失踪宣告は相続人と連絡がとれない時に必要?相続で兄弟の所在不明!
10年ほど前に起こった我が家のトラブル体験談です。
きちんとした勤め先をもち、結婚もしていた次兄(当時36歳)が、酒に酔って女性に声をかけてからみ、近くにいた警備員が止めに入ったところで抵抗するという暴行事件で逮捕されました。
その警備員と女性両方との示談が成立したため、なんとか起訴されずに釈放されましたが、職業が宗教関係だったためセンセーショナルな話題として地方のニュースにも出ました。
また外聞が悪いということで仕事をクビになりました。
事件を起こした兄は釈放後に失踪
兄は預貯金を崩して弁当屋を始めたのですが経営がうまくいかずにやけになり、再度事件を起こしてしまいます。
酒に酔った兄は関係がぎくしゃくしていた奥さんをひどく殴り、傷害事件で逮捕されたのです。
奥さんの怪我が重かったことや裁判までに示談が成立しなかったことなどが重なり、次兄は3年の懲役を科されました。
釈放後の兄は一時期実家で親と一緒に生活していましたが、田舎では前科がある人間がそれを隠すのは難しく、また仕事も見つからないため、すぐに家を出て行ってしまいました。
その直後は上京して働いていたのですが、どこに勤めてもなかなか仕事が続かず、住居も点々としていました。

うちに帰ってこいよ。
…という両親の言葉を兄はうとましく思ったのか、だんだんと連絡がつかなくなりました。
父の葬儀にも現れず相続財産が凍結されたまま…
先だって父が亡くなったときに一度だけ連絡がついたものの、その後は電話にも全く出ませんでした。
そんな状況の中 父親の遺産相続について兄に連絡をとろうとしてもまったく連絡がつかず、預金は凍結され 実家の家と土地の名義変更もできない状態になりました。
裁判所を通じて兄が住んでいるはずの住所に召喚状を出してもらいましたが、受け取ってすらもらえず、

兄は本当に今でもそこに住んでいるのか!?
…はっきりしたことさえわからない状況です。
本人の所在が不明で連絡も取れないため、現在は法定相続人の相続分をそれぞれに渡し、兄の分は取っておくという形になっています。
それと並行して現地の代理人を雇って居住実態を踏査してもらったり、何度か実家のある県から現住所と思われる遠方の県まで足を運ばなければいけない状況です。
手間も時間もお金もかかり私たちも非常に困っていますが、こんな態度をとるところを見ると、おそらく兄は遺産も受け取りたくないのかもしれません。
それならそれでいいのですが、せめて連絡だけでもしてもらいたいです。
現在は兄が無事なのかさえわかりませんから

せめて生きていることだけでもわかればいいのだが。
…と思う日々です。
相続人が所在不明で遺産分割協議が行えない時の対処法
家族が亡くなって遺産相続をしようにも 相続人である兄弟が家出をして所在不明。
こういった事情があっても遺産分割協議は相続人が全員そろわなければ始められません。
相続人が一人でも欠ければ無効になるので、相続人に行方不明者がいれば銀行口座も解約できず、不動産の名義変更や売却もできません。
こういった場合に取れる手段は2つあります。
失踪宣告
不在者の財産管理人制度
失踪宣告
相続人が行方不明で、その生死が7年間以上不明な場合、その他の相続人などの利害関係者が失踪宣告の申し立てを家庭裁判所に行えます。
失踪宣告が認められたうえで一定の条件を満たすと、不在者が法律上「死亡」したものとみなすことができます。
失踪宣告を受けた人の生存が後からわかったら、失踪宣告の取り消しができますので心配ありません。
失踪宣告により死亡したものとして扱われれば、不在者は自動的に相続人から外されるので 遺産分割協議に参加する必要はなくなります。
失踪宣告の手続きが完了するまで1年から1年半ほどの時間を要するため、どうしても10か月以内に行うべき相続税の申告には間に合いません。
そのため「不在者の財産管理人制度」を使い 財産管理人を選任して遺産分割を進めていくことになります。
この場合、失踪宣告の申し立ては必須ではありません。
失踪宣告の申し立てをしないで不在者の財産管理人を選任して相続を進めることもできます。
不在者の財産管理人を選ぶ
今回の体験談のように 自分の意志で所在を明らかにしないだけで不在者が生きている可能性が高いとか、所在不明になってから7年未満の場合は まずは財産管理人の選任を請求します。
これは不在者が最後に住んでいたと思われる居住地の家庭裁判所に申し立てをし、家裁が財産管理人を選出します。
財産管理人の参加により遺産分割協議が行われ、相続を確定できるようになります。