公正証書遺言を作った体験談!家族の安泰な未来を創るための私の決断
私は64歳の男性です。妻は55歳ですが、子どもいません。
妻には妹がおり、今年54歳になります。
妻の妹はどういうわけか結婚運がなく、最初の縁談は何故か破談になりました。2度目の縁談で結婚したのですが、結婚してから数年後に旦那様がうつ病を発症してしまい 仕事にいけなくなってしまいました。
当時は義妹が働いて家計を支えていたのですが旦那様の復帰のめどは一向に立たず、ついに故郷の佐賀県に戻ることに。
しばらく2人は別居状態でしたが、旦那様が「障碍者年金を申請したいので離婚してくれ」と言ってきたのを機に離婚。それ以来 義妹は独身で、本人によると「もう結婚はこりごり」とのこと。
また私には4歳上の兄がおり医師をしているのですが、何故か金銭トラブルに巻き込まれることが多く、常に借金を抱えているという状態です。兄には妻と二人の子供がいますが、もう二人とも成人しています。
早めの終活で残された家族の生活を確保するために
私と妻は9歳差と年が少し離れています。
一般的に女性の方が長生きするので、私の死後についてもめ事が起こらないように早めに終活を始めた方がよいと考え、思い切って遺言を作ることにしました。
特に我が家は旧借地借間法による借り手に非常に有利な条件の借地であるという事情がありました。
その借地権を確実に妻に相続させたいので 公正証書遺言を作成することにしたのです。
義妹は妻とは仲が良く独身で子供もいない一人暮らしですので、私は家を建て替える際に義妹のための部屋も用意したのです。
それは私が死んでも妻と義妹の二人で生活できる準備のひとつでした。
また我が家の借地は88坪という広さなので 空いた土地を賃貸駐車場にして毎月一定の収入が入るようにもしました。これはもちろん、地主さんの了解を得ています。
こうしておけば年金以外にも結構十分な収入が得られるからです。
子どものいない夫婦の相続の悩み
こうして彼女たちの老後の環境を整えたのですが、心配だったのは借地権の問題です。
私には兄がおり、私が死ねば兄、或いは兄の子供達にも相続権が生じます。
妻の相続権の方が強いのは当然ですが、もし飛行機事故などで私と妻が同時に死んだらどうなるのか?
その場合、義妹の相続権と兄の家族の相続権が拮抗し、争いになる可能性を感じました。
そこで借地権が確実に妻→義妹と相続できるように公正証書遺言を作ったのです。

私が死んだ場合は妻が全てを相続する。もしその時点で妻も死んでいたら全ては義妹が相続する。
こうしておけば確実に義妹の老後の生活は保障されると考えたからです。
それは妻と義妹の両親を安心させるためでもありました。
義父は一昨年に亡くなりましたが、その際に私に「色々ありがとう。もう二人の心配はしていないから」と言ってくれました。
まだ義妹は仕事をしていますので 今はアパートを借りていますが「仕事を退職したら、そっちへ移るから」と言っています。
その状態を 私、妻、義妹の3人全員が死ぬまでしっかりと守ることが出来るようにしたかったのです。
未来に対して全てのケースを想定して準備しておくことは不可能
義妹が「もしおねぇちゃんが先に死んじゃったらどうするの?」と聞いてきたことがありましたが、それに対しては「その時点で考えて、最善の方法を取れば良いよ」と答えておきました。
必ずしも年齢順に死ぬとは限りませんのでその可能性も確かにありますが、未来がどうなるかは誰にも分かりません。
その分からない未来に対し「全てのケースを想定して準備しておくこと」など不可能なので、そう答えたところ納得してくれました。
公正証書遺言は「公文書扱いの最強の遺言」だということなので、何はともあれこれで一安心しました。
特に心配していた兄と兄の家族にもこのことを伝えたところ 簡単に了解してくれました。
まあ、それはそうでしょうね、まだ事態が発生していないのですから。
実際に事態が発生してしまってからでは 金銭がらみの問題となると、やはり人間は欲が出てしまうでしょう。ですが現段階ではそれを防止できたことは何よりだと思います。
兄は頭は良いのですが人間が甘いところがあるらしく、なぜか金銭トラブルに見舞われることが多いのです。
奥さんも金銭面では非常に苦労しているようなので、その影響がこちらに及んでしまうのを避けたかったのです。
公正証書遺言の立会人に面識のない第三者を手配してもらった
公証役場に行ったときに遺言を作りたい旨を言うと、すぐに公証人の方が内容を聞いてくれ、用意するものとスケジュールを作成してくれましたから、非常に事がスムースに進みました。
遺言の内容を証拠書類(銀行通帳や契約書類)で確認しながら作成してくれたので 安心して任せることが出来ました。
そして文言が完成して私が捺印すれば終了という時点で公証人の方が手配してくれた2人の立会人の方も来てくれ、公証人の方が内容を読み上げ、私が了解し捺印しました。
そして、立会人(全くの第三者で、それまで面識もなかったお二人です)も署名、捺印してくれ、公正証書遺言は完成しました。
ちなみに事前に公証人の方から言われていたので 公正証書遺言の立会人のお二人には5000円のお礼が入った封筒を用意しておき、差し上げました。
最強の公文書「公正証書」で家族みんなの安泰な未来を創る
公正証書登録した書類は公証役場で保管され、こちらには写しが渡されるとのことで コピーをもらいました。
公証人の方によると「この写しを持っていけば金融機関でも裁判でも簡単に通る」そうです。
公正証書は公文書扱いであり効力としては最も強いものなのだということです。

そして万一に備え、義妹にその写しの保管場所も教えておきました。
「そこまでしてくれなくてもいいのに」と言われましたが、これで3人の老後の生活には一定のめどがついたと安堵できたのです。
妻と義妹の母はまだ健在で リモートワークしている義妹といっしょに北海道で暮らしています。
義母はもう80歳、残された時間は多くはないでしょうが、残された人達が安泰に生活できるようにしておいたので、義母も安心しているようです。
実は義妹も義母には本音を漏らしていたようで「ものすごく感謝してる」とのこと。それを義母から聞いた時、やっぱりきちんとしておいて良かったな…と思いました。
それなりに費用も時間もかかる公正証書遺言ですが、だからこそ早めに用意しておくことが肝心なのだと思います。
私が55歳の時に建てた今の家はまだ30年は持つでしょうが、その頃にはもう私はこの世にいないかもしれません。
しかし女性は80歳以上生きることが多いので 妻と義妹は生きているでしょうし、その二人の生活を確実に支えることが公正証書遺言によってでき、これで私も、いつでも安心して死ねるというものです。
ちなみに私は無神論者で死後は墓に入れるのではなく散骨を希望しているのですが、さすがにそこまでは公正証書遺言には書けませんでしたので、エンディングノートにこの希望を文書化して残しておくことにしました。
【参考】生前に相続放棄を約束した念書は有効か!?
弟に相続放棄の念書を書かせました。しかし父の葬儀後に弟は「自分にも相続の権利がある!」と主張。弟に財産を分けなければいけないのでしょうか?
念書の存在を理由として遺産分割の請求を拒むことはできません。 というのも、生前に相続放棄を行うことはできないからです。相続の放棄は相続が発生していることが前提とされているため、相続が発生していない段階でこれを放棄することはそもそもできない、ということになります。
遺言書があっても遺留分(法律で保障されている相続分)については弟さんにも分配しなければならない、というのが原則です。 ところが、遺留分については、家庭裁判所の事前の許可を得た場合であれば、これを事前に放棄することも可能、とされています。
本件の場合、問題になるのは、その念書の内容が遺留分の放棄と読み取れるかどうか、という点に集約されます。この場合、形式的判断のみならず、実質的な判断が必要になる可能性がありますし、実質的な判断はやはり、専門家に依頼すべき、ということになります。
引用元:相続弁護士ALG