相続放棄しなかったら兄弟一人だけマイナスの負動産を相続した体験談
私(30代)の母(70代)は5人兄妹の長女です。2016年に母の父親が亡くなったときに 母方の長男(80代)がすべての財産を相続しました。
その後その長男が2018年に病気で他界したのですが、母方の他の3人の兄妹は相続を放棄し、長女である私の母一人が築古の家と土地、100万円の預貯金を相続しました。
他の3人の兄妹が相続を放棄したことには何か理由がありそうなものの、そんなことは深く考えずに母は相続を決めたのです。そもそもそれが間違いのもとでした。
無知で強欲だと相続で痛い目に遭うという典型例
母は昔から楽観的な性格で

もらえるモノは何でももらっておこう!
…と考える人です。
古い家と土地と、わずかばかりの100万円の預貯金が手に入るとのことで、あまり深く考えずに「ラッキー♪」と軽いノリで相続人になりました。
つまり、欲に駆られてしまった。目の前のプラスの要素だけしか見ておらず、マイナス要素など全く考慮していなかったのです。
それ以前に 相続がマイナスになることがある、あるいはマイナスの相続をしてしまうことがあるなんて、全く知らなかったのです。しかも、もし要らなくなったら

返せばイイや!
…と単純に思っていたということです。相続を母はありえないほど軽く捉えていました。
相続の放棄は期限を過ぎたらできないこともまったく知りませんでした。
母が相続の放棄の期限内に相続の放棄をしなかった理由は 単に「欲」と「無知」 恥ずかしながら、この2つです。
売れない土地+解体費用200万円の家!負動産で100万円のマイナス相続
相続ではマイナスにしかならない要らないモノまで付いてきて、たいへんな負担費用が発生してしまいました。
三重県の山奥の土地と建物の評価額はゼロ円。
建物はボロボロ、今にも崩れる気配がするため解体して更地にしないと危険。そこでまず解体費用が200万円発生しました。
相続した預貯金100万円は確かにプラスの遺産ですが、解体費用を差し引けば 目の前にあってすぐに動かせることを単純計算するだけでもマイナス100万円。
山奥の土地が売れずに所有すれば固定資産税を毎年払い続けるわけですし、建物を解体して住宅が亡くなり更地になった土地は固定資産税がこれまで以上に跳ね上がります。
これらをずっと払い続けていくとなると とんでもなく大きなマイナスです。
しかし母が相続人になった以上、マイナスの遺産も引き継がなければいけません。
処分する解体費用まで、当然それは相続人である母がすべてを負担するハメになりました。
重い経済的負担はもちろんですが、それまで仲が良かった母方の兄妹達との関係にも亀裂が入り、身内同士での精神的負担も大変なものがありました。
相続放棄だけでは済まない負動産管理のむずかしさ

こんな家も土地も要らない!
…と相続を放棄しようと思っても、時すでに遅し。
相続の放棄の熟慮期間(3か月)が過ぎてしまった段階で法定相続人となることが確定します。
民法940条では

相続放棄は受理されても、財産管理人などを建てない限り、管理責任が残る
…とされていますので、相続を放棄してもその手続きだけでは済みません。その後の事務処理も山積しています。
“後悔先に立たず” 今さらもうどうにもできませんが、だからといって古家を放置するワケにもいかず、我が家でその解体処理費用200万円、実質的には100万円を負担することになりました。
相続してしまった以上は致し方ありません。
負動産と知っていて相続放棄したのか?という疑念と猜疑心だけが残った争族
母の兄弟3人はそれを知っていたから相続の放棄をしたのだと思います。
面倒な処理を長女である母が一手に引き受けなければならなくなることを、彼らがどこまで知っていたのかはわかりません。
ですが私はそのことを無知な母にひと言くらい教えてくれても良かったのではないかな…と思いました。
デリケートなことなのでお金についてはあまり触れたくなかったのでしょうが、それでもこの仕打ちはちょっと…。
マイナスを被ることを知らなかった強欲な母が相続してくれたことは、兄弟3人にとっては好都合だったのか?渡りに船だったのかな?と思わざるを得ません。
自業自得もあるので親族を一方的に責めるわけにもいきませんが。
それまでどんなに仲良くしていても 身内であろうが家族であろうが、お金が絡むと必ずギクシャクするものです。
そうならないためにも、普段から相続についてはもちろんですが、お金について家族や親戚で話し合いしたり、自分でも少し勉強しておかないと痛い目に遭う。それを実感した出来事でした。