- その女アレックス(ピエール ルメートル)
- 1922(スティーブン・キング)
- ルビンの壺が割れた(宿野かほる)
- 六人の嘘つきな大学生(浅倉 秋成)
- イニシエーション・ラブ(乾くるみ)
- 生存者ゼロ(安生正)
- ホーンテッド・キャンパス(櫛木理宇)
- 屍人荘の殺人(今村昌弘)
- バチカン奇跡調査官(藤木稟)
- 殺戮にいたる病(我孫子 武丸)
- カササギ殺人事件(アンソニー・ホロビッツ)
- ぼぎわんが来る(澤村伊智)
- 出版禁止(長江俊和)
- マスカレード・ホテル(東野圭吾)
- パラドックス13(東野圭吾)
- 仮面病棟(知念実希人)
- ドクター・デスの遺産 刑事犬養隼人(中山七里)
- 追憶の夜想曲(中山七里)
- ふたりの距離の概算 「古典部」シリーズ(米澤穂信)
- 死神の精度(伊坂幸太郎)
- パワー(ナオミ・オルダーマン)
- 天使の囀り(貴志祐介)
- 火車の残花 浮雲心霊奇譚(神永学)
- 重力ピエロ(伊坂幸太郎)
- 優しい死神の飼い方(知念実希人)
- 黒い家(貴志祐介)
- 砂漠(伊坂幸太郎)
- 記憶屋(織守きょうや)
- 硝子の塔の殺人(知念実希人)
- みんな邪魔(真梨幸子)
その女アレックス(ピエール ルメートル)
「週刊文春2014年ミステリーベスト10」堂々1位! 「ミステリが読みたい! 」「IN POCKET文庫翻訳ミステリー」でも1位。早くも3冠を達成した一気読み必至の大逆転サスペンス。貴方の予想はすべて裏切られる――。おまえが死ぬのを見たい―男はそう言って女を監禁した。檻に幽閉され、衰弱した女は死を目前に脱出を図るが…。ここまでは序章にすぎない。孤独な女の壮絶な秘密が明かされるや、物語は大逆転を繰り返し、慟哭と驚愕へと突進する。「この作品を読み終えた人々は、プロットについて語る際に他の作品以上に慎重になる。それはネタバレを恐れてというよりも、自分が何かこれまでとは違う読書体験をしたと感じ、その体験の機会を他の読者から奪ってはならないと思うからのようだ」(「訳者あとがき」より) 未曾有の読書体験を、貴方もぜひ!
引用元:amazon
30代女性 これはミステリーの小説です。名前を見ると全く内容がわからないのですが、まず表紙からインパクトがかなりあります。手に取るのは少し躊躇してしまうかもしれませんが、一度手に取ると最後です。読み進める手が止まりません。
まずとても魅力的で綺麗な女性が誘拐されてしまうところからはじまります。その女性はどんな男性も振り向かせてしまうようなどこかミステリアスな魅力をもっています。そのことを自覚しているのかしていないのか、掴みどころのない不思議な主人公です。
そして、この誘拐事件を追う警察官の男性がいます。この男性は、過去に忘れることが出来ない自分自身に関わる事件があり、こういった事件からは離れていました。特に誘拐事件からは。
この警察官には妻がいました。でも今はいないのです。どうしてもこの誘拐された女性を助けたい、でも自分にこの事件を解決することができるのか、葛藤の中で同僚たちと力を合わせて解決していく姿も見ものです。
読み進めていくうちに本当に物語の中に引き込まれていき時間を忘れてしまいます。少し目を覆いたくなるような描写もありますが、それも最後まで納得できます。
後半からの展開はどんでん返しが待ち構えています。ぜひ期待して読んでもらいたいと思います。
20代女性 イギリスの作家によるミステリー小説で、誘拐事件に巻き込まれる女性と、その誘拐事件を追う刑事の2つの視点を交互に読ませる構成となっています。被害者女性の描写で分からない部分は刑事目線で語られ、刑事の描写で分からない部分は被害者女性目線で語られるため、ページを捲るたびに疑問とその解消が交互に織りなされ、読む手が止まらないとはまさにこのこと。
本作は全3部構成ですが、1部を読んだ後に2部を読み始めたときのパズルがカチリとハマりだした時の脳からの快感物質は、一度読んだ後ではもう味わえないのが惜しいほどです。
是非映画化してほしい一本ではありますが、過激な描写が多いのと内容の膨大さから2時間でまとめ切るのは無理かなと思います。一応続き物ではありますが、こちら一本でも十分に楽しめる作品です。サスペンスミステリー好きには絶対におすすめしたい一冊です。
1922(スティーブン・キング)
恐怖の帝王キングの最新作品集!かつて妻を殺害した男を徐々に追いつめる狂気。友人の不幸を悪魔に願った男が得たものとは。巨匠が描く、真っ黒な恐怖の物語を2編。
引用元:amazon
40代女性 スティーブン・キングの中・短編集で、暗黒を感じさせる一冊。救いのなさはキング作品の中でも五本の指に入るのではないかと思われます。
死や死体の描写、ネズミなどの様子は、具体的に映像が浮かぶようで 流石と言いたくなるほどの筆力を感じさせます。
ただ、それらの描写は読んでいて気分が悪くなるというだけではなく、どこか悲哀を感じさせるものであり、不気味なホラーの中に、ほの暗い美を思わせるところがあり、だからわたしはスティーブン・キングが大好きなのです。
「1922」の前に読んだのは上下巻の長編「ファイヤスターター」でした。こちらもスティーブン・キングの救いのなさが特徴の作品ではあったが、愛らしさや愛情、優しさがありましたが、「1922」は、もっと厳しく、つきつけられるような現実味を感じました。
より研ぎ澄まされた目で現実に生きる人々の心や生き様を見つめるスティーブン・キングの姿を思わせる作品でした。
スティーブン・キング作品は、暗黒の中から光の中に脱出するカタルシスがある作品と、そうではなく、徹底的に暗黒を打ち付けるものの二つの種類があると思いますが「1922」は、間違いなく後者です。
ハッピーエンドの真逆のものではありますが、それがあまりにも徹底的なので、かえって読んでいてすがすがしい。甘ったるい抒情より、「そうだ、これがリアルだ」と思わせられるような、暗黒的な作品。私は これはこれで良い物だと思います。
これは、スティーブン・キングを読み始めてその魅力にとりつかれつつある人にはぜひ読んで欲しい一作です。
ルビンの壺が割れた(宿野かほる)
「突然のメッセージで驚かれたことと思います。失礼をお許しください」送信した相手は、かつての恋人。フェイスブックで偶然発見した女性は、大学の演劇部で出会い、二十八年前、結婚を約束した人だった。やがて二人の間でぎこちないやりとりがはじまるが、それは徐々に変容を見せ始め……。先の読めない展開、待ち受ける驚きのラスト。前代未聞の読書体験で話題を呼んだ、衝撃の問題作!
引用元:amazon
20代男性 本のページ数が少ないため非常に読みやすく、内容がとにかく衝撃的で ラストのどんでん返しが凄いです。この小説のどんでん返しは私が今まで見てきたドラマや映画と比べても 間違いなく過去最高でした。
そしてジャンル自体もサスペンスなのか、ホラーなのか、どこに分類されるか分からない程とにかくラストが衝撃的。色々衝撃的な部分は多かったが、一番私が引き込まれたのは展開の速さ。ページを捲るたびに衝撃の内容が次々と出てきてジェットコースターのように目まぐるしい内容となっています。
私は今までいろいろな小説を読んでも内容に感情移入があまりできないために 楽しめることが少なかったのです。小説に苦手意識すら持っていたため この何年も小説を読んでいなかったのですが、ある時友人から「これだけは読んでくれ。絶対に後悔しないから」と紹介されたのが本書でした。
そして読み終わった時には 今まで小説を読んで味わったことのない衝撃を感じました。
文章の構成や伏線の散りばめ方、そして登場人物全員が多いにも関わらず深い闇を抱えていること。様々な情報が入り乱れているように思えるものの 読んでみると感情移入がしやすく、気づいたら読み終わってしまっていました。
感情移入をしすぎてラストの内容には鳥肌が止まらず 次の日まで恐怖を引きづるほどでした。そこまで感情移入ができたのは この本が男女のFacebookのメッセージのやりとりがメインとなり進んでいくからかもしれません。
『今まで味わったことの無い衝撃を味わいたい方』には特におすすめの一冊です。
六人の嘘つきな大学生(浅倉 秋成)
成長著しいIT企業「スピラリンクス」が初めて行う新卒採用。最終選考に残った六人の就活生に与えられた課題は、一カ月後までにチームを作り上げ、ディスカッションをするというものだった。全員で内定を得るため、波多野祥吾は五人の学生と交流を深めていくが、本番直前に課題の変更が通達される。それは、「六人の中から一人の内定者を決める」こと。仲間だったはずの六人は、ひとつの席を奪い合うライバルになった。内定を賭けた議論が進む中、六通の封筒が発見される。個人名が書かれた封筒を空けると「●●は人殺し」だという告発文が入っていた。彼ら六人の嘘と罪とは。そして「犯人」の目的とは――。『教室が、ひとりになるまで』でミステリ界の話題をさらった浅倉秋成が仕掛ける、究極の心理戦。
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40代男性 ここに受かれば人生安泰という優良企業スピラリンクスの最終面接に残った六人の優秀な就活生。はじめはグループディスカッションで全員合格もあり得ると言われていたのですが、彼らがグループディスカッションに向けての準備を通して仲良くなったところで内容が変わります。六人で話し合って一人の内定者を決めろと。
「フェア」に内定者を決めようとするのですが、密室である試験会場に謎の封筒が現れ、彼らの黒い一面が明らかになっていきます。
YouTubeで伏線がすごい作品として紹介されていて「騙されないぞ」と身構えて読んだのですが、ものの見事に騙されました。コロコロと登場人物たちの印象が変わる様は 作者の手のひらの上で転がされているようで 悔しいながらも心地よかったです。
またミステリーとしても良作なのですが、人間の本質を見抜くことがいかに難しいことなのか、自分が人からどう見えているのかなど、考えさせられる内容も多い作品でした。これから就活を迎える大学生や高校生に強くお勧めしたい作品です。
イニシエーション・ラブ(乾くるみ)
「必ず二回読みたくなる」と絶賛された傑作ミステリー。僕がマユに出会ったのは、人数が足りないからと呼びだされた合コンの席。理系学生の僕と、歯科衛生士の彼女。夏の海へのドライブ。ややオクテで真面目な僕らは、やがて恋に落ちて…。甘美で、ときにほろ苦い青春のひとときを瑞々しい筆致で描いた青春小説──と思いきや、最後から二つめのセリフ(絶対に先に読まないで!)で、本書はまったく違った物語に変貌してしまう。
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20代男性 読みはじめは何の変哲もない恋愛の本だなと思いながら読み進めていましたが 最後に大どんでん返しの内容が書かれており「どこでそうなったの?」
この作品の話の進み方や登場人物の行動など、状況整理をするような思考に陥ってしまい、思わずもう1度読んでしまう本です。
本作は様々な有名人の方も絶賛している作品で、ある方はこの作品を「最高傑作のミステリー」と評して紹介しています。
実際にこの作品は恋愛の部分は多いですが、作品の途中に様々な伏線があり、実際は様々な心情を利用したミステリー小説だと私も感じています。本作は映画化もされています。
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生存者ゼロ(安生正)
第11回『このミステリーがすごい! 』大賞・大賞受賞作、待望の文庫化! 北海道根室半島沖の北太平洋に浮かぶ石油掘削基地で、職員全員が無残な死体となって発見された。救助に向かった陸上自衛官三等陸佐の廻田と、感染症学者の富樫博士らは、政府から被害拡大を阻止するよう命じられる。北海道本島でも同様の事件が起こり、彼らはある法則を見出すが…。未曾有の危機に立ち向かう! 壮大なスケールで「未知の恐怖」との闘いを描くパニック・スリラーです。
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30代女性 北海道根室半島沖にある石油採掘基地からの連絡が途絶えたため、陸上自衛隊が調査に向かうことに。当初はテロかとも思われたのですが、派遣された隊員の廻田が基地で見たのは無残な姿となった死体の数々でした。
一転、疑いの目は感染症へと向けられ、廻田は感染症学者の富樫や生物学者の弓削と共に原因究明に尽力することになります。しかし、巡田達の尽力もむなしく感染症と疑われる症状は北海道に上陸、町を襲い、多くの人々を死に至らしめていき、やがて感染症の意外な正体が発覚し、巡田達は命懸けの戦いに身を投じることになるのだった…。
かなり分厚い小説で読み応えは抜群です。しかし、分量の多さを感じさせない良質でスリリングな内容でした。
感染症学者に自衛隊員、生物学者など、ハリウッド映画さながらの登場人物はいずれも個性的で魅力的。随所にグロテスクな表現があったり人が次々に死んでいく表現があったりするので、苦手な人もいるかもしれませんが、それがなければ本作の魅力は半減すると言っても過言ではありません。
分量は多い内容ですが、余分なストーリーはなく、全てがうまく絡み合って一つの作品となっているように思えました。何より、ストーリーが進行したところで明かされる感染症の意外な正体には驚かされます。
さらにそこから展開していくハリウッド映画さながらの怒涛のストーリーは読む手が止まらなくなること間違いなしと思えるほどのスピード感がありました。ハリウッド映画を観たような気分になれる一冊です。
ホーンテッド・キャンパス(櫛木理宇)
八神森司は、幽霊なんて見たくもないのに、「視えてしまう」体質の大学生。片想いの美少女こよみのために、いやいやながらオカルト研究会に入ることに。ある日、オカ研に悩める男が現れた。その悩みとは「部屋の壁に浮き出た女の顔の染みが、引っ越しても追ってくる」というもので…。次々もたらされる怪奇現象のお悩みに、個性的なオカ研メンバーが大活躍。第19回日本ホラー小説大賞・読者賞受賞の青春オカルトミステリ!
引用元:amazon
20代男性 KADOKAWAから出版されているホラー作品では珍しく既刊18巻(2022年1月現在)の長編となっています。小説1巻分を使う長編のお話はたまにあるものの、1話簡潔の話がとても読みやすいと感じました。
背筋がゾッとするような話はたくさんあるわけではないが、主人公やヒロインその二人を取り巻く人間関係の変化なども楽しめる作品となっています。また主人公やヒロイン、周辺人物が大学生ということもあり、大学生特有のあるある(金欠や一人暮らし)が所々に散りばめられているためとても共感しやすい部分も多いです。
ホラーを楽しみつつ主人公やヒロインの色恋や周辺人物との人間関係などのホラー以外の部分を楽しめる唯一無二の作品と思えます。
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屍人荘の殺人(今村昌弘)
神紅大学ミステリ愛好会会長であり『名探偵』の明智恭介とその助手、葉村譲は、同じ大学に通う探偵少女、剣崎比留子とともに曰くつきの映画研究部の夏合宿に参加することに。合宿初日の夜、彼らは想像だにしなかった事態に遭遇し、宿泊先の紫湛荘に立て籠りを余儀なくされる。全員が死ぬか生きるかの極限状況のもと、映研の一人が密室で惨殺死体となって発見されるが、それは連続殺人の幕開けに過ぎなかった。――たった一時間半で世界は一変した。究極の絶望の淵で、探偵たちは生き残り謎を解き明かせるのか?! 予測不可能な奇想と破格の謎解きが見事に融合する、第27回鮎川哲也賞受賞作。
30代女性 大学ミステリ愛好会の葉村譲と明智恭介が探偵美少女の剣崎比留子と共に映研の夏合宿に参加するが、訪れたペンションで「想像だにしなかった」事態に見舞われるというストーリー。ミステリーではよく「嵐で島から脱出できない」とか「山奥の村から出る唯一の道で土砂崩れ」といった外界と遮断された環境に陥るクローズドサークルという手法が用いられますが、この小説はクローズドサークルの作り方が一味違うのです。そして、それが殺人の手法にも関わってきます。正直、現実的ではないし、笑ってしまうような状況なのですが、ミステリーとしてトリックの部分はしっかりしています。数多のミステリー作品が排出された現代、まだこんな手法があったのかと驚かされました。登場人物の名前も覚えやすく、キャラが立っているので、普段小説を読まない方でも読みやすいと思います。
バチカン奇跡調査官(藤木稟)
天才科学者の平賀と、古文書・暗号解読のエキスパート、ロベルト。2人は良き相棒にして、バチカン所属の『奇跡調査官』世界中の奇跡の真偽を調査し判別する、秘密調査官だ。修道院と、併設する良家の子息ばかりを集めた寄宿学校でおきた『奇跡』の調査のため、現地に飛んだ2人。聖痕を浮かべる生徒や涙を流すマリア像など不思議な現象が2人を襲うが、さらに奇怪な連続殺人が発生し。天才神父コンビの事件簿、開幕!
20代女性 この本は”バチカン”とある通り、キリスト教関連の物語です。しかし宗教的な内容ではなく、「マリア像が涙を流す」などといったいわゆる”奇跡”を、奇跡として認定するかを化学や推理で検証するというものです。主人公の平賀と相棒のロベルトが、お互いの欠点(知識や性格)をお互いに補い合うのが読んでいてほっこりします。また、2人にはそれぞれの得意分野があり、奇跡の謎に対してお互いの能力が気持ちいいくらいかみ合い解決したときはとても爽快です。
主人公の平賀は、天才ですが考え事をしていると食事も忘れてしまうくらいの天然で、ロベルトは知識や頭の回転は平賀に及ばないものの、家事や平賀の身の回りのこと・調査現地でのコミュニケーションは完璧なので、お互いにお互いを補い合うところがとても好きです。
本格的な推理や不思議な出来事が好きな方にはかなりおすすめできる本です。現在20巻以上出ていますが、まずは1巻だけでも読んでみてください。
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殺戮にいたる病(我孫子 武丸)
永遠の愛をつかみたいと男は願った―。東京の繁華街で次々と猟奇的殺人を重ねるサイコ・キラーが出現した。犯人の名前は、蒲生稔!くり返される凌辱の果ての惨殺。冒頭から身も凍るラストシーンまで恐るべき殺人者の行動と魂の軌跡をたどり、とらえようのない時代の悪夢と闇を鮮烈無比に抉る衝撃のホラー。
30代女性 私は元々ミステリー小説には全く興味の無い人間だったのですが、「殺戮にいたる病」を読んでからミステリー小説が大好きになり、その中でも叙述トリックが巧みで最後にどんでん返しが起こる小説の虜になってしまいました。この小説の内容を記憶からなくしてもう一度読んで、あの最後「えっ??どういうこと??」とページを何度も遡り考察を繰り返し 楽しかった時間をもう一度味わいたい程です。
ただちょっと表現がグロテスクな部分があります。私は元々そういうのが苦手だったのですが、この小説ばかりはストーリーの先が気になりすぎて 黙々とあっという間に読み進めてしまいました。有名な作品ですが、運良くこの小説に対して1ミリも情報が入っていない方には強くお勧めしたい作品です。
40代男性 陵辱と殺人を繰り返す犯人と、その真実に迫る家族たちを交互に描く、サスペンス・ミステリーです。犯人はどう考えてもサイコであり、救いようのない人間です。ただ殺すだけではなく、明らかにフェティッシュな性的倒錯をもって禁忌を犯していきます。ですが普段は日常生活を普通に送っているため、ほとんどの人に気付かれずに殺人を繰り返していきます。
特に秀逸なのは家族の主観で、読者もそれに引き摺られていくのですが、そこが大きなミスリードポイントです。本著を最後まで読んでいくと、それまで信じていたものがひっくり返り、あっと驚く結末が待っています。本当にラストのカタルシスが素晴らしい作品です。
カササギ殺人事件(アンソニー・ホロビッツ)
【本屋大賞翻訳小説部門第1位獲得! ついに5冠達成! !ミステリを愛するすべての人々に捧げる驚異の傑作】2019年本屋大賞翻訳部門第1位 『このミステリーがすごい! 2019年版』第1位 『週刊文春ミステリーベスト10 2018』第1位 『ミステリが読みたい! 2019年版』第1位 『2019本格ミステリ・ベスト10』第1位ミステリ界のトップランナーが贈る、すべてのミステリファンへの最高のプレゼント!1955年7月、パイ屋敷の家政婦の葬儀がしめやかにおこなわれた。鍵のかかった屋敷の階段の下で倒れていた彼女は、掃除機のコードに足を引っかけたのか、あるいは……。その死は小さな村の人々へ徐々に波紋を広げていく。消えた毒薬、謎の訪問者、そして第二の死。病を抱えた名探偵アティカス・ピュントの推理は――。現代ミステリのトップ・ランナーによる、巨匠アガサ・クリスティへの愛に満ちた完璧なるオマージュ作品!
50代女性 アガサクリスティー風の切り口で、ポワロのようなドイツ人の探偵が出てきます。舞台も戦後のクリスティーが描いていたイギリスの古き良き田舎で、平穏な村に起きる殺人事件です。村人は皆善良な人たちなのに全員に動機があって、全員が怪しい…こういうところもクリスティーみたいで楽しい。
そして上巻が終わる頃、そろそろドイツ人の探偵さんが解決しそうだというところで驚きの展開が待っています。まったく新しい構成。クリスティーもどきの殺人事件は入り子みたいになっていて、話は急に現代になるのですが、この展開には正直戸惑いました。早く犯人が知りたいのにお預けさせられた感じで、諦めたころにこの現代の話の展開も殺人事件ですが面白くなっていきます。ここまで読んでそそられた方は、ぜひご一読を。
ぼぎわんが来る(澤村伊智)
“あれ”が来たら、絶対に答えたり、入れたりしてはいかん。幸せな新婚生活を送る田原秀樹の会社に、とある来訪者があった。それ以降、秀樹の周囲で起こる部下の原因不明の怪我や不気味な電話などの怪異。一連の事象は亡き祖父が恐れた“ぼぎわん”という化け物の仕業なのか。愛する家族を守るため、秀樹は比嘉真琴という女性霊能者を頼るが…!?全選考委員が大絶賛!第22回日本ホラー小説大賞“大賞”受賞作。
20代女性 ホラー小説ですが、とても読みやすくすぐに読み切ってしまいました。主人公の視点が章によって変わります。この人はこう考えていたのかとか、それが別の視点で見たらこう見えていたのか、など分かりやすく書かれています。ホラーという括りですが、ミステリー要素も多く、そういった意味でも楽しめました。
文章なのに臨場感があるので、ゾッとするところもあり、一気に読んでしまいました。共通の登場人物が活躍するシリーズものなので、本書は一冊簡潔ですのでこれだけでも楽しめますが、これを読んだあとに他のシリーズ作品も一緒に読むのもおすすめです。
ホラーという性質上、残酷な描写もあるため、苦手な人は受け付けないかもしれませんが、パッと読めて、適度に刺激を求めている人にはおススメです。映画化もされています。
出版禁止(長江俊和)
著者・長江俊和が手にしたのは、いわくつきの原稿だった。題名は「カミュの刺客」、執筆者はライターの若橋呉成。内容は、有名なドキュメンタリー作家と心中し、生き残った新藤七緒への独占インタビューだった。死の匂いが立ちこめる山荘、心中のすべてを記録したビデオ。不倫の果ての悲劇なのか。なぜ女だけが生還したのか。息を呑む展開、恐るべきどんでん返し。異形の傑作ミステリー。
20代男性 著者である長江俊和が、若橋呉成というライターのルポタージュを受け取るところから物語は始まり、基本的にはこのルポタージュを読むことで進んでいきます。彼の取材記録とインタビューなので、一人称視点で読みやすく、本当の記事を読んでいるような気分になります。
有名なドキュメンタリー作家と心中し、生き残った新藤七緒への独占インタビュー。死のにおいが立ち込める山荘、心中の全てを記録したビデオ。なぜ彼女だけが生き残ったのか。記事の中で明らかになるにつれて、ゾクゾクが止まらなくなり、あっという間に一気読みしてしまう面白さです。
作中作という形で、ルポタージュの視点を抜けた瞬間に、なぜこのルポタージュが出版禁止になったのか、どんでん返しと言うよりも、突然深い穴に落とされるような衝撃を受けます。読み終わった後にも多くの仕掛けがあり、読後に考察などを調べるとさらに面白いです。
マスカレード・ホテル(東野圭吾)
都内で起きた不可解な連続殺人事件。容疑者もターゲットも不明。残された暗号から判明したのは、次の犯行場所が一流ホテル・コルテシア東京ということのみ。若き刑事・新田浩介は、ホテルマンに化けて潜入捜査に就くことを命じられる。彼を教育するのは、女性フロントクラークの山岸尚美。次から次へと怪しげな客たちが訪れる中、二人は真相に辿り着けるのか!? 大人気シリーズ第1弾のミリオンセラー。
30代女性 ある連続殺人事件の次回殺害予告の現場は、都内一流ホテル”ホテル・コルテシア東京” 事件を追う刑事新田浩介はホテル・コルテシア東京のホテルマンとして潜入捜査を始めます。
そこで新田の指導係を務めることとなる優秀ホテルマン山岸尚美。正義感が強くプライドの高い2人、”警察官として”、”ホテルマンとして”、ぶつかりながらも、クレーマー・スキッパー・ストーカーなど、次々と現れる怪しいお客様に奮闘していく中で、信頼関係を気付き、絆が深まりながら事件解決に向かっていきます。
数々と起こる事件にハラハラしながらも、全力で挑む2人の姿にアツくなります。また長編ミステリーですが、テンポがいいので読み心地も良かったです。
パラドックス13(東野圭吾)
13時13分13秒、街から人が消えた。無人の東京に残されたのは境遇も年齢も異なる13人の男女。なぜ彼らが選ばれたのか。大雨と地震に襲われる瓦礫の山と化した街。そして生き抜こうとする人達の共通項が見えてくる。世界が変われば善悪も変わる。殺人すらも善となる。極限の状態で見えてくる人間の真理とは。この世界の謎を解く鍵は、数学的矛盾<パラドックス>にある。
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40代女性 現代にいる13人が時空を超えて別の次元に移動してしまうのですが、別の次元でも移動先は自分達の街。誰もいない。地震や水害が起こり、食べ物も尽きてくる。そんな過酷な状況下で、仲間同士の裏切りもあって命尽きたり、切羽詰まった時の人間の優しさ、協調性、ドロドロした部分が浮き彫りになります。
日本人はみんな死んでしまったんだと思い、生き残った自分達はなんとか生活するすべを身につけ、子孫も繁栄していかなくてはならないと奮闘しますが・・・。食べ物もなくなり、明かりもない中で、国会議事堂なら非常食もあり電気もつくだろうと、いつ死んでもおかしくない状況の中で必死でたどり着いてホッとしたのも束の間、今までにないくらいの地震に水害が襲いかかり・・・。
帯に「徹夜して読んでしまう」と書かれていましたが、私も徹夜して読み切って仕事に行きました。この本は読み始めたら途中でやめられません。おすすめです。
仮面病棟(知念実希人)
強盗犯により密室と化す病院。息詰まる心理戦の幕が開く! 療養型病院にピエロの仮面をかぶった強盗犯が籠城し、自らが撃った女の治療を要求した。先輩医師の代わりに当直バイトを務める外科医・速水秀悟は、事件に巻き込まれる。秀悟は女を治療し、脱出を試みるうち、病院に隠された秘密を知る――。そして「彼女だけは救いたい……」と心に誓う。閉ざされた病院でくり広げられる究極の心理戦。迎える衝撃の結末とは。人気急上昇の新鋭ミステリー作家で現役医師が描く<本格ミステリー×医療サスペンス>
引用元:amazon
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ドクター・デスの遺産 刑事犬養隼人(中山七里)
死ぬ権利を与えてくれ―。安らかな死をもたらす白衣の訪問者は、聖人か、悪魔か。警視庁VS闇の医師、極限の頭脳戦が幕を開ける。安楽死の闇と向き合った警察医療ミステリ!
引用元:amazon
30代男性 安楽死をテーマとした作品です。「悪いお医者さんが来てお父さんを殺しちゃった」という少年の悪戯のような110番通報から物語は始まります。
1990年頃、ジャック・ケヴォーキアンというアメリカの医師が違法な安楽死を行い、服役して釈放後も安楽死に関する啓蒙活動を続けていました。
ドクターデスと呼ばれた彼にちなんだのか『ドクターデスの診察室』というサイトで安楽死を請け負っている人物がいることが 警察の捜査で判明します。
主人公である犬養隼人はそのドクターデスを捕まえるために奮闘する…という筋なのですが、この事件の特徴は「殺された被害者もその遺族のどちらも死を望んでいた」「不幸になった人間が誰もいない」という点です。
冒頭の通報をした少年の母親が、夫の死に対して

ドクターデスには感謝してもしきれない。
…と言った心情の吐露はとても印象的でした。
この小説は映画化もされているのですが、主人公とその相棒の性格が変更されていたり、何より作品のラストがとても大きく変更されています。そのラストこそがこの作品の根幹をなす部分だと思うので、映画より小説を強くお勧めしたいです。
クライマックスの犬養刑事と犯人とのやり取りの中で 読者が何を感じ何を思うのか、人の感想を聞くのも楽しみになるような作品です。
また犬養隼人シリーズとしてこの作品は第5段ですが、第一弾の『切り裂きジャックの告白』も臓器移植をテーマとした医療ミステリになっていておすすめです。
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追憶の夜想曲(中山七里)
豪腕ながらも、依頼人に高額報酬を要求する“悪辣弁護士”御子柴礼司は、夫殺しの容疑で、懲役十六年の判決を受けた主婦の弁護を突如、希望する。対する検事は因縁の相手、岬恭平。御子柴は、なぜ主婦の弁護をしたのか?そして第二審の行方は?
引用元:amazon
20代男性 どんでん返しの帝王と呼ばれる中山七里さんの弁護士 御子柴礼司シリーズの作品です。御子柴は少年時代に殺人事件を起こしており、数ある出会いを経て弁護士になることを目指し、弁護士になってからは、どんな窮地に陥ってる人間でも必ず弁護し、確実に勝利します。
本作は夫殺しの罪で懲役16年の判決を受けた主婦の話です。対する相手は中山七里シリーズにも登場する岬という非常に優秀な検事。この検事を相手にどんな弁舌を展開するのかが見ものです。
中山七里さんの作品の特徴は、今まで感じたことのないどんでん返しによる爽快感と 一度登場した人物が他の作品でも出てくるという点です。今回の作品も、作品自体の面白さはもちろんありますが、他のシリーズを読んでいる方は 出てくる登場人物にもテンションが上がること間違いなしです。
ふたりの距離の概算 「古典部」シリーズ(米澤穂信)
春を迎え高校2年生となった奉太郎たちの<古典部>に新入生・大日向友子が仮入部する。千反田えるたちともすぐに馴染んだ大日向だが、ある日、謎の言葉を残し、入部はしないと告げる。部室での千反田との会話が原因のようだが、奉太郎は納得できない。あいつは他人を傷つけるような性格ではない。奉太郎は、入部締め切り日に開催されたマラソン大会を走りながら、心変わりの真相を推理する! 大人気青春ミステリ、<古典部>シリーズ第5弾
引用元:amazon
20代男性 高校生 折木奉太郎を中心とする、新入部員の退部をめぐるミステリー小説です。ミステリーと聞くと難しそうと思ったり、なんとなく敬遠したりする人もいるかもしれませんが、人物や情景の描写がしっかりとしている本書は、最後まで光景をイメージしながら読み進めていけます。気負わず気楽に読み進められる一冊です。
日常の小さな疑問から、主人公たちが物語全体を通じて挑む大きな謎まで、数多くの謎解きを体験できます。物語全体に散りばめられた手がかりや伏線、最後の最後に待ち受ける大どんでん返しなど、ミステリーならではの面白さも盛りだくさんで 読後に大満足すること間違いなし。ミステリー初心者から数々の推理小説を読み込んだ上級者まで、幅広い人たちに読んで、そして楽しんでもらいたい一冊です。
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死神の精度(伊坂幸太郎)
1、CDショップに入りびたり、 2、苗字が町や市の名前であり、 3、受け答えが微妙にずれていて、 4、素手で他人に触ろうとしない。そんな人物が身近に現れたら、それは死神かもしれません。1週間の調査ののち、その人間の死に〈可〉の判断をくだせば、翌8日目には死が実行される。クールでどこか奇妙な死神・千葉が出会う6つの人生。 日本推理作家協会賞(短編部門)を受賞した表題作ほか、「死神と藤田」「吹雪に死神」「恋愛で死神」「恋路を死神」「死神対老女」を収録。
引用元:amazon
20代女性 この物語を読んで、「悩みすぎても仕方ない」とある意味諦められるようになりました。
この小説の主人公は死神なので、基本人間の悩みについて無頓着です。「人間はどうしてそんな無意味なことをするのか?」と疑問に思う主人公の視点から、「自分が行ったことに対してあまり考えすぎても仕方ないのかもしれない」と肩の力を抜けるようになりました。人間社会に疲れてしまった人には思わず刺さる台詞が見つかるかもしれません。
また「客観的な視点の大切さ」を学びました。「死」がテーマなだけに、この物語に出てくる人間は千葉の判断によって死ぬことになります。しかしそれまでの経緯を読者は知っているので「主観だけで動く危険性」を学べます。
様々な視点で世界を見ることができるのが小説の醍醐味だと思うので、この小説は一層世界観を楽しむことができると思います。
そしてこの物語は「人間を多面的に捉えるべきだ」と感じる瞬間が多々あります。物語中に、殺人を計画する男が現れ 最終的には「死」を許可されるのですが、終盤になるにつれて、男の殺人に至る経緯や過去の苦しみなど複雑な心情も解き明かされます。一つの面だけで相手を捉えることの危険性も感じました。
パワー(ナオミ・オルダーマン)
ある日を境に、女たちが、手から強力な電流を発する力を得る。最年少かつ、最強の力を持つ14歳の少女ロクシーは母を殺された復讐を誓い、市長マーゴットは政界進出を狙い、里親に虐待されていたアリーは「声」に導かれ、修道院に潜伏する。そして、世界中で女性たちの反逆がはじまった。オバマ前大統領のブックリストや、エマ・ワトソンのフェミニストブッククラブの推薦図書となった男女逆転ディストピア・エンタテインメントがついに邦訳!
30代女性 どんでん返しが好きな方には大変おすすめの一冊です。普通、本というのは本編さえあれば前書きもタイトルも著者も表紙のデザインも究極的にはどうでもいいものです。この本のすごいところは、表紙や著者名、前書きまで含めて、すべてが作品であるということです。章ごとの挿絵も、読んでいるときの気分を非常に盛り上げてくれて物語への没入感を強めてくれますが、この挿絵はそれだけではなくもう一つの意味を持っていることを、読了時には知ることになります。
本編を読み終わったと思い「すごい話だったな。難しいけれど大切なテーマが伝わって来た。そういうことが言いたかったんだ」と安心してわかったような気になった瞬間、まだ続きます。まだ最後にして最大の一撃をこの作品はもっています。
今までずっと伝えられてきた複雑で難しいテーマを使って この作者がエンターテイメントも同時にやっていたことを知って愕然とします。まじめな顔でまじめなメッセージをしっかり重く受け止めるつもりで読んでいたら、なんとこれは楽しむためのものでもあったのか…と驚かされます。
そしてやはり、一つの場面にいくつもの意味が持たされているのが名作の証です。このラストで、この小説が娯楽のための小説でもあったことが明かされると、そのこと自体がこのテーマを伝えた時に想定される反論に、とても見事に反論して見せる構造になっています。本当に素晴らしいです。
批判的な読者からの全ての批判を想定して「これでどうだ!」と叩き返す作者の方の聡明さに喝采を送りたくなる作品です。最後の1ページまで読んだ時、最初のページや章ごとに差し込まれていた考古学的な資料に感じた違和感の謎が全て溶けます。その瞬間「ああ、ここまで読んで受け取るものが、この本のテーマなのか」と理解する瞬間が大変爽快で、こんなアイデアを文章にして他人に理解させる力を持つ人のことを、天才というのだなと圧倒されます。
読了直後は考えることが尽きず、天才の大きな仕事と、このテーマを実感を持って受け止められる時代であることに、複雑な思いを感じることができます。5000年後の未来の社会では、その時代の読者にとって意味の分からない作品になっているかもしれません。読了後に2020年代を生きる読者がこのようなことを想像することも、きっと作者の想定内なんだと思います。
天使の囀り(貴志祐介)
北島早苗は、終末期医療に携わる精神科医。恋人の高梨は、病的な死恐怖症(タナトフォビア)だったが、新聞社主催のアマゾン調査隊に参加してからは人格が異様な変容を見せ、あれほど怖れていた『死』に魅せられたように自殺してしまう。さらに、調査隊の他のメンバーも、次々と異常な方法で自殺を遂げていることがわかる。アマゾンでいったい何が起きたのか? 高梨が死の直前に残した「天使の囀りが聞こえる」という言葉は、何を意味するのか? 前人未踏の恐怖が、あなたを襲う。
20代女性 淡々としたタッチなのに後半にいくにつれてどんどんグロくなっていき想像を掻き立てられる文章です。なんとも言えない気持ち悪さが込み上げてきて、刺激的な体験をしてみたい人には一押しの本です。最初はとても淡々としていて、一体なんの話なんだ?とつまらなくなりそうな手紙の文面がつらつらと書いてあり、その静けさが余計に後半のザワザワ感を増しているように思います。
この本のテーマは現実にも起きそうな感じがして、読み終えてから時間が経った今でも時々思いだして鳥肌が立ちます。きちんと最初から最後まで話がつながっているので納得感も十分に得られる本です。また、私たちが普段感じることのない感覚を表現していて、それがなんとなく理解できてしまうのも、この文章のすごいところだと思います。
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火車の残花 浮雲心霊奇譚(神永学)
霊を見ることができる赤眼を持つ「憑きもの落とし」の浮雲は、旅の途上の川崎で奇妙な噂を耳にする。罪人の亡骸を奪い去る妖怪・火車が、多摩川で次々と人を殺しているという。殺された者は水死体にもかかわらず、なぜか黒焦げになっていた。一方、宿では亭主の息子が何者かに取り憑かれ、刃物を持って夜な夜な歩き回っていた。ふたつの事件に繋がりがあると睨んだ浮雲は、連れの土方歳三と才谷梅太郎とともに調べを進める。やがて点と点が繋がったとき、衝撃の真相が明らかになる。そして惨劇の裏に秘められた切ない想いとは。先の読めない展開と、その果てにある慟哭。『心霊探偵八雲』の著者が贈る、文学史上最も切ない幕末ホラーミステリ。
40代女性 浮雲心霊奇譚シリーズのひとつです。生まれつき目の色が真っ赤な浮雲は、霊が見えるという特異体質で、霊のお祓いを生業にしています。1日中お酒を飲んでいて、とてもだらしなく生きている風なのですが、霊を祓うときは凛としていてとてもカッコよくなります。
また、祓い方も一風変わっていて、なぜその人に霊がついたのか、背景を調べてから霊と対峙するスタイルです。お金に貪欲でお酒が好きで女好き…と一見いいところがなさそうに見せていますが、不器用で心根のやさしさが垣間見えるところがとてもいいです。
怪奇現象的な本はいろいろあると思いますが、浮雲の生い立ちなど、シリーズを読んでいくと、きっとはまると思います。とても数奇な運命に翻弄されながら、周りの温かい人たちに支えられて生きていく姿は、心温まります。
重力ピエロ(伊坂幸太郎)
兄は泉水、二つ下の弟は春、優しい父、美しい母。家族には、過去に辛い出来事があった。その記憶を抱えて兄弟が大人になった頃、事件は始まる。連続放火と、火事を予見するような謎のグラフィティアートの出現。そしてそのグラフィティアートと遺伝子のルールの奇妙なリンク。謎解きに乗り出した兄が遂に直面する圧倒的な真実とは。溢れくる未知の感動、小説の奇跡が今ここに。
30代女性 後半の伏線回収が秀逸な作品だと思います。さすが伊坂幸太郎といった感じです。登場人物一人一人が魅力的で好きなキャラクターを見つけられるかと思います。主人公はもちろんですが、私はお父さんの愛情深く、たくましいところが好きです。
重いテーマを扱っていますが、「家族愛」が心に残ります。親子とは、兄弟とは、家族とはを考えさせられました。何度も読み返したくなる、好きなセリフが頭から離れない作品です。
私は「本当に深刻なことは、陽気に伝えるべきなんだよ」というセリフがとても印象的で、今でもふと思い出すことがあります。実写化もされていますが、ぜひ小説を読んでから映像を見てほしいです。読み終わった後に、自分の周りにいる人とのつながりを大切にしたいと思える作品です。
優しい死神の飼い方(知念実希人)
犬の姿を借り、地上のホスピスに左遷…もとい派遣された死神のレオ。戦時中の悲恋。洋館で起きた殺人事件。色彩を失った画家。死に直面する人間を未練から救うため、患者たちの過去の謎を解き明かしていくレオ。しかし、彼の行動は、現在のホスピスに思わぬ危機を引き起こしていた―。天然キャラの死神の奮闘と人間との交流に、心温まるハートフルミステリー。
20代男性 死者の魂を導く高度な霊的存在、「死神」が、同じ死神の上司の思い付きにより、地上にゴールデンレトリバーの姿で送り込まれます。送られた先は死期が近いものが集まるホスピスで、そこで未練を抱えたまま死期を迎える地縛霊予備軍(未練を抱えたまま死を迎えると地縛霊となってしまい、最悪魂が消滅してしまう)の患者たちが残りわずかな日々を送っていますが、死神改め ゴールデンレトリバーのレオは、この患者たちの未練を解決するべく、死神の霊的能力を駆使し、患者の記憶に隠された謎を解いていきます。そして、謎を解くうちに、この病院に隠された大きな事件に巻き込まれていくことになります。
患者たちの過去、病院に隠された謎、患者たちや病院のスタッフたちと触れ合うことで生じるレオの抱く感情の変化、これらすべてが緻密に計算され重なり合っている、ハートフルミステリーですが、一般的に命を奪う恐ろしい存在の死神が、未練がましい人間に「生きる」ということを教える、というより取り戻させるストーリーがすばらしいです。
そして、生きることを取り戻した患者たちの変化、レオの天然ぶりと食い意地、レオが初めて感じる感情に見せる戸惑いなど、細かい登場人物の感情描写も魅力的です。最後の最後まで見逃せない伏線の数々。この本は表紙に惹かれて買ったのですが、生きること、死ぬことについて改めて考えさせられる良書でした。
黒い家(貴志祐介)
若槻慎二は、生命保険会社の京都支社で保険金の支払い査定に忙殺されていた。ある日、顧客の家に呼び出され、期せずして子供の首吊り死体の第一発見者になってしまう。ほどなく死亡保険金が請求されるが、顧客の不審な態度から他殺を確信していた若槻は、独自調査に乗り出す。信じられない悪夢が待ち受けていることも知らずに…。恐怖の連続、桁外れのサスペンス。読者を未だ曾てない戦慄の境地へと導く衝撃のノンストップ長編。第4回日本ホラー小説大賞受賞作。
40代女性 保険会社に勤める主人公・若槻慎二が、顧客の菰田重徳から電話で「家に来てくれ。」と呼び出されるところから話は始まります。菰田の家を訪れると、家の中には菰田の子供の首吊り死体があり、あまりの事に驚愕する若槻を前に菰田は悲しむどころか、若槻の様子をじっと見つめています。
実は菰田は自傷行為により保険金を請求する客として、保険会社にマークされていました。今回の子供の自殺についても、保険金を請求する為にやった事ではないのか?と想像する若槻。
次々と起こる菰田夫妻の保険金請求は、紛れもなく事故なのか?若槻が真相を探るうちに、今度は自分の身が危うくなり追い詰められていくというサスペンスです。ストーリーが進むにつれて、どんどん引き込まれていく小説です。
砂漠(伊坂幸太郎)
仙台市の大学に進学した春、なにごとにもさめた青年の北村は四人の学生と知り合った。少し軽薄な鳥井、不思議な力が使える南、とびきり美人の東堂、極端に熱くまっすぐな西嶋。麻雀に勤(いそ)しみ合コンに励み、犯罪者だって追いかける。一瞬で過ぎる日常は、光と痛みと、小さな奇跡で出来ていた。明日の自分が愛おしくなる、一生モノの物語。
30代女性 本気になれば、砂漠に雪を降らせることだってできるんですからね!大学で出会った何事にも熱く周囲から浮きまくる男、超能力が使える穏やかな女子大生、鳥頭のお調子者の男子、美人でクールな女の子、そしてそんな濃いキャラクターに比べたらごく平凡な主人公。
そんな彼らが表んなことをきっかけに出会い、気がついたら絆を深めていく、一気に読んでしまうほどの面白い作品です。舞台は伊坂幸太郎作品ではお馴染みの、仙台。初々しい大学1年生から始まり、個性的なキャラクターによって進んでいきます。
とある大学生のどこにでもある青春のお話…と思いきや、さすがは伊坂幸太郎さん作品。ただの青春ものにとどまることなく、恋愛や友情に加え、さまざまな観点から楽しめる作品です。後半になるにつれ回収されていく伏線は毎度のことながら圧巻です。
超能力が使えるという非現実的な設定にもかかわらず、ひょっとしたら世の中には、説明のつかないことが起こり得るかもしれない!などと思わされる不思議な余韻が残ります。
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記憶屋(織守きょうや)
もしも「記憶屋」が、つらくて忘れたい記憶を消してくれるなら、あなたはどうする?夕暮れ時、公園の緑色のベンチに座っていると現われ、忘れたい記憶を消してくれるという怪人「記憶屋」大学生の遼一は、そんなものはただの都市伝説だと思っていた。だが互いにほのかな想いを寄せ、一緒に夜道恐怖症を乗り越えようとしていた先輩・杏子が「記憶屋」を探しに行き、トラウマと共に遼一のことも忘れ去ってしまう。まさかと思う遼一だが、他にも周囲で不自然に記憶を無くした人物を知り、真相を探り始める。遼一は、“大切なものを守るために記憶を消したい”と願う人々に出逢うのだが…。「記憶」を消せることは、果たして救いなのだろうか?そして、都市伝説の怪人「記憶屋」の正体とは?衝撃的で切ない結末に、きっと涙こぼれる。二度読み必至の青春ノスタルジックホラー!★第22回日本ホラー小説大賞 読者賞受賞作★
20代女性 本書は私が読んだ後に映画にもなった小説で、青春の要素もあり、ホラーやミステリーな感じもあり、とても面白い小説でした。普段私自身全く小説を読まない人なのに、漫画を買いに行ったときになぜか表紙とあらすじを読んでみてとても興味がわいて購入し、読み始めたら止まりませんでした。
最初に主人公の大切な人の記憶がなくなってしまいます。なぜ消えてしまったのか?主人公がそれを探り出していくうちに 主人公の身近な人物の記憶が次々と消えて行ってしまいます。
原因を探りに探っていくとだんだん都市伝説の怪物の記憶屋というものにたどり着き…。終始切ない感じの流れですが、都市伝説の怪物が実現するファンタジー要素も含まれているので ミステリーもファンタジーも好きな方にお勧めしたい作品です。
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硝子の塔の殺人(知念実希人)
雪深き森で、燦然と輝く、硝子の塔。地上11階、地下1階、唯一無二の美しく巨大な尖塔だ。ミステリを愛する大富豪の呼びかけで、刑事、霊能力者、小説家、料理人など、一癖も二癖もあるゲストたちが招かれた。この館で次々と惨劇が起こる。館の主人が毒殺され、ダイニングでは火事が起き血塗れの遺体が。さらに、血文字で記された十三年前の事件…。謎を追うのは名探偵・碧月夜と医師・一条遊馬。散りばめられた伏線、読者への挑戦状、圧倒的リーダビリティ、そして、驚愕のラスト。著者初の本格ミステリ長編、大本命!
40代女性 外部からの出入りが不可能な建物で殺人事件が起きる、いわゆるクローズド・サークルものの推理小説です。舞台となる独創的な構造の建物、一癖もふた癖もありそうな登場人物たち、その土地での過去の事件など「いかにも何か起きそう」な匂いに満ちており、ワクワクしながら読み進めました。探偵役と主人公の補佐役とのやり取りも軽妙で、ついつい引き込まれてしまいます。
幾重にも伏線が張り巡らされており、ラストでそれらがすべて回収される様は爽快で癖になりそうです。また、この小説はミステリの歴史を振りかえるものとしても楽しめます。
ディクスン・カーやアガサ・クリスティなど海外の巨匠から日本のいわゆる新本格派、さらには2020年以降の新世代にいたるまで、作品の解説や魅力が随所にちりばめられており、ミステリが好きな方は「そうそう!」と膝をうちたくなると思います。知らない作品は読みたくなるし、知っている作品はまた読み返したくなります。
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みんな邪魔(真梨幸子)
夫も子どもも…みんな邪魔!!殺人鬼より怖い平凡な女たちの暴走ミステリ。池袋のフレンチレストランに集まったのは、往年の少女漫画『青い瞳のジャンヌ』をこよなく愛する”青い六人会”。噂話と妄想を楽しむ中年女性たちの会だったはずが、あるメンバーの失踪を機に正体を露にし始める。飛び交う嘘、姑息な罠、そして起こった惨殺事件——。辛い現実から目を背け、ヒロインを夢見る彼女たち。その熱狂が加速する時、また新たな犠牲者が…。
ワイドショーを見て、他人の不幸を笑ってるように読み始めたのに、途中から「あぁ……私のことだ」と笑えなくなる、ミステリーよりホラーより恐ろしい本。『殺人鬼フジコの衝動』の著者、最高傑作にして、怪作!読んだらきっと騙されます。何に騙されるかは…読んでからのお楽しみ。
50代女性 本書は最初は「更年期少女」というタイトルでしたが、文庫本になるタイミングで「みんな邪魔」に改題されました。ご存じの方も多いと思いますが、著者はイヤミスの女王の名で有名な方で、この作品でも読後は嫌な気持ちになること間違いなしです。
物語は人気少女漫画の「青い瞳のジャンヌ」の熱烈なファン6名で構成される「青い六人会」のランチから始まります。全員なんとなく声を出して呼ぶには、気恥ずかしいカタカナの名前がついているのですが、普通にその名前で呼び合っているところから もう不穏な感じがしています。
この6名のメンバーが最終的には大暴走するお話で、緊張が続いて疲れますが、私は途中で止めることができず 一気に読んでしまいました。細切れで読むと登場人物が多くてややこしくもなるので、一気に読むことをお勧めしますが、最後まで読むと、もう一度読みたくなること必至です。
イヤミスが嫌いでないならば、ぜひこの本を読むための時間を作ってほしいです。