【相続地獄】隠し財産の相続税が払えない!遺産相続トラブルの話
小学校の時からの友達から父親を亡くした時に起きたとんでもない相続の話を聞きました。2011年4月のエピソードです。
こんなこと本当に起きるんだな…と驚いた相続問題だったので、記憶にしっかりと残っています。
私は彼女の父親に何度かお会いしたことがありますが、彼は九州男児の亭主関白で、何を決めるのにも

すべて自分がやる!ほかの者には一切 手出しも口出しもさせない!
・…というスタンスの人でした。
財産から仕事に関することまで誰にも手を触れさせず、すべて自分で管理していたそうです。
まあそれで家族が楽をしていられたのは事実ですし、開業医でしたから収入もしっかりとあったので、何の苦労も問題もなく家族は生活してこられたのです…一家の大黒柱が急逝するまでは。
財布のひもを握る一家の大黒柱の急逝
友人の父親は非常に元気な人でしたが、急な体調不良に襲われて急逝しました。
死因は癌でした。身体に不調が出た時にはすでに末期でした。
友人の父親の訃報を受けて私もその葬儀に参列しましたが、開業医という職業柄から参列者も多かったことや住まいが豪邸だったことから、今では珍しい自宅での葬儀という 印象に残るものでした。
友人の母親は夫の急死に対して心の準備も出来ていなかったのでしょう、だいぶやつれていました。
亡くなった友人の父親はそれなりの老齢でしたから、参列者たちは

まあ仕方ないよね。これも寿命だから。
…と言っているのが聞こえてました。さらに

この先の片付けとか相続のことを考えると、家族はきついだろうな。
…と笑っていましたが、「きつい」とはどういうことなんだろう?と思いました。
今思えば、この人たちはこの後にこの家族にのしかかる厳しい現実をわかっていたのでしょう。
遺産相続を何も把握していない家族が残されて…
先ほどの参列者の話を小耳にはさんでしまった私は、友人にそれとなく相続のことを尋ねてみました。

父が全財産を管理していたから、貯金も保険もどうなってるのか、何も把握していないの。書類から探し始めなくちゃいけなくて…。
さらに彼女のお母様もその知識が全くないことに加えて

仕事関係の方の手続きや医療器具の始末もしなくちゃいけないし。考えるだけでも今から疲れそうだわ。
…と言っていました。
これは本当に大変な事務仕事と体力仕事になるだろうな…と私も彼女に同情したのですが、実際その後に想像もしていなかったトラブルの火種が出てきました。
亡くなった父親が家族にも内緒の隠し財産を持っていたのです。
税務調査と故人の隠し財産の発覚
昔も今も所得税に対する税務署の目は厳しいものがありますが、相続税でも同じなのですね。
数か月後のある日、彼女の家に税務署の査察が入り、

遺産相続でも査察が入るなんて思っていなかったわ。
…と彼女は言っていました。
税務署がやってきても「遺産相続はもれなくすべて申告しているはず!」と彼女は確信していたそうですし、税理士にも目を通してもらっていたので間違いがあるはずがありません。

税務署に目をつけられるようなことなんてあるはずないのに!なぜ?
そう考えていた彼女は税務署員の話を聞いて絶句しました。
遺産の中には父親が所有する土地と山があったというのです。
父親の一存で購入し、誰にも言わずにこっそりと所有していた「隠し財産」です。

そんな財産があったなんて…母も私も寝耳に水だったわ。
彼女はさすが疲れた様子でそう言っていました。
隠し財産の隠し場所は貸金庫の中
いくらなんでも そんな大きな財産を所有しているのに家族に黙っているなんて…。
隠し財産の登記簿は父親名義の銀行の貸し金庫に入れられていて、遺族もその貸し金庫の存在すら 相続が発生するまでは知りませんでした。
遺品整理の中で貸し金庫関係の書類が出てきたときに

これには何を入れているのかしら?
・…とは思っていたそうですが 父親の他界により貸金庫は凍結されていて中身を確認できませんでした。
そうこうしているうちに預貯金や有価証券や保険証券や自宅の登記簿などがどっさり出てきたり、申告期限が迫っていることなどのドタバタから、貸金庫のことなどすぐに忘れ去られてしまったのです。
まさかそんな隠し財産があって、その登記関係の書類が貸金庫の中に隠されていたなんて…と予想外の展開に 遺族は開いた口がふさがらなかったそうです。
税務署は事前に貸金庫の存在や開閉履歴を銀行に照会することができるため「貸金庫はありません」「中の財産は移動させていません」などと嘘をついても通用しません。そして相続人が契約を引き継いでいる場合には、税務調査官は納税者と一緒に貸金庫に行き、開けて中身を確認します。
貸金庫にある財産の申告漏れは確実に見つかると思ってください。それだけ調査の定番であり、申告漏れを見つけやすいのです。貸金庫の存在は相続発生前から認識されていると思っておいた方が良いでしょう。
引用元:貸金庫は税務調査の定番
相続税が払いきれない問題!物納しても賄いきれない相続地獄
遺産に不動産があっても、それが価値の高いものであるとは限りません。田舎の山や田畑などは負動産が圧倒的に多かったりします。
土地評価額によって相続税が決まりますが、彼女の場合はこの相続税がとてつもない金額になってしまい、その支払いは何年かかっても自分たち親子だけでは不可能…という大変なことになったそうです。
そこで 税務署や役所の係とも相談し、遺族は誰一人この隠し財産の存在は知らなかった!ということを納得してもらうことから始めたそうです。
その結果「物納」でなんとかその場は収めたのですが、物納だけで相続税全額が賄えたわけではなく、残る多額の相続税を後日支払う羽目になったということです。
たった一人で一家を取りまとめていた家族が急逝した場合、こうしたとんでもないことになる可能性があります。
財産はプラスだけでなく、マイナス(借金)だってあり得ますが、残された家族は「そんなの知らなかった!」では済まされません。
負債の事実を知らなかったがために相続放棄のタイムリミット(3か月)を逃してしまい、マイナス財産を丸ごと相続してしまうことだってあるわけです。
お金のことは家族一人に任せっきりにすることは危険だなと改めて感じると同時に、日ごろから皆で情報を共有する必要性を強く感じました。
相続税をキャッシュで払えない人に待っているサラ金並みの金利とは?
父の残した全遺産は基礎控除7000万円(2011年当時)を上回って課税対象となった。
相続税を期日までに払わないと、期日から2カ月までは年利7.3%、期日から2か月以降は年利14.6%の利息がかかる。サラ金並みの恐ろしい利息だ。
相続税は原則、キャッシュで納めなければならない。キャッシュがないからといって、親のマンションや車、金目のものを売り払おうと思ってもそうは簡単にいかない。マンションの中身が遺品だらけでゴミ屋敷のような状態なのに、不動産がポンポン売れるわけがないだろう。
相続税の督促状は容赦なく役所から送られてくる。手持ちのキャッシュがない人は、サラ金並みの金利がどんどん乗っかり続ける。「第二の相続地獄」を味わうことになる。
運が悪ければ青天の霹靂のごとく突然「相続地獄」に巻き込まれ、人生の10か月を棒に振る。挙句の果てに、兄弟や親族と仲たがいしないとも限らない。そのうえ最終的に「3000万円の相続税をキャッシュでお支払いください」と言われ、家族全員がパニックに陥りかねないのだ。
上記引用元:相続地獄~残った家族が困らない終活入門