実家の相続放棄!限界マンションや限界集落空き家は相続放棄すべき?
かつてやっとの思いで手に入れた夢のマイホームが相続や相続税の問題で空き家になってしまっているなんて…悲しいことですが、これが現代の実情です。
空き家問題は今や深刻な社会問題のひとつとなりました。所有者不明の土地も全部合わせると九州の面積以上の広さだとか。
これまでは相続遺産というと「奪い合い」だった争族が、これからは負動産の「押し付け合い」になる可能性も高いです。
2022年問題!大都市圏の時限爆弾がもうすぐ…
生産緑地法という法律が1991年に改正、翌1992年に施行されました。これにより主として大都市圏にある農地が「宅地化農地」(宅地化を推進する)と「生産緑地」(農地保全の目的)に分けられています。
生産緑地に指定されていれば「農地」なので固定資産税がとても安くなる+相続税の納税猶予というメリットかありますが、指定から30年間農業を営まなければならない縛りがあるというデメリットもあります。
農業を継ぐ者がいなくなれば「宅地化農地」となり、固定資産税は宅地並みに跳ね上がりますし、納税猶予もなくなりますので、どちらに転んでも厳しいです。
農地の固定資産税が数千円だったところが 宅地化農地になと数十万円の課税になることもあるということなので、都市部の農地周辺に建つアパートやマンションは、ほとんどが納税や相続税対策のためのものでしょう。
そして1992年以降に生産緑地に指定された土地の8割が、来年・2022年に指定から30年を迎えます。
…ということはその生産緑地が一気に不動産市場に出てくる可能性があるということ。一気に市場に出てくれば需要と供給のバランスが崩れ、住宅地の価格の暴落の可能性もゼロではありません。
買う側にとってはいいですが、ゆくゆくは実家を相続して売却しようと考えている人には、これは由々しき問題です。
大都市圏なら売りに出せばすぐに売れるだろう…と思いがちですが 実はそうでもありません。やはり時期や経済の状況によってそれは大きく変動します。
景気が上向いているときは買い手もたくさんいて高値がつくことがありますが、2022年問題に加えてこのコロナ禍です。不動産市場が右肩下がりになる可能性は高いかもしれません(先のことはわかりませんが)
仮に相続した不動産を売らずに保有するとしたら、その相続税を全額現金で納めなければなりません。それもかなり厳しい話です。
そうなると…(あくまでも仮説ですが) 不動産を相続する前に売ってしまった方が結果的には得になる…ということもあり得ます。
相続前の実家を「売ろうと思えば売れる」状況というのは 親が認知症ではなく健在であるということ。
不動産が値崩れする前に少しでも高値で売却し、高齢者専用賃貸住宅(医療体制のバックアップがあるところ)に親を住み替えさせるというのも一つの手です(もちろん親の同意が必要ですが)
限界マンション問題!社会問題化しつつある老朽マンションの空き家
これから大量に空き家が発生するだろうと言われているのが、多摩ニュータウンのような分譲団地タイプのマンションです。高度経済成長期に大量に登場したマンションの老朽化と建て替え問題も社会問題化しつつあります。
老朽マンションのほとんどは住人が高齢化し、引っ越しもままならず、建て替えもできず、そのまま老朽化だけが着実に進んでいます。
管理組合がきちんとしている所であれば定期的に大規模修繕工事を行っていますが、住人が超高齢化していて組合活動すら滞っているマンションも数多く実在していて、これらが通称「限界マンション」と呼ばれているのです。
こういうマンションでは所有者が亡くなっても相続人がいないとか、誰が相続人かわからないために管理費や修繕費積立金が徴収できないままになっているところもあります。
ひどいところではすでに空き家が多く発生し、廃墟のようになっている所もあるそうです。
実家が限界マンションかどうかは別として、もしも現時点で老朽化しているようでしたら 親が健在なうちに管理組合の状況や修繕積立金がどうなっているかを確認しておく方がいいです。
もしそのマンションを相続することになった場合、その後に行われる大規模修繕工事の費用を請求される可能性もゼロではありません。
「相続でもらえるものはもらっておこう♪」なんてのんびり構えているところに「各戸200万円拠出してください」などと言われたら?
そういった「寝耳に水」なことだってあり得ますが、その時に「相続しなきゃよかった」と後悔しても時すでに遅し。
実は戸建てよりも老朽マンションの相続の方が ヤバいケースが多々あります(ケースバイケースですが)
実家が限界集落の老朽戸建てや限界マンション!相続は?相続放棄する?
亡くなった親の財産から葬儀費用を支払った後に 手元に200万円の現金が残ったとします。それ以外の相続財産は「実家」…限界集落に建つ老朽戸建て、あるいは限界マンションだけ。
こういう状況で、あなたは遺産の相続をしますか?それともすべて相続放棄しますか?
限界マンションを相続した場合、マンションの大規模修繕費用が発生したり、費用の一時金を払えない世帯をどうするか?などの管理組合総会などに駆り出されることもあります。
限界集落の老朽戸建てを相続した場合、修繕をしないで空き家にしておくと 特定空き家に指定される可能性があります。
役所に目をつけられて

特定空き家に指定するかどうかの実態調査を行いますので、立ち会ってください。
…などと連絡を受け、決められた期日に限界集落まで往復しなければならなくなることもあります。たとえそれが飛行機で往復しなければいけないほど遠くてもです。もちろん交通費は自腹です。
万一特定空き家に指定されてしまったら解体業者を依頼しなければいけなくなります。そのときももちろん立ち会う必要があるでしょうし、解体費用も200万円以上かかることはざらです。
実家以外に残された遺産が現金200万円くらいでは、限界マンションでも限界集落の老朽戸建てでも、どちらであっても相続人の懐は赤字でしょう。これでは何のために相続したのかわかりません。
もし親が生きている間に「親が亡くなった後の実家をどうするか?」について家族会議ができるなら、とても良い方法があります。それは親が持っている預貯金について、葬儀費用に充てるお金を取り分けて、その残余の額(例えば200万円だとして)で一時払いの生命保険(一時払い終身保険)に入るのです。そしてその生命保険の受取人を相続人(複数いる場合はもめないような取り決めをしておきます)にしておきます。そして親が亡くなったら相続放棄をするのです。
相続放棄をしても受取人が相続人の生命保険は「法律上は相続財産ではなく、相続人固有の財産」とされ保険金を受け取れます(相続税法上は「みなし相続財産」として相続税計算の対象になりますが) そのうえで「要らない実家」の相続は免れることができるのです。
引用元:負動産時代の危ない実家相続
※上記引用情報の書籍 は2017年11月30日発行です。その後の相続税法などの改正でこの方法が適応できなくなる場合がありますので、ご利用前には必ず最新情報をご確認くださいますようお願いします。
負動産から解放されるには相続放棄!?
相続を放棄して相続人がいなくなった実家(戸建て)は「相続財産管理人」が選任されて処分されます。
相続財産管理人が選任されるまでは「相続人になる予定だった人」=元法定相続人…には老朽家屋の管理責任が発生します。
相続財産管理人が選任されるまでの間に空き家に危険性があれば修繕したり、場合によっては家屋に保険をかける必要もあります。
家庭裁判所で相続放棄の手続きをしただけでは、相続財産管理人はつきません。元法定相続人が「利害関係人」として家庭裁判所に「相続財産管理人選任の申し立て」を行わなければ、相続財産管理人は選任されないのです。
相続財産管理人がいないのは、つまりずっと元法定相続人に空き家の管理責任がついてまわるということです。
【限界集落の老朽戸建て】管理人報酬の予納が必要な場合も
限界集落の老朽戸建てなどはほぼ「売れない土地」です。買い手がつかないような負動産の場合、管理人に支払う報酬すら賄えないことが考えられます。
そういう場合は相続財産管理人選任申し立てを行う者がその分を「予納」する必要がありますが、この予納金がおおむね20~100万円ほど必要です。
予納金は地域や裁判所により異なりますが、全額没収されるのではなく 余りがあれば戻ってきます。しかし「予納」ですからあくまでこれは前払いです。
実家が特定空き家に指定されると50万円以下の過料が課されたり、固定資産税が6倍に跳ね上がります。

特定空き家に指定されるくらいなら、相続放棄をした方がまだまし(?)かも(…と私は個人的に思っています)
【限界マンション】相続財産管理人の選任申し立ては不要
限界マンションの場合は相続人全員が相続放棄をすれば、管理責任は管理組合(マンション区分所有者全員)に移ります。
老朽戸建てのように元法定相続人が相続財産管理人選任申し立てをする必要はありません。
親は簡単に「実家をよろしく」と言うが「無理難題」はやめてほしい話
うちの母親は「私が死んだあとはこの家に住んで残してほしい」なんて ある意味無責任なことを言ってきます。
私はとりあえず「はいはい」と返事はしていますが、正直言うとこういうの 子供の立場からしたら迷惑なんですよね。そんなの約束できない。私は一人っ子ではないし、争族になるかもしれないし(爆)
母が時々こんなことを言ってくるので 以前「じゃあ公証役場でちゃんと遺言書を作ってよ。手伝うからさ」と言ったことがあるんですが、そういうのは嫌だと断られました。
こちらから提案しても遺言書ひとつ作ってくれるわけでもなく。そういう肝になる部分はスルーして自分の希望だけ押し付けてくる。大金でも残してくれるならいいけど、そんなのもあるわけない。
だけど「自分たちの家を残してほしい」とか、親は勝手なことを押し付ける。正直、ウザすぎます。
タレントの松本明子さん、親の言いつけで高松の実家を25年も保存していたそうですね。晩年の親御さんは東京に呼んでいたので、空き家歴が四半世紀なのです。
2003年に死去した父からは「お前が目の黒いうちは実家をよろしく頼むな」と言われ、維持に努めていたという。東日本大震災後には、東京に住めなくなったことを想定し、600万円かけてリフォームもしたが、結局は売却を決断。家を気に入ったという老夫婦に、580万円で売却することになったという。
荷物処理のために香川の実家までの旅費、宿泊費などもかさみ、最後は東京―高松間を車で片道10時間で7往復。「私はできるだけ最後、自分の目で見たかったです。母親と親父はどんなものを残してたのかなと見たかったので、最終的に過酷な事態になりました。朝8時から夜11時まで断捨離やって7連泊。1日15時間やってました。
最終的には、荷物の処分のために総額200万円がかかり、家の維持費と合わせて1800万円にものぼった。「とにかくお金と体力を使って、大変なイベントでしたね。最後の片づけが終わって、新しく住むご夫婦にカギを渡すときはいろいろな思いがめぐって、本当に良かったのかなとか、親父を裏切ったことにならなかったかなとか」
引用元:スポニチ
1800万円の出費プラス労力がかかっていたのに 売れた実家は580万円。シビアな現実w
まあ、「愛着のある我が家を残したい」親の気持ちはわかるんですが、相続はそんな簡単なものではないし、ましてやタダじゃないですから。
親が子に 相続税を払っても余りある大金を現金で残してくれて、それで実家を維持していけるとかならまた話は別ですが、そんな話は庶民にはあるわけないので(笑)
相続はその人の住環境や立場によって様々な形があります。どうするかはその人次第ですが、ヤバそうな相続には手を出さずに、相続放棄するというのが現実的かな…と、個人的には思います。
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