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相続・争族・負動産の問題を配偶者居住権の設定で何とかおさめた話

【監修者】
オレンジ@終活ガイド

生前整理という名の断捨離にいそしみつつアラカンでの熟年離婚を画策中のおひとりさま予備軍女性がこのブログの中の人です。終活に活かすため終活ガイド1級とホームヘルパー2級を取得しています。
 
ここでは人生100年時代に備えた終活と生活のヒント、怖いけど知っておいた方がいい話、トラブル回避のハウツーなどを「事実は小説より奇なり」みんなの体験談を元に紹介していきます。

相続・争族・負動産の問題を配偶者居住権の設定で何とかおさめた話

相続の配偶者居住権

これは2021年3月から9月にかけて 実家の土地の名義問題で兄と母がもめて絶縁寸前にまでなった話です。

私は40代の主婦で、兄(40代)が一人います。

父は亡くなって、母(80代)は現在は実家で1人暮らしをしています。

2020年の年末に父が他界し、3月になりお彼岸が過ぎたところで やっと相続のことについて母と兄と3人で話を始めました。

母は高齢であり、基本的にめんどくさがりの性分。葬儀の手配等も兄がすべて行ったので、相続についても兄が主導となり 全ての書類の確認や銀行の手続きなども行うことになりました。

預貯金や有価証券の相続手続は順調だったが…

相続の配偶者居住権

書類の確認がすべて終わり、5月になってからいよいよ具体的な話し合いがスタートしました。

貯金や保険などは全ての金額が出揃ったところで法律に従って母が二分の一、兄と私で四分の一ずつ分けようということですぐに話はまとまりました。

数年前に父が大病をして入院した後に、貯金や保険などに関しては一度家族全員で確認をしていたので だいたいの資産の状況は分かっています。

有価証券については一部不明なところもありましたが、それも全て兄が確認し、母の年金の受け取りなどについても着々と準備を進めていくれていました。

これまでも「基本的には兄に全てお任せで」というスタンスだったので、私は特に異存もなく、言われたとおりに書類を書いて印鑑に判を押していきました。

母も「自分でやるのは面倒だからお兄ちゃんに任せる」という感じだったので 初めのうちは静かに話しを聞いて書類を書いていました。

土地の相続でひと悶着!母と兄が決裂

相続の配偶者居住権

貯金について話が終わったところで、次に実家の土地の話になりました。

「母が元気なうちは母がここに住めばいいし、いずれ誰もいなくなったら処分しよう」というのが私と兄の考えでしたが、母はどうしても

ここの土地はお兄ちゃんに継いでもらいたい!

…と言い出したのです。

父も母も元々は「長男が私たちと一緒に住んでくれると嬉しい」と言っていたのですが、両親と喧嘩したことがきっかけで 兄は別のところに家を買っていました。ですから私が母に

将来的に、ここには誰も住まないよ。

…と話しても 母は絶対に納得しないのです。

お兄ちゃんに継いでほしいってことはわかった。じゃあ土地をお兄ちゃん名義にして、お兄ちゃんが相続すればいいってことでしょ?

…と私が言うと、再び母は怒りだしました。

そうじゃない!土地の名義はお兄ちゃんにしないよ。お兄ちゃんが継ぐのは私が死んだ後で良いの。まずは私がもらうから。

え?どういうこと?

今すぐにお兄ちゃんの名義にしたら嫁に勝手に売られちゃうかもしれないでしょ!だからお兄ちゃんが継ぐのは私が死んだ後の話だよ。

名義の書き換えも税金の手続きも全て兄が行ってくれることに決まっていましたが、そのことが原因となって 母と兄がもめてしまいました。

だったら自分で手続きすればいいんじゃない?書類もらってきてよ。そうしたら必要なところだけは書くから。あとは自分でやって。

怒った兄はそう言い放って、話がうやむやのまま帰ってしまったのです。

なんとか負動産の相続を回避したい!という一心で行政書士に相談

相続の配偶者居住権

そんないきさつがあり、それまで相続については全て兄まかせっきりだった私が、やむなくその時点から動くことになりました。

実家の土地は駅からは遠くありませんが 寂れた地域なので 土地を売ったところで家の解体費用を差し引いたら おそらくマイナスになってしまうことは明らかでした。

それでも兄が相続をしてくれることになっていて、私は助かったなと思っていたのです。

それに私としては 母が亡くなってからどうこうするよりも兄が今の段階で相続をしてくれたほうが、自分的に面倒なことも減っていろいろな面倒ことから解放されることがわかっていたので

ここでなんとかしておかなければ!将来こちらにも火の粉が降りかかるだろうな。

…と早速 知り合いの行政書士の方に相談に行く決意をしました。

母の意をくんで配偶者居住権の設定を決めた

相続の配偶者居住権

その行政書士事務所は初回相談料は無料でしたので、土地の相続の名義変更や母の権利について相談をさせていただきました。

そこで土地の相続には配偶者居住権というものがあるということを知りました。

【1028条】配偶者の居住権

家の所有者である夫が「妻に居住権を与える」といえば、妻に所有権がなくても、妻は死ぬまでその家に住めます。

今、夫名義の家に同居している妻で死ぬまでその家に住みたい人は 夫に「妻に居住権を与える」という遺言書を作成してもらえばいいのです。

もしも夫が先立ってしまっても 居住権の登記をすれば 妻はその家を終の住処にできます。

引用元:法定相続人とは?不公平を解決する遺産分割協議の分割割合と方法3つ

早速そのことを母に話しました。

正直、私も兄も実家の土地には全く興味がありません。ですが

どうしてもここを勝手に売られたくない!

…という母の意見をくみ取って役所で手続きをしてもらうことにしました。

配偶者居住権を設定したことで

これで 何があってもこの家は お母さんが死ぬまでは誰も手を付けることが出来ないよね!!

…と母は強気になり、そのことにより兄に土地の名義を譲る決心もつけられました。

配偶者居住権の設定で母の抱えていた不安が解消した

相続の配偶者居住権

あの一件で兄は怒ってしまって自分では手続きをしてくれそうもありませんでしたから、私が法務局や市役所に行って書類を準備し、改めて兄に話しをつけることにしました。

お母さんはお兄ちゃんに謝るつもりはないみたいだけど 私が手続きをしたことで納得はしたみたいだから サインだけお願いします!

…と兄に頭を下げて なんとか書類を書いてもらうことができました。

思えば、母も不安だったのだと思います。大事な一人息子が一緒に住むことを選ばずに家を出て行ってしまったのだから、

この家と土地を手放したら、私は捨てられてしまうんだろう…。

…と思っていたようです。

絶縁一歩手前だった親子の関係修復に成功!

相続の配偶者居住権

母の胸の内も私から兄に話したところ、一度は絶縁寸前までいった2人でしたが なんとか顔を合わせて話が出来るところまで 関係修復が出来ました。

3月に手続きを始めてから約半年、9月になって ようやく土地や建物の名義変更もすべて完了し、父の相続が完了しました。

本来なら土地の評価額の分は差し引いて現金の分配を行うのですが、いずれは取り壊して売ってしまうことになっているので、その時の費用を私が出さない代わりに 現金の分配を変えずに兄が土地を相続する形になりました。

いずれ売るにしても住むにしても、取り壊し費用だけでかなりの金額になるのがわかっている実家です。

兄が土地を相続してくれて本当に良かったと思っています。

配偶者居住権はどんな人が使うべき?

相続の配偶者居住権

配偶者居住権は2020年4月からスタートした新制度だが、2020年12月までの総利用件数は129件と意外と少ない。

「この制度は、妻と子供が不仲な場合を想定した制度だからです。おカネを要求してくる子供がいる、前妻の子と後妻が揉めるといったケースです。こうした家庭問題を抱えている人であれば使う価値はあるでしょう」(税理士・佐久間裕幸氏)
引用元:現代ビジネス

【配偶者居住権のデメリット】不動産の譲渡・売却はできない

相続の配偶者居住権

配偶者居住権はあくまで「家に住む権利」であるため、不動産所有権のように物件を譲渡したり、売却したりする権利はありません。

ただし途中で「老人ホームに入居するから自宅を売りに出したい」と希望しても、配偶者自身が自宅を譲渡・売却することはできません。

一方、自宅の所有権を持つ人間(仮に子供とします)なら譲渡・売却を行うことが可能ですが、当該物件には配偶者居住権が設定されているため、第三者が購入したとしても実際に住む事はできません。

特に問題となるのが、親が認知症になり、病院または施設に入らざるを得なくなったケースです。
配偶者居住権は原則として、事前に定められた配偶者居住権の存続期間が終了するまで存続しますが、特に期間を定めなかった場合は配偶者が死亡するまで権利は有効となります。

つまり実際に配偶者が住んでいなくても、配偶者が生存しているうちは居住権がなくなる事はありません。

例外として、配偶者自身が配偶者居住権を放棄した場合は権利を消滅させる事ができますが、認知症になった配偶者に居住権の放棄をさせるのは至難の業です。

以上の事を考えると、物件の所有者である子供は 居住権を持つ親が死亡しない限りは実質的に物件の譲渡・売却ができず、自宅をもてあましてしまう可能性が高くなります。
引用元:昭和セレモニー

Q:わたしは配偶者居住権を取得しましたが,その後,老人ホーム等に入居することになりました。いらなくなった配偶者居住権を第三者に売って,介護施設に入るための資金を得たいと考えているのですが,どのようにしたらよいですか?

A:配偶者居住権は配偶者の居住を目的とする権利ですので,第三者に配偶者居住権を譲り渡すことはできません。もっとも,あなたが,配偶者居住権を放棄することを条件に,これによって利益を受ける建物の所有者から金銭の支払を受けることは可能です。

また,あなたは,建物の所有者の承諾を得れば,第三者に居住建物の使用又は収益をさせることができますので,例えば,使用しなくなった建物を第三者に賃貸することで,賃料収入を得て,介護施設に入るための資金を確保することもできます。
引用元:法務省

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