孤独死した父親の相続放棄を自分でやってみた30代女性の体験談

遺産の相続と争族
【監修者】
オレンジ@終活ガイド

生前整理(身辺整理)という名の断捨離にいそしみつつ、アラカンでの熟年離婚を画策中のおひとりさま予備軍・関東在住50代女性が「オレンジログ」の中の人です。

終活に活かすため終活ガイド1級とホームヘルパー2級資格を取得。最期まで在宅で過ごしたいおひとりさまの痛くない死に方を模索・実践していきたいと考えています。

「事実は小説よりも奇なり」このブログでは多くの方の体験談をもとに、人生100年時代に備えた使える生活&終活のお役立ち情報を紹介していきます。

孤独死した父親の相続放棄を自分でやってみた30代女性の体験談

相続放棄を自分でやってみた

この話に登場するのは20年以上前に母と離婚をした父(当時57歳)

そしてそれからずっと女手ひとつで私たち姉妹2人(32歳・30歳)を育ててくれた母(54歳)

私の父は母と結婚をする前から既にバツ1だったそうで、母との離婚理由は不明ですが、前妻との間に子供はいませんでした。

母と離婚後の父は誰とも再婚をすることなく、元々好きだったお酒を頻繁に飲むようになり、アルコール依存症になって施設で暮らしていたそうです。

この話は風の噂で知ったので、どのくらい施設で暮らしていたのかは不明ですが、アルコール依存症が完治してからは胃がんと闘いながら 父は1人暮らしをしていたようです。

これはそんな元家族の終活トラブルの体験談です。

【母と離婚した父の孤独死】遺体引き取りを拒否

相続放棄を自分でやってみた

終活トラブルが起きそうになったのは2020年9月のこと。

母から「お前たちの父親が亡くなった」と電話がありました。

私も姉もすでに結婚をして実家を出ていますので 家族全員が別々に暮らしています。

母からその話を聞かされた時に 私は久しぶりに思い出した父の存在と、亡くなったことが信じられない気持ちで鳥肌が立ちました。

それから1時間くらい経過したころ 私の携帯電話に知らない番号からの着信がありました。

恐る恐る電話に出てみると 私が住んでいる県の警察ではないところからの電話でした。

もしもし、洋子さん(仮名)ですか?

はい、そうです。

洋子さんのお父様が亡くなりました。

先ほど母から聞きました。

そうでしたか。お父様は胃がんだったようで…自宅での孤独死でした。

はい…。

胃がんだったことはご存じですか?

いや、もう20年以上会っていなかったので…

そうでしたか。夏場の暑い時期に亡くなった孤独死です。遺体は溶けるは腐敗が進むはで、正直顔が分からないです。

あ… はい…。

ご希望であれば司法解剖をしますがどうしますか?お父様は胃がんで通院していて、主治医は胃がんが原因で亡くなったと話していましたが。

もう長いこと会っていないので…。病死だとわかっているなら、そういうのはしなくていいです。

そうですか。ちなみに引き取りはされますか?

え!?どういうことですか?

お父様の遺体を引き取れるかどうかですが?

父とはもうずっと会っていないですし。私は結婚をしていて家庭もあるので…引き取るのはちょっと…

こんな感じの話を30分ほどして電話を切りました。

姉から言われるまで「相続放棄」という手続きを知らなかった…

相続放棄を自分でやってみた

警察との電話が落ち着いた後、私は母と姉と連絡を取り合いました。

その時は「なんか信じられないねぇ」なんて話をしていたのですが、父が亡くなった数週間後に 再び姉から連絡がありました。

ねえ洋子、相続放棄とかやる?

恥ずかしながら私は相続放棄についての知識が貧しかったため、あまり深く考えることなく

そういう面倒なことはしないよ。

…とだけ返してその場は終わりました。

相続して故人に借金があったらどうなる?

相続放棄を自分でやってみた

それから数週間が経過した頃に再び姉から連絡が入りました。

本当に相続放棄しなくていいの?

私はここで初めて相続放棄について調べました。

相続放棄というのは 簡単にいうと 相続人が遺産の相続を放棄することでプラスの財産もマイナスの財産も一切相続しないことができる手続きです。

これを知り、20年以上会っていない父のことを考えた時に「もし借金があったら…」と気づき、すごく怖い気持ちになりました。

相続放棄手続きの期間は短いが費用は安かった

相続放棄を自分でやってみた

相続放棄の手続きができるのは 亡くなったことを知った日から3ヶ月以内ですが、姉から2度目の連絡が来たときには既に1ヶ月が経過していたのです。

そこで私と姉は急いで相続放棄の手続きをとる準備をしました。

相続放棄の手続きにかかった費用は6000円ほどでした。

費用の内訳
添付する印紙代…800円
郵便切手代…500円ほど
住民票除票または戸籍附票…500円ほど
死亡の記載のある戸籍…800円ほど

私は父とは別の県に暮らしていたため、父の情報を得るために 父の住民票などを何度も遡ることになりました。

そして父が亡くなったという知らせを受けてから2ヶ月が経とうとした頃、ようやく家庭裁判所に相続放棄の申請書を送付することができました。

すると相続放棄の申請書を提出してから2週間も経たない内に家庭裁判所から照会書が届き、再度記入をして返送。

その約1週間後に相続放棄申述受理通知書が届き、ギリギリ3ヶ月以内に相続放棄手続きを終わらせることができました。

相続放棄から1年が経過した今の状況は

相続放棄を自分でやってみた

結論から言うと、私と姉は相続放棄手続きを行ったことで 父が亡くなって1年程が経った今でも 借金の肩代わり等の連絡は一切ありません。

相続放棄についての相談を母にした時は「そんなのしなくても大丈夫でしょ」「借金があるなら事前に警察とか誰かから連絡があるでしょ」などと言われていて、私は「だよね」と思いましたが、今思うと姉が諦めることなく2回も私に連絡をしてきてくれたことに本当に感謝しています。

もし姉が相続放棄についての連絡を1回で終わらせていたら 借金の肩代わりなど何かしらの苦労を背負うことになっていた可能性がゼロではありません。

父が亡くなってから1年が経った今でも父に関する連絡が誰からもないので 借金の有無やその他についての情報も一切ありませんし、父がどんな生活を送っていたのかも未だに分からずじまいです。

でも、とりあえず相続を放棄したことや、6000円を自腹で払っても相続放棄の手続きを済ませたことに悔いはありません。

相続放棄を自分でやってみた

例えば悪徳高利貸しから借金していた場合、悪徳業者は相続放棄期限が切れる3か月を過ぎてから、相続人に返済を迫ることが多いそうです。

たかだか6000円の支払いを渋って相続放棄手続きせずに、後々数百万円単位の借金の肩代わりをしろ!などと言われたら目も当てられません。

相続放棄手続きは時間がかかる!早めの決断と行動が必要

相続放棄を自分でやってみた

私は父と20年以上も会っていないので、正直父の顔をぼんやりとしか覚えていません。

だからこそ相続放棄手続きに対しても「別にしなくてもいいんじゃない?だってもう20年も会ってないし」という他人事のような単純な考えしか持っていませんでした。

しかしよく考えれば 20年も会っていないからこそ 父がこれまでどう過ごしてきたのかも、仕事をしていたのかも、借金を抱えているかどうかさえ分からなかったというのが現実です。

つまり相続がプラスなのかマイナスなのかもわかりませんでした。

私のような家庭環境の人は世の中にたくさんいると思いますが、こういう状況になった場合 ほとんどの人が私のような他人事的な考えになるのではないでしょうか。

それで何もなければ問題ありませんが、もしもその1度の選択によって その後の自分の人生が大きく変わってしまったら・・・。

長年会っていない家族が亡くなった知らせを受けた場合は 悩んだり迷ったりせず 相続に関することは早めの行動が大切だと思います。

相続放棄手続きには少し時間がかかるため、3ヶ月なんてあっという間に過ぎ去ります。

これはあくまで私個人としての見解ですが、長く会っていない家族の相続は 借金の有無に関係なく早めに放棄するのが正解なのではないかと思っています。