介護離職から介護うつになった人が福祉支援を得て再就職できた話
これは親の介護で仕事を失い(介護離職) うつ状態(介護うつ)になった人が元気になって再就職できた話です。
登場する人物
Aさん:40代、男性、元会社員
Bさん:70代、女性、Aさんの母親
Cさん:40代、男性、Aさんの友人
Dさん:40代、女性、社会福祉士
Eさん:40代、男性、精神保健福祉士
Fさん:40代、男性、キャリアコンサルタント
私:30代、男性、相談窓口担当(社会福祉士)
母親の介護のための休職期間が終われば離職するしかない
Aさん(40代男性)は元々会社員で経理業務を行っている人でした。Aさんが40歳のときに父親が亡くなり、独身だったこともあり 母親のBさん(70代)と二人で暮らしていました。
母親のBさんはAさんが42歳のときに脳梗塞で倒れ、一命は取りとめたものの、左半身に麻痺が残ってしまいました。当初は麻痺がありながらもリハビリを頑張り、杖を使って歩行することができていましたが、次第にBさんの体力はどんどん低下していき、やがて介護が必要な状態になりました。
Aさんはしばらくは介護休暇を活用して仕事をしながら母親の介護をしていましたが、Bさんの転倒や誤嚥などが相次いだことから 会社を休職することになりました。
当時のAさんは介護サービスを利用することを考えつかず、自分で献身的に母親の介護をしていましたが、Bさんには徐々に認知症とみられる症状が出てくるようになってきました。
その頃にはAさんは介護に疲れてきてうつ状態になってしまい、介護放棄寸前になってしまいました。
Aさんの友人であるCさん(40代男性)は、Aさんが会社を休んで親の介護をしているということを人づてに聞き、Aさんに電話をしました。

お母さんの介護してるって聞いたよ。大変だな。大丈夫か?

もう介護に疲れた。会社の休職期間ももうじき満了になってクビになるけど、後悔しても仕方ない。だけどお金もどんどんなくなってきた。これからどうすればいいかわからない。
こういったいきさつから、心配したCさんがAさんを連れて相談窓口にやってきました。
介護に疲れ 介護離職を後悔し 介護うつ状態に…
まず、母親であるBさんの介護に関することは Dさんと私の社会福祉士チームが担当しました。介護サービスの利用方法を情報提供したところ

すぐにでも利用したい。
…という旨が語られたため、すぐにAさんが住まう地域の地域包括支援センターに連絡調整を行いました。
そして後日、介護認定調査を受けて Bさんは「要介護4」と判定されました。
また、Aさんの精神面については精神保健福祉士のEさん(40代男性)が担当しました。うつ状態に関するスクリーニングを行ったところ、中等度程度のうつ状態の可能性があったため、心療内科か精神科を受診することを勧めました。
Aさんは当初は受診をためらった様子でしたが、Cさんが「僕が連れて行ってあげるから」と説得してくださり ようやく心療内科の受診に至りました。
受診の結果、完全なる「うつ病」とまではいかないものの うつ状態がみられるため、薬物療法とカウンセリングを行うことになりました。
介護離職の失業保険手続きからキャリアコンサルタントの力を借りて再就職
Bさんは日中はデイサービスを、朝または夕方にはホームヘルパーを利用することになりましたが、Bさんが介護サービスをスタートできたころにはAさんの休職期間が満了してしまい、Aさんは失職してしまいました。
Aさんは失職のショックと従前からのうつ状態もあって、失業保険などの手続きをなかなか自分ですることができませんでした。
しかしDさん(社会福祉士)の知人のキャリアコンサルタントであるFさん(40代男性)に相談に乗ってもらい、ハローワークへ行って失業保険や求職者登録などの手続きを行うことができました。
また、FさんはAさんの経歴はもとより 状況・環境を考えて、適職診断や再就職のアドバイスをしたり、求人の情報などを提供していきました。
やがてAさんは心療内科での治療の成果も出てきたことと、Bさんが介護サービスを利用したことで 心と体の負担が軽減されたことにより 少しずつ元気になっていきました。
そして初めて相談窓口に来た日から1年後、自宅から通いやすい商社で再び経理マンとして再就職することが決定しました。
社会福祉士や精神保健福祉士、キャリアコンサルタントなどといった専門職はもとより、友人というインフォーマルな存在の助力のおかげで解決に至った事例です。
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