公正証書遺言があっても遺留分請求で相続が泥沼化したトラブル体験談
祖父の終活と遺産相続をめぐる母と伯父の争いの話です。
祖父は当時70代、会社創業者です。
伯父は50代で法学部出身、会社の後継ぎですが実家に帰らず、東京で妻(50代)と娘(10代)と暮らしています。
母は伯父の3つ年下でシングルマザー、実家で家業と家事を手伝いながら祖父母の看病をしていました。
私は幼少期より母の実家で暮らしています。現在30代の女性です。
祖父の生前から15年にわたり、財産相続問題がおこりました。
我が家は小さいながら事業をやっており、地元では少し名の知れた家でした。
祖父母は50代で会社を伯父にゆずり、悠々自適の隠居生活をしていたのですが、その伯父が悪徳業者に騙されて莫大な借金をつくって、知らない間に実家の家屋敷を担保に入れてお金を借りていたそうで、事が発覚したときにはもう負債が億近くなっていました。
その頃は母と私も実家に住んでいました。
将来的には家屋敷を私たちに残そうとしていた祖父母は、迷惑がかかっては…と私たちには秘密で伯父の借金を清算したそうです。
それに味をしめたのか、伯父は度々お金の無心をするようになり、祖母はあちらに孫もいることだからと、何度かお金を渡していたといいます。
その心労からか、祖母がガンになって半年もたたないうちに他界してしまいました。
遺品を整理していたときに、祖母がつけていた日記帳を母がたまたま開いたところ、上記の経緯が発覚。
特に祖母がお金を渡していたことは祖父も知らなかったようで、烈火のごとく怒っていました。
なので祖父は、自分の死後は伯父に一切財産をやらん…と言って、病気が分かってからは何度も伯父に電話をかけて相続放棄するよう言っていました。
それでも、遠方ということもあり、電話では適当にはぐらかされてしまったようです。
そこで祖父は遺言を公正証書で残すと言って、病気でなかなか動けない中、母と役所に何度も行って、「母に財産を譲る、墓守もしてもらう」「伯父には生前十分すぎるほど支援をしてきたから遺産は渡さない」という公正証書遺言を残しました。
その後、私が第一志望の大学に入ったのを見届けて、祖父は亡くなりました。
祖父の闘病中に伯父は一度も見舞いに来ず、葬式にちょっと顔を出しただけで、母が手続きを全てやりました。
祖父が公正証書を残してくれたおかげで、銀行口座の引継ぎもスムーズに行われたものの、しばらくしてから伯父から母へ遺産の「遺留分侵害請求」の内容証明が届きました。
遺留分とは法律で保障されている相続分で、公正証書の遺言でもこの権利を無視することはできないようです。
おそらく伯父は祖父の遺産が入るのをあてにしていたのですが(どうも祖父の口座がある金融機関に問い合わせした模様)、それが公正証書の遺言でダメになったと聞いて、別の手段を考えたようです。
本人も法学部出身で知識もありますし、どうやら弁護士をやとっているようでした。
母としては今まで伯父が迷惑かけてきた状況とか、祖父母が病気になっても一切見舞いに来なかった状況などから、応じる理由はないと言っていました。
この請求は結局 調停で終わりました。
母は顧問弁護士と相談をし、「すでに遺留分相当額以上のお金を払っているから訴えは認められない」というような主張をしていたようです。
その証拠集めとして、祖母の日記をコピーしたり、祖父母が伯父の借金を払ったときの書類を持って行くなど、祖父母の机やたんすをひっくり返して 色々なメモやら領収書やらを探していました。
先方とも何度かやりとりをしていましたが、母がストレスで体調を崩してしまったことや 顧問弁護士の説得もあって、結局伯父に50万をはらうことで和解しました。
当時私は他県の大学にいたので全部を見知っているわけではないのですが、会うたびに母が青白くなっていたので、私も「もうやめなよ」と説得していました。
やっと終わってくれて一安心でしたが、祖母の死後から数えると15年以上かかってやっと落ち着いたかんじです。
この時の弁護士費用が何だかんだで200万くらいかかったと記憶しています。
終活が中途半端だと後々禍根を残すということは、今回はっきり思い知りました。
特にお金に関することは、生前にほんとうにシッカリ決めておいてほしいなと、横で見ていて切実に感じました。
たかがハンコひとつ・紙切れ一枚ですが、あるのとないのとでは大違いです。
遺留分とは?
相続について調べていると必ず登場するのが「遺留分」という言葉です。
遺留分とは 法定相続人の生活保障のために遺産の半分は必ず取得できる権利で、権利ですから放棄することも可能です。
この権利は法定相続人でも配偶者・子・親だけに認められており 兄弟にはありません
遺留分侵害額請求権とは?
遺言の財産分けで自分の相続分がこの遺留分の額に満たなければ、家庭裁判所に「 遺留分侵害額請求」 を申し出て 遺産を確保することができます。
遺留分には時効があり、相続を知ってから1年を経過したら権利はなくなります。
遺留分を時効にさせないためには 相手方に内容証明で遺留分の請求をする旨を通告しておくことです。
あなたが遺産を分配するのであれば、遺留分を考慮することを忘れずに。
まず各想定法則人の遺留分を計算し、そして誰に何を分けるのかを考え 遺留分との額の差を見ます。
あまりにも額の開きが大きいのなら修正するか その理由を付言事項で説明し 相手に納得してもらうようにします。
遺留分の割合は?計算で気を付けることは?
遺産配分割合でまず考えることは 一次相続にあたっては 配偶者の生活の確保です。
一次相続、二次相続とは何かというと、親の一人がなくなれば一次相続、二親目が亡くなれば二次相続となります。
一次相続ではやはり残った配偶者の生活を確保する必要があります。
さらにそれと同じくらい重要なのは家業の継続で、家業や事業が成り立たないような財産の配分はありません。
後継者がなく家業をやめるなら別ですが、家業の承継は配偶者の生活にも関係してくる重要な問題です。
また、家や祭祀を継ぐ人への配慮も必要で、誰が田舎のお墓や家の仏壇をお世話するのかという問題もおろそかにはできません。
このあたりも家族と話し合いをしながら決めていくことになります。
一般的には 個々の財産の行き先を考慮して、家を継ぐ人には自宅を、会社を継ぐ人には株式を、個人事業を継ぐ人にはその店を、農業後継者には農地を…というように 各事業が成り立つように遺産を分割することになります。