自力のゴミ屋敷片付けと「多重介護担い手たちの悲鳴」のリアル体験談
これは4人の多重介護とゴミ屋敷片付けを自力で行った、怒涛の2年間のエピソードです。
夫(56才)の母方の叔父のAさん(80才)と 叔母Bさん(78才)は夫婦2人暮らし。3人の娘や息子がいますが、県外に出てそれぞれ家庭を持っています。
私と夫は実家の隣に住み、両親(父92才・母90才)の介護をしながら生活していました。
叔父の癌が発覚し身内の介護が始まった
2019年12月に父から電話がありました。

Aさんが前立腺の癌だと分かったらしくて、Bさんが付き添いを頼んできたけど。俺は字も書けないし、耳も遠いから一緒に来て手伝ってくれないか。
そこで私が総合病院での骨転移検査に付き添う事になりました。
それまでの私たちと叔父・叔母との付き合いは 義両親を通しての親戚の集まりで話す程度で、実際にはどういう人となりなのかは全く知りません。
叔父の方はうちの子を自分の孫の様に可愛がってくれたので癌がわかったことが気の毒で 私は言われるままに立ち会う事にしました。
叔母は気の強い人で、何年か前にうちからお中元を贈った時に

あんたの家からお中元をもらう義理はないし、あんたの家とは親戚付き合いはしたいと思わないから。
…などと言われて、さらに贈り物を返品されるという目にあいました。
その後は叔母とは当たり障りのない対応をして、義両親には心配をかけない様に注意していたのです。
叔父の癌より叔母の認知症の方が始末が悪かった
私は叔父の方が大変だと思っていたのですが、病院に何度か付き添う内に、実は叔母の認知症の方が大変だという事態に気づきました。
叔母は書類や保険証・金銭の管理が出来なくなっており、何か通知が来ていても目を通さず 4~5年分の書類が未開封で積み上げられたまま。自宅の中は埃だらけで新聞やチラシがそこかしこに散らばっていました。
ゴミも捨てられないのか、車庫いっぱいにゴミの山が積みあげられており、異臭を放っていました。当然ご近所からの苦情もあったようですが、本人達はすぐ忘れるために 誰も対応ができない状況でした。
県外に住む3人の子ども達はコロナの蔓延防止で帰省ができず、この状況がまったく知らなかった様子です。
病院の帰りに叔父さん宅に立ち寄った時、叔母さんが

お茶でも飲んで行って。
…と言ってくれたので初めて家に上がらせてもらったのですが、

えっ?これが人が住んでるとこ!?
そう思ったあの日の衝撃は今でも忘れられません。
認知症の被害妄想がひどい叔母は介護保険とヘルパーを拒んで
お自宅がゴミ屋敷になっていたことを 自宅に戻ってから夫と義父に報告しました。その後に長女さんに連絡を取ってこの状況を伝え、さらに地域包括支援センターに相談しました。
地域包括支援センターからは介護保険の利用をすすめられましたが、叔母は

うちはお金がない!
…の一点張りで介護認定の申請すら拒否され、職員も自宅に入れませんでした。
そこで私たちは作戦変更し、こちらで有償ヘルパー(介護保険ヘルパーでなく民間業者のヘルパー)を申し込んでみましたが やはりこちらも家に入れてはくれませんでした。
仕方なく私が有休を取ってヘルパーさんと一緒に家に入って大掃除を4回しましたが 叔母は

あのヘルパーがうちのお金を盗って行った!
…と騒いだため、ヘルパーの利用をやむなく中止しました。
ゴミ屋敷片付け!夫婦自力で3か月かけてゴミ袋40袋
結局、その後は夫と私が3ヶ月に渡って土日を使って通り、掃除をすることに。ゴミ袋にして40個分を片付け処分しました。
掃除の時にギョッとしたのは 叔母が尿汚染したショーツ・パットが出てきたことです。叔母は風呂にもろくに入らず、着替えもしていないことが分かり、

やっぱり今すぐに介護保険が必要だ!
…ということで強制的に申請することにしました。
認知症をおとなしくさせる薬に驚愕し介護保険サービスに感謝した日々
その後認知症の専門医にも連れて行き検査してもらったところ「アルツハイマー型認知症」との診断で下り、介護保険の方は「要介護2」となって デイサービス通所を利用し始めました。
デイサービスに対して叔母は初めは拒否が強く かなり怒鳴り散らしていましたが、1ヶ月間に週3日の利用日送迎には必ず私が出ていって 叔母を押し出していたら、職員さんの上手な誘い方や 認知症をおとなしくさせる薬の内服の効果もあったのか、3ヶ月程で笑顔を見せて通所するようになりました。
この変わりようには私たちも驚愕しました。叔母の入浴や洗髪・着替えやリハビリなどをデイサービスが担ってくれて本当に感謝しています。
叔父さんは通院先を変更して病状が安定したところで、長女さんを中心に3人の子供達が相談し、コロナが少し収まった頃に県外の施設や病院に連れていってくれました。
夫と二人で立ち向かう4人の同時多重介護はかなり厳しいものでしたが、公的支援を利用しながら 最終的に叔父と叔母を家族に委ねることができて良かったと思っています。
「実の親と義理の親」「親と配偶者」など、1人で複数の家族を介護する“多重介護”。要介護者の増加と介護期間の長期化、そして少子化による介護者の減少を背景に急速に広がっている。しかし、要介護度が「2」以下だと施設への入所は難しい。また、「3」以上でも、特養ホームの費用が払えず、在宅で介護せざるをえない人も多い。医療や福祉も“多重介護”の負担を考慮して支える仕組みは少なく、事態は深刻化している。「日本ケアラー連盟」が4年前、全国2千人のケアラーを対象に初めて行った調査によると、実に25%が複数のケアを担っていた。
引用元:“多重介護”担い手たちの悲鳴
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