高齢者一人暮らしの限界!家じまいと認知症の相続対策を考えた体験談

 

高齢者一人暮らしの限界!家じまいと認知症の相続対策を考えた体験談

家じまい

40代男性 これは母の精神的不調から高齢者の一人暮らしに限界を感じて家じまいに至ったエピソードです。

当時の私は47歳、母親は73歳、弟は44歳でした。

救急車を呼びすぎる…母の精神的不調はここから始まった!

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1年くらい前から関係が良好だった母親と弟の関係がおかしくなり始めました。弟が言うには

いつも週末にお母さんと一緒に食事に行っているんだけど、ちょっとしたことでの言い争いが多くなっているんだ。お母さんは昔に比べてだいぶ頑固になってきている感じがする。

よくある高齢者の戯言だと思い、私はその場は弟の話だけを聞くにとどめていました。

その後、母の携帯電話からしょっちゅう電話がかかってくるようになりました。電話の内容は

体調が悪いんだよ。なんとかしてほしい。

近くの診療所で様子を見てもらいなよ。

…と私は母に声をかけたものの、診療所に行くことが億劫なようで 自分一人では動きません。

私たち兄弟が仕事で都合がつかないとわかると、母は救急車を頻繁に呼ぶようになりました。

そして仕事中に救急隊員からの電話がひっきりなしにかかってきて、

お母さんを病院へ搬送すべきですか?

…と判断を求められるようになりました。

体調不良が精神的不良につながったわけではなかったが…

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母には体調不良も確かにあったのかもしれませんが、体調不良がひとつの引き金となって精神的不調につながってしまったのではないかと私は考えました。

体調不良により外に出る回数が少なくなる→筋力が弱る→自分の思ったように動けない→精神的に不安になる→知っている人に電話をかけまくる・・・といった悪循環です。

そのため、まずはじめに体調不良の原因と考えられたヘルペスを治療して、現疾患が改善されれば 精神的な不調の改善もできるだろう…と想定していたのですが、そんなことはありませんでした。

治療も治癒も関係なく 母の中で精神的疾患が進んでいくように感じた私は 母を精神病院に連れていき、受診後に短期入院(3か月予定)させました。

入院している間の母は落ち着きを取り戻し、

早く家に帰りたい。

…と言うので 3か月経過しないうちに退院することにして自宅に戻りましたが、母の精神的症状は完全には改善していませんでした。

もはや母は自分のことが自分でできなくなっていた

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これらの経緯を見ていた結果 私が最終的に結論付けたのは、母は精神的症状による不調により もはや自分のことが自分でできないということ。

この状態を打破するため 私は行政に相談に行き、精神病院へ再入院させ、要介護認定の準備を進めました。

そして介護保険で母は「要介護3」と認定されました。

ふたたび母を精神科病院に入院させれば しばらくは預かっていただけるのかと思っていたのですが、病院からは

最長でも3か月しか入院させることはできません。

そのため私は介護施設を毎週のようにまわって 母を受け入れてくれる施設探しに明け暮れることとなりました。

そんなある日 精神病院の近くの介護施設にたまたま2部屋空きができたので 私はすぐにその介護施設と契約し、退院後の母をそこに入所させました。

母が認知症になる前に実家の家じまいを決行することにした

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介護施設の入所で母からのひっきりなしの電話はなくなり、少し落ち着きを取り戻した…と思ったのもつかの間。今度は実家の空き家問題が浮上しました。

行政に相談してみると 市がサポートしている空き家対策の講習会を行っていると聞き、早速そのセミナーに参加しました。

そこでは 親に認知症の認定が下りると 家が売れづらくなったり売れなくなる…ということを知りました。

それで早めに母の承諾をもらい、家じまいに着手することを決め、不動産屋と協働して実家を売却することができました。

このこともすべてひっくるめて、私たちの母親の介護関連の案件は一応の決着がついたと思っています。

早めの家じまいが賢明!親が認知症になる前に手を打つべし

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昭和から平成時代初期(1990年代初頭)までは 相続は長男が主導権を握って実家を継ぎ、遺産分割についてもほかの兄弟姉妹はそれに従うのが一般的でした。

第二次世界対戦終了頃まで国の制度自体が家督相続制度だったため、

長男が全財産を引き継ぐことが当たり前なのだから 遺言書なんて必要ない。

…といった考えが常識のようになっていました。

財産の所有者に判断能力がなくなると不動産売却ができなくなる

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ところがインターネットの普及とともに世間に情弱者が少なくなってきたこと。さらに将来の経済的な不安を持つ人が多くなったこともあって、遺産分割でもめるケースが年々増加しています。

時代は大きく変わりましたし、法律や判例もたびたび変わっています。

財産の所有者に判断能力がなくなると、預金の払い戻しはできない。不動産の賃貸管理や売却処分もできなくなる。

認知症で判断能力が喪失すると資産が凍結する

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最近増えているのが、認知症で財産が凍結されるケースです。

それは認知症で判断能力を失っている場合などに起こり得ます。

75歳以上の4人に1人は要介護認定であり、高齢者がお亡くなりになるまでの「健康ではない期間」の平均は約10年と言われています。

その間に高齢者の判断能力の喪失などにより資産が凍結すると、成年後見人をつけない限り 子どもは自分の財産で親の介護費用を賄わなければいけなくなる場合もあります。

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遺言書の有無にかかわらず認知症で財産が凍結する

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例えば父親が85歳で亡くなり、この時の母親が82歳とします。

年齢から考えると この母親が要介護者になっている可能性が低くありません。

そんな状態で父親が遺言書を残さず亡くなって相続が発生した場合、母親が認知症で判断能力を失っていたら、遺産分割協義そのものができません。

遺言書があっても、遺贈される人に判断能力がないと 遺産は相続された後に凍結される。

逆にせっかく父親が遺言書を残していても、遺産のほとんどを母親に相続させる内容だった場合、その時点で母親に判断能力がない場合は相続した財産が凍結します。

相続時には認知症ではなく、判断能力があったとしても、のちに判断能力がなくなってしまえばやはり凍結します。

実家が空き家になる原因8パターン

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長生きは喜ばしいことですが、長生きすればするほどこういったリスクは高くなるため 資産の凍結という現実問題もますます増加していきます。

実家が空き家になる原因

所有者が重い認知症…判断能力の喪失により売買・賃貸ができない。

所有者の死亡+相続がまとまらない①…実家が故人名義のままで売却できない。

所有者の死亡+相続がまとまらない②…相続人が重い認知症で遺産分割協議ができない。

不動産の名義が共有①…共有者の合意が得られない。

不動産の名義が共有②…共有者の誰かが判断能力を喪失し 合意ができない。

不動産が負動産…買い手がつかない。

実家を売りたくなくて遺品整理もせずにそのまま放置…売れるタイミングが来ても処分ができない。

相続人全員が相続放棄(相続人不在)で実家が凍結状態。

 

高齢者夫婦だけの世帯では、将来実家に誰も住まなくなる可能性があります。その時に親の認知症や争族によって「実家の処分ができない問題」が浮上すると、そのまま空き家になってしまう可能性が高いです。

親に判断能力が亡くなっても実家の賃貸や売却をするには

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親が認知症などにより判断能力を失うと、賃貸であれ売却であれ、契約行為自体ができなくなります。

そんなことになっても実家の賃貸や売却を進める方法があります。

ほとんどが「親が元気なうちに…」というのがミソですね。

親が元気なうちに贈与する
親が元気なうちに売却する
親が元気なうちに任意後見契約を結ぶ
法定後見制度を利用する
親が元気なうちに信託契約を結ぶ(実家信託)

親が元気なうちに贈与する

親が元気なうちに実家を子供に贈与して名義変更しておけば、親に判断能力が亡くなっても 子供の自己所有として売却できます。

「贈与」はよく知られた手続なので、親も子も理解しやすいシステムですが、そこにはもちろん高額な贈与税や流通税などがかかります。

また、万一子が親より先に判断能力を喪失したり死亡したりすると、親の利益のためにお金を使うことは難しくなります。

親が元気なうちに売却する

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高額な贈与税を払いたくないなら、親が元気なうちに実家を売却する方法もあります。

親から子供に売却して名義を変更します。

実家の名義が子供に変更されれば、子どもが第三者に賃貸したり売却したりできます。

親から子への売却価格を時価とかけ離れた低さに設定すると「贈与」とみなされ「みなし贈与税」がかかりますから、適切な価格に設定しなければなりません。

この方法は子ども世代に実家を買い取る財力がないと現実的ではありません。

また実家に売れる見込みがあるならこの方法もいいですが、売れる見込みがないとかはっきりしない場合には、子が実家を買い取るのはなかなか決断しづらいかもしれません。

後見人制度を利用する

親が元気なうちに「任意後見受任者」を決めて任意後見契約を結んでおきます。

親の判断能力があやしくなってきたら家庭裁判所に申し立てて「任意後見監督人」を選任してもらい、任意後見がスタートします。

親の判断能力が亡くなっても「任意後見人に実家を売却する権限を与える」としておくことで、実家を売却することができます。任意後見人が代理できることは、代理権目録に決めておく必要があります。

実家の売却のように大きなお金が動く場合は、事前に後見監督人に相談しなければならず、これを怠ると解任される可能性もあるなど、なかなか難しい取り決めや大変な手続きが多くあります。

親が元気なうちに任意後見契約をせず、何も準備をしてこなかった人は法定後見の申し立てを行って、家庭裁判所が選任した後見人に手続きをしてもらうことになります。

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親が元気なうちに信託契約を結ぶ(実家信託)

後見制度を利用すれば 親の判断能力がなくなった時に後見人が不動産取引の代理権を行使できるようになります。

とはいえ後見制度は手続きが大変ですし、さらに家庭に裁判所が介入してくることもあり、かなりストレスフルだと思います。

そこでもう少しハードルが低い方法が、親が元気なうちに信託契約を結ぶことです。

引用元:相続会議

実家信託では後見制度を使わずに 名義を子供に変更して実家を管理します。

売買代金も贈与税もかかりません。後見人や監督人への報酬も不要。

実家の売却代金や賃貸料金そのものは親の財産なので、親の医療や介護に充てられます。

実家信託では名義の変更だけですが、名義人であれば実家を売却することができるわけです。

信託とは「信じて」「託す」制度。親子関係に難がある場合はそうそう契約に踏み切れるものではないかもしれませんが、信頼関係が揺らぎない親子なら 実家信託はとても有効な方法だと思います。

 

2025年問題…団塊の世代と呼ばれる人たち(第一次ベビーブーム)が2025年前後に続々と75歳を迎えますので、今後こういった問題はさらに深刻化していく可能性もあります。

今のうちにできる事は専門家に相談して、先手を打っておくのが賢明だと思われます。

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