不安障害とは?
「不安」という感情は本来、人間の防衛本能による正常な反応なのですが、不安がふさわしくない状況で起こったり、日常生活に支障をきたすほど強く感じられたりする場合には、不安障害に当てはまると考えられます。
不安障害は、不安を主な症状とした疾患を総じて呼ぶための名称で、社交不安障害(SAD)や全般性不安障害、パニック障害、強迫性障害も不安障害に分類されます。
全般性不安障害
全般性不安障害とは、不安障害の中でも様々なものに過剰な不安を生じるために、自身の気持ちのコントロールができず苦痛を伴うものです。
不安の対象となるものは対人だけではなく、自分と直接関係のない他の物や、代表的なところでは空想あるいは遠方の災害や戦争に対する不安によって、心身に支障をきたします。
1つの不安要素が去ってもまた別の不安を感じたり、つらい気持ちが別の不安を思い起こしたりと程度によってかなり深刻になり得るものです。
人が不安を感じるのは、自分の身にこれから起こるかもしれない危険を察知しているためです。
自分の身に起こる危険と不安の対象となるものの関係性をしっかりと認識することによって、全般性不安障害の改善が見られる場合があります。
あるいは、本人が常に抱えているような心理的葛藤によって、多くの事柄に対して不安を抱いているように見えているという場合もありますので、カウンセラーと一緒に、丁寧に自身の心理状態や環境を整理する必要があります。
不安が強すぎる場合には、抗不安薬の服用によって症状が改善される場合もありますが、精神安定剤ならではの強い副作用や依存性のリスクも考えなければなりません。
社交不安障害
社会不安障害(SAD)は人前での緊張や不安・恐怖感が大きく、身体的な症状に現れたりして、日常生活に支障をきたすことを指します。
「あがり症」と言われているものに対して恐怖を感じる度合いも大きく、期間も長期的に続くものです。
また、そうした不安に駆られている自分が周囲に不信感を持たれるのではないかという恐怖を感じることも、社交不安障害の症状に挙げられています。
話をするときだけではなく、誰かに見られて作業したり、誰かと一緒に行動することに対しても大きな不安を覚えるケースがほとんどです。
抗不安薬の服用によって症状が改善される場合もありますが、精神安定剤ならではの強い副作用や依存性を考慮する必要があるため、「自分は社交不安障害かもしれない」と思っている全ての人が抗不安剤を処方されるわけではありません。
そのため社交不安障害は、カウンセリングによって、不安の原因となる考え方やものごとの捉え方に新たな視点・気付きを与える「認知行動療法」のアプローチで治療が行われることがあります。
【参考】あがり症
あがり症は社交不安障害と比べると 恐怖を感じる度合いも小さく期間も短期的な状態をさします。
人前で話そうとすると汗をかいたり震えが止まらなくなる。過度に緊張してうまく喋れなくなるなどの状態に悩む人は意外と多いです。
就活での面接、会社でのプレゼン、冠婚葬祭でのスピーチなど、人前で話さなければならない場面というのはけっこうあります。
人前で話す時に緊張するのは普通のことですが、極度に緊張してしまい 話すのが困難なほどになると、それはあがり症と判断されます。
生まれつき、あがり症という人はいません。
だいたいどこかで、人前で話す時に失敗して恥ずかしい思いをしたとか 上手く話せずバカにされたりからかわれたりした…などの経験があり、それが原因で「次も失敗してしまうかもしれない」とプレッシャーを感じ、あがり症になっていくことがほとんどです。
特に真面目で責任感の強い人は、次は失敗しちゃいけない!きちんとこなさなければならない!とプレッシャーを感じてしまい、それがあがり症へとつながっていくことになります。
それまでまったく平気だったのに、たった一回の苦い経験であがり症になるのも珍しくありません。
あがり症を治すには、とにかく場数を踏む!という人もいますが、場数を踏んだからといって より失敗経験が増えれば、あがり症はむしろ悪化してしまいます。
あがり症を治すには、緊張することを自分に許してあげることが大切です。
緊張するのは普通のことですし、緊張することと失敗することはイコールではありません。
そして今回は○○ができた!と小さな成功体験を積み重ねることで、あがり症は改善されやすくなります。
対人恐怖症
対人恐怖症とは通称であり、医学上は社交不安障害(SAD)に含まれると考えられていますが、区別されて使用されることもあります。
社交不安障害とは人前での緊張や不安がエスカレートし、日常生活に支障をきたすことを指しますが、恐怖を抱いている対象人物の属性がある程度はっきりとしている場合や、「恥ずかしい」という感情だけでなく「相手を不快にさせていないか」という不安が強い場合に、社交不安障害ではなく あえて対人恐怖症と呼ぶことがあります。
「相手を不快にさせていないか」という不安が強いために「自分は社交不安障害ではないか」と思うケースも見られますが、その不安の内容によっては強迫性障害を疑ったほうがいいこともあります。
対人恐怖症の改善には、カウンセリングによって、恐怖の原因となる考え方やものごとの捉え方に新たな視点・気付きを与える「認知行動療法」からのアプローチがとられることが多いです。
場合によっては、強迫性障害における「加害恐怖」の治療が必要と判断される場合もあります。
【参考】視線恐怖症
視線恐怖は、社交不安障害の症状の分類の一つで、他人からの視線が怖いと感じる他者視線恐怖と自分の視線が他人を不快にさせているのではないかと過剰に心配する自己視線恐怖があると考えられています。
視線恐怖症という診断名はなく、社交不安障害と診断されることが多いです。
視線恐怖によって外を歩くことができなくなったり、顔や視界を隠して生活したりする人もいます。
視線恐怖の克服には、自分の認知(考え方)や行動のパターンを把握したり見直したりする認知行動療法が多く用いられます。
視線に対する自分の捉え方と、実際の見られ方や客観的にどのように思うかといったことについて考えていきます。
また、視線恐怖は過去のネガティブな体験を背景としている場合があり、カウンセリングで自分の気持ちを整理することも有効です。
場面緘黙症(選択性緘黙)
場面緘黙症(選択性緘黙)は、話す能力はあるのに自分の意思とは関係なく特定の場面で話せなくなる不安症の一つです。
多くの場合は子どものときに発症し、家族とは話すことができるものの 小学校や保育園で周囲が気付いて場面緘黙症と発覚することが少なくありません。
しかし、場面緘黙症を抱えたまま大人になる人や、症状を理解してもらえずに性格の問題とされたりつらい思いをしてきたりしている人も多いです。
場面緘黙症になる原因ははっきりとは分かっておらず、様々な要因があって発症すると考えられていますが、不安になりやすい気質(遺伝要因)の影響がよく見られ、対人コミュニケーションの不安を抱えていることが多いです。
場面緘黙症の改善には、周囲の理解と支援が大切です。
すべての症状がすぐに改善するとはいえないので、話せなくなる状況について整理したり、ストレスや不利益をなるべく被らないように環境を見直したりして、それぞれに合わせたスムーズな治療が受けられるようにします。
治療には、おもに認知行動療法が用いられます。
認知行動療法の中には、不安を軽減する方法を習得(または服薬により不安を軽減)したうえで順番に不安な場面へ慣れていくことや、ものごとの捉え方を見直してストレスにうまく対処できるようにすることなどがあり、カウンセリングの枠組みの中で用いられることが多いです。
パニック障害

強迫性障害

不安障害カウンセリングのおすすめサービス
「不安障害」といっても、症状や治療法は様々で、原因はほとんど分かっていないことが多いです。
不安障害の治療は多岐にわたっていて、不安の原因があるならばそれを取り除く、あるいは認知行動療法や薬物療法がとられます。
不安障害を抱える人はうつ病に至るリスクも2倍程度高く、カウンセリングなどによるメンタルケアが推奨されています。