隣人の孤独死遺体にひと晩付き添わざるを得なかった自治会長の体験談
60代男性 これは父親が孤独死した連絡にすぐに駆けつけない遠方に住む息子のために、ひと晩 孤独死遺体に付き添うことになった自治会長の話です。
私は東京近郊のニュータウン界隈に住んでおり、その地域の自治会長をしていました。
孤独死した男性は妻に先立たれて74歳で一人暮らししており、一人息子が愛媛県松山市に住んでいました。
年の瀬のある日、仕事をしていると妻から電話が入りました。
近所に住む一人暮らしのSさんが大学病院に救急車で運ばれたが、ときすでに遅く亡くなってしまった…と 近所の人から連絡があったとのこと。
それを受けてとりあえず妻がSさんが亡くなった病院に来ているということでした。
病院側の話では「病院に遺体を置いておくことはできないので、葬儀社に連絡して引き取ってほしい」ということだったのです。
妻はSさんの息子さんに連絡したのですが、

仕事が忙しいので今日は行けない。明日中に行くので、あとはよろしく。
…という信じられない答えだったということです。
信じられませんでした。
遠く離れて住む父親が亡くなったのです。
それも亡くなってから発見された「孤独死」です。
取るものもとりあえず駆けつけるのが、肉親ではないでしょうか。
私はびっくりするやら、あきれるやら…しまいには悲しくてやりきれない気持ちでした。
ゴミ屋敷で遺体を運び込めない!妻に他人の遺体を扱わせるなんて忍びない…
しかし立ち止まってはいられません。
まずは葬儀社に連絡して病院から搬送してもらい 斎場の方にご遺体を運ぶように 妻に手配するように伝えました。
孤独死したSさんの自宅はゴミ屋敷状態になっていて ご遺体を運び込めないという話を聞いていました。
自治会の役員とはいえ こんなことはは初めて。
しかも妻に他人の遺体の取り扱いをさせるなど、非常に忍びなかったです。
仕事を終え帰宅して斎場に向かうと、妻は煌々と明るいロビーに所在なさげに座っていました。
私に気がつくとそれまでのなりゆきを早口で話しだしました。
運びこまれたご遺体は今夜は斎場に用意された畳敷きの和室の控え室に安置するということでした。
Sさんの自宅から運んできた布団に寝かせていたということでしたが、その姿を見ると孤独死の悲しさ、哀れさをしみじみと感じました。
あの気難しい口をいつもへの字に曲げた顔には白い布が掛けられていました。
納棺していない遺体は葬儀社では管理できない!一晩遺体に付き添うことに…
そんな辛いやるせない気持ちになっていた私に、もう一つ難題が降りかかってきました。
葬儀社によると誰か関係者が遺体に付き添わなければならないというものでした。
納棺してない遺体は葬儀社では管理できないというのです。
孤独死、そして家族はすぐには来ない。
一体どうしたらいいものか!?
後から駆けつけてきた民生委員に相談したところ、やはり私たちが付き添わなければならないという結論になりました。
仕方がないので私が斎場で一晩付き添いました。
骨折り損!?自治会の面々に会釈して終わりの息子に唖然
翌日の、それも夜遅くにようやくやって来たSさんの息子は 父親の亡骸を見ても悲しむ様子もなく、こちらに軽く会釈しただけで 我々に対する礼もそこそこに、葬儀社と手続きの話を始めていました。
ご近所のよしみですのでこれくらいのことは…とは思います・・・が、この息子さんの態度には何か割り切れないものを感じましたし 亡くなったSさんが少しかわいそうに思えました。
都会の一人暮らしの孤独死の悲しい顛末を垣間見た出来事でした。


こどくし