認知症保険は必要か?親が損害を負わせたら損害賠償はどうなる?
認知症保険とは、被保険者が認知症になった時に保険がおりるものが一般的ですが、認知症患者が第三者に損害を与えたとき損害賠償をできるものもあります。
MCI(軽度認知障害)の段階を保証するもの
認知症の診断が下り、その状態が継続したときのもの
認知症患者が第三者に損害を負わせた時の賠償責任保険
少額短期保険(ミニ保険)…保険料が安く、契約期間が1年単位(更新可) ※ただし保証額もミニです。

認知症保険への自治体のサービスもあり
地域のSOSネットワークに登録すると、保険料を負担してくれる自治体もあります。
例えば神奈川県大和市では「はいかい高齢者個人賠償責任保険」があります。
SOSネットワークに登録すれば個人で保険料を負担することなく(自治体が負担する) 損害賠償に関するサービスを受けられるというものです。
大和市に限らず、同じようなサービスを展開している自治体が増えているので、認知症患者が住む自治体でも同様のサービスを提供しているかどうかを確認しておくといいでしょう。
特約があるかも!まずは自分が加入している保険の内容を調べてみる
親が認知症で子が認知症の損害賠償保険を検討している場合、いきなり認知症保険に加入せず、まずは自身が加入している保険の内容を見直してみてください。
加入している自動車保険、火災保険、共済に特約として「個人賠償責任保険」がついているかどうかを確かめます。
このような特約が付いている場合でも、それが別居している家族にも適用されるかどうかも、同時に確認する必要があります。保障内容だけでなく、対象範囲までしっかり確かめましょう。

保険
認知症による損害賠償の相場は?誰が支払う?
認知症の親による近隣への損傷や暴力、火の不始末なども心配の種ではないでしょうか。
親が離れて暮らす場合には、特に損害賠償をカバーしておくと安心です。
なぜなら、親の起こした事故の監督責任が子に対して問われるケースがあるからです。
徘徊中に列車に轢かれて720万円の損害賠償請求
2007年には徘徊中に列車に轢かれた認知症男性の家族に 鉄道会社が720万円もの損害賠償を請求する事案がありました。
一審では鉄道会社の言い分を認めて720万円の支払い、控訴審では別居の長男の監督責任分を免じて360万円の支払い、上告では患者家族の賠償責任を認めず、鉄道会社側の逆転敗訴(2016年)
最高裁まで行っての鉄道会社の逆転敗訴は「認知症患者をかかえる家族には一切賠償責任が生じない」と断じるものではなかったようです。
亡くなった男性の妻も高齢で要介護認定の状態で老々介護。それに加えて離れて暮らす長男は父親と接触する機会が少なかった。
これらの要因が考慮されて両者に監督責任が問われなかった…ということでした。
つまり家族に認知症患者を介護・監督する能力があれば賠償責任が認められて、家族が損害賠償を払わなければいけないだろう…ということです。
家族の監督責任が問われれば、当然損害賠償も発生します。被害者側から見ればこれは至極当然のことです。
認知症の人による損害賠償費用の実相場
実相場 | 実相場より低い費用を回答した人の割合 | |
お店でトラブルになって 店舗の商品を壊してしまった | 8万円 | 64.4% |
駐車している車をたたいて 傷をつけてしまった | 20万円前後 | 41.6% |
隣の植え込みを 勝手に切ってしまった | 40万円前後 | 93.7% |
施設で隣の利用者を押し倒し 骨折させてしまった | 150万円前後 | 75.5% |
水を出しっぱなしにして 下の階に漏水してしまった | 200万円前後 | 69.7% |
「水を出しっぱなし」はあるあるな話です。
物を壊したくらいならまだしも、人に危害を加えたりすることを考えると ぞっとしますね。
いくら原因が認知症だとしても こういう事案は介護保険でどうにかしてくれるものでもありません。
こういったリスクが高い認知症患者が家族にいる場合は、自衛手段のひとつとして認知症保険を検討してみるのもアリです。
認知症の夫が火災!留守にした妻に責任は!?
認知症の夫を家に残して妻が用事で出かけた時、火事が起きた。隣の家に燃え移り、裁判で賠償を求められた妻。判決は夫婦の助け合いを義務付けた民法の規定を当てはめ、妻に賠償を命じた。介護に明け暮れ、わずかに目を離したすきの惨事。その責任のすべてを妻は負わなければならないのか。認知症500万人時代、社会が支え合う仕組みを求める声があがる。
大阪地裁判決(谷口安史裁判官、5月12日付)によると、火災は2013年4月2日夕、認知症を患う当時82歳の夫と、妻(73)が暮らす大阪府内の住宅で起きた。妻が郵便局に出かけて留守中、3階の洋室付近から出火して29平方メートルが焼け、隣家の屋根と壁の一部に延焼した。夫が紙くずにライターで火をつけ、布団に投げたとみられると現場の状況から認定した。
夫は11年8月に認知症と診断され通院。警察は刑事責任能力がないと判断し、大阪府が措置入院とした。2カ月後に退院したが昨年11月、84歳で亡くなった。
夫婦は延焼の損害を補償する火災保険には入っておらず、隣家の住人は昨年4月、夫への監督義務を怠ったとして妻に200万円の賠償を求めて提訴。妻は「夫は他人に危害を加えたことがなく、当日も落ち着いていた」と反論した。
判決は、火災の前月ごろから夫は認知症が進み、姉に「妻が死んだ」と電話するなど妄想による言動があったと指摘。民法752条の「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない」という規定を踏まえ、妻には夫が異常な行動をしないか注意深く見守る義務があったとし、夫を残して外出したことは「重い過失」と判断した。そのうえで、隣家の修理費143万円のうち弁償済みの100万円を差し引き、残り43万円の支払いを妻に命じた。妻は納得できず控訴し、審理は9月1日から大阪高裁で始まる。
引用元:朝日新聞デジタル 2015.8.23

保険