有者であれば 元々持っている土地とひとくくりで管理できるので 話をうまく譲渡まで持っていける可能性はあります。
ただし問題は 寄付を受ける相手方に贈与税がかかる可能性があることです。
2021年現在、贈与税では110万円/年 の基礎控除がありますので、110万円を差し引いた土地の評価額に贈与税(10~55%)が課されます。
この贈与税を負担してでも土地をもらいたい!と思っていなければ 土地の譲渡はむずかしいでしょう。
寄付が決まっても所有権移転登記費用が別途かかる
いずれかの寄付先に寄付が決まったとして、実際に寄付する時には所有権移転登記費用がかかります。所有権移転登記は司法書士に依頼するのが一般的ですが、登記時に税金として支払う登録免許税、司法書士に支払う司法書士報酬で合わせて10〜30万円ほどはかかると考えましょう。
不動産の売買の場合、所有権移転登記の費用は買主が負担するのが一般的ですが、寄付の場合、どちらが負担するのかは話し合いのうえで決めるとよいでしょう。
引用元:スマイティ