ある父子の心中事件と飛び降りの続出で自殺の名所と呼ばれた団地の話


ある父子の心中事件と飛び降りの続出で自殺の名所と呼ばれた団地の話

高島平団地の事故物件

最近は「団地」というと 響き自体がレトロ感を感じる言葉になっていますが、昭和30~50年代(1950~1970年代)の高度経済成長期には空前の団地ブームがあり、「○○団地」の名のつくものが続々と建てられていました。

鉄筋コンクリート造りの大きな建物に、いすやテーブルを備えたリビングやダイニングキッチン…といった洋風の住まいに住むことが、昭和40年代の若い夫婦の憧れだったのです。

ちなみに私はまさにこの当時にこの世に生を受けた、昭和40年代生まれの人です(爆)

父子の心中事件で有名になってしまったT団地

高島平団地の事故物件

そんな「空前の団地ブーム」の中にあって特に注目を浴びたのが、1972年に登場した東京のT団地でした。

T団地は「東洋一のマンモス団地」がキャッチフレーズの高層住宅群で、駅は目の前にあり、敷地内にケヤキ並木が通る、1万戸以上の大団地です。

周囲にはショッピングセンターや公共施設や学校などが整備されてT団地は一大住宅都市となり、そんなマンモス団地の入居者は かつては羨望のまなざしを向けられていたのです。

しかし1977年4月、そのイメージが一転させる出来事が・・・父子3人がこの団地から投身自殺。

そのニュースがメディアを駆け巡るやいなや、あちこちから自殺志願者がT団地を訪れるようになりました。

悲惨な事件といえば、これほど悲惨な事件はない。中村元さんの著書『自己の探究』のなかで紹介されている、ある心中事件のことである。

1977年の事件だから、いまから20数年前のことになる。その年の4月13日の新聞に記事が出たそうだが、私の記憶にはない。たぶん何かの理由で見落としてしまったのだろう。中村さんはその記事の内容を、こんなふうに要約されておられる。

『東京都板橋区高島平の団地の高層建物から、合板会社の工員 山中了さんと、長男の小学校四年生 敏弘君(9) 次男の同一年生 正人君(6)が、飛び降り自殺をした。父親は二人の子を抱きかかえるようにして死んだ。

父親は妻に蒸発され、まじめに働いていたが、子どもの世話で「疲れた」といっていたという。父親のズボンのポケットには10円銅貨が1枚残っていただけであったということが、背後の事情をものがたっていた。

こどもの手帳には、「おかあさん、ぼくたちが天国からおかあさんのことをうらむ。おかあさんもじ国(地獄)へ行け、敏弘、正人」と書いてあったという。』
引用元:人生の目的
※ここには団地の名前が入っていますが、これは原文のままです。

庶民のあこがれが「自殺の名所」にすり替わってしまったT団地の悲劇

高島平団地の事故物件

約30メートルもの高さの高層建築物は当時としては珍しく、入居開始当初から飛び降り自殺が5件あったのですが、マスコミが取り上げた父子3人の件がきっかけとなって、悲劇が加速していきました。

それはニュースに誘われるように 1980年(昭和55年)までの自死数が133に上り、社会問題にもなったほどです。

T団地で飛び降り自殺が横行したいちばんの原因として挙げられるのは、この団地が1970年代当時にはめずらしい高層建造物だったこと。

14階建ての団地がずらりと並び、1万個以上の戸数を誇るマンモス団地は 建物の構造にも問題がありました。

T団地は 居住者はもちろん、外部の人でも簡単に屋上に登れるようになっていました。

そのことが外部から飛び降り自殺志願者を呼び寄せた大きな要因です。

高島平団地の事故物件

さらにマスメディアがここを「自殺の名所」と呼んだことで T団地に対する人々の印象が「あこがれ」から180度変えると同時に、皮肉にも全国からの飛び降り自殺志願者を呼び寄せる一端を担ってしまいました。

それに対処すべく 政府が管轄する日本開発構想研究所が重い腰を上げたのは4年後の1981年。

屋上に向かう階段に鉄格子をはめて進入禁止にして屋上に行けないようにしたり、廊下や非常階段などの共有スペースにフェンスを取り付けて、どこからも飛び降りられないようにしました。

この対策が功を奏し、自殺者は激減し「自殺の名所」という異名は「今は昔」となっています・・・が、大島てるを見ると現在でも結構 事件や事故、孤独死が多く起こっているのがわかります。

まあ、とんでもない規模のマンモス団地ですから そういうことがあるのも ある意味うなづけるのですが…。

【事故物件の回避】飛び降り自殺が可能な物件には注意が必要!

高島平団地の事故物件

飛び降り自殺が多い物件は高層建造物であることと部外者でも侵入がたやすいこと、この2つが共通しています。

賃貸物件を探す時に 居住者以外が侵入してマンションの共有スペースから飛び降り自殺した歴史がある建物は今後も同じことが起こる可能性があるので、部屋そのものが事故物件ではなくても避けた方がいいでしょう。

また飛び降り自殺が多く起こる建物の近所も避けるべきです。

下手をすると飛び降り自殺の瞬間に立ち会ってしまったり、それを目撃してしまったり、最悪の場合は自分が巻き込まれてしまうことも、可能性としてはゼロではないからです。

飛び降り自殺を図った人が下を歩いている人に当たって無関係の人が死亡する「飛び降り巻き添え事件」が実際に数件起きています。

事故で落ちてしまった人でなければ、自ら飛び降りてしまう人に心の不安定な人が多いのは当然だろう。飛び降り側に立って憐憫の情を抱く人もいるだろうが少数派なのも当然で、飛び込まれた被害者には何の落ち度もない。それは理不尽な死と一言で片づけられないほどに理不尽だ。

雷が落ちて死ぬような太古の自然界から存在するような理不尽でもない。他人を巻き込むような場所かつ飛び降り自殺をしなければ済むというだけの話。批判覚悟だが、やはり飛び降りる側が悪いということは被害者やその家族を思えば大前提だろう。

「飛び降り犯、って言葉を使ってもいいと思うんですよ。本当に被害者はかわいそうです。ただ歩いてただけなのに」

重ね重ね気持ちはわかるが無理だろう。池袋で飛び込んだ女性は容疑者死亡のまま、重過失致死の疑いで書類送検された。人通りの多い場所に飛び降りれば人を巻き添えにする危険性は認識できるとして過失致死、重過失致死の嫌疑はかけられるだろうが、殺意は不明なので殺人にはできない。

そもそも飛び降りた側のほとんどは死んでいるので不起訴にするしかない。あとは民事で被害者、亡くなった場合は被害者家族が訴えるしかないだろう。
引用元:NEWSポストセブン

君子危うきに近寄らず。危ない!危うい!と心が感じる場所には近づかないに限ります。

目撃してしまうだけでも確実にトラウマになりますから。