高齢者の一人暮らしの限界!母の施設入所と実家を家じまいした体験談
これは2017年11月~2019年2月に起きた、母の精神的不調と家じまいのエピソードです。
当時の私は47歳、母親は73歳、弟は44歳でした。
高齢者が救急車をすぐ呼ぶ…母の精神的不調はここから始まった!
2017年の夏頃から母親と仲がよかった弟の関係がおかしくなり始めました。弟が言うには

いつも週末にお母さんと一緒に食事に行っているんだけど、ちょっとしたことでの言い争いが多くなっているんだ。お母さんは昔に比べてだいぶ頑固になってきている感じがする。
よくある高齢者の戯言だと思い、私はその場は弟の話だけを聞くにとどめていました。
しかしその年の秋頃から 母の携帯電話からしょっちゅう弟や私に電話がかかってくるようになりました。電話の内容は

体調が悪いんだよ。なんとかしてほしい。

近くの診療所で様子を見てもらいなよ。
…と私は母に声をかけたものの、診療所に行くことが億劫なようで 自分一人では動きません。
このように私たち兄弟が相手にしなかったら、母は救急車を頻繁に呼ぶようになってしまいました。
仕事中に救急車からの電話が携帯にひっきりなしにかかってきて、

病院へ搬送すべきですか?すべきではないですか?
…の判断を求められるようになりました。
体調不良が精神的不良につながったわけではなかった
母には体調の不良も確かにあったのかも知れないと思いますが、体調不良がひとつの引き金となって精神的不調につながってしまったのかと私は考えました。
体調不良により外に出る回数が少なくなる→筋力が弱る→自分の思ったように動けない→精神的に不安になる→電話を知っている人にかけまくる・・・といった悪循環が繰り返されていると感じたからです。
そのため、まずはじめに体調不良の原因と考えられたヘルペスを治療して、現疾患が改善されれば精神的な不調の改善もできるだろう…と想定していました。
しかしそんなことはありませんでした。
皮膚疾患の治療も治癒も関係なく、母の中で精神的疾患が進んでいくように感じたため、母を近くの精神病院に連れていき、受診後に短期(3か月)入院をさせました。
入院していると母は落ち着きを取り戻し、

早く家に帰してくれ!家に帰りたい。
…というので入院して3か月経過しないうちに退院することになって自宅に戻りましたが、母の精神的症状は完全には改善していませんでした。
もはや母は自分のことが自分でできなくなっていた
これらの経緯を見ていた結果 私が最終的に結論付けたのは、母は精神的症状による不調により もはや自分のことが自分でできないということ。
この状態を打破するために行政に相談に行き、精神病院へ再入院させ、要介護認定などの準備を進めました。
そして介護保険で母は当時「要介護3」と認定されました。
ふたたび母を精神科病院に入院させればしばらくは預かっていただけるのかと思っていたのですが、病院からは

最長でも3か月しか入院させることはできません。
…との連絡を受けました。
そのため2019年の1月から私は介護施設を毎週のようにまわって 母を受け入れてくれる施設探しに明け暮れることとなりました。
そんなある日 精神病院の近くの介護施設にたまたま2部屋空きができたので 私はすぐにその介護施設と契約。
そして2019年2月の中旬に母をその介護施設に入所させることができました。
母が認知症になる前に家じまいを決行!
介護施設に入所させたことで母からのひっきりなしの電話はなくなり、少し落ち着きを取り戻した…と思ったのもつかの間。今度は実家の空き家問題が浮上しました。
行政に相談してみると 市がサポートしている空き家対策の講習会を行っていると聞き、早速そのセミナーに参加しました。
そこでは 親に認知症の認定が下りると 家が売れづらくなったり売れなくなる…ということを知りました。
それで早めに母の承諾をもらい、家じまいに着手することを決めました。
その後は不動産屋と協働して 2019年11月に実家を売却することができました。
このこともすべてひっくるめて、私たちの母親の介護関連の案件は一応決着がついたと思っています。
家じまいが賢明!財産の所有者に判断能力がなくなる前に手を打つ
昭和から平成時代初期(おおむね1990年代初めころ)までは相続というと長男が主導権を握り、実化を継ぎ、遺産分割についてもほかの兄弟姉妹はそれに従うのが一般的でした。
第二次世界対戦終了ころまでは 国の制度自体が家督相続制度だったため、長男が全財産を引き継ぐことが当たり前なのだから遺言書なんて必要ない…的な考えが常識のようになっていました。
財産の所有者に判断能力がなくなると不動産の売却ができなくなる
ところがインターネットの普及とともに情弱者が少なくなってきたこと。さらに将来の経済的な不安を持つ人が多くなったこともあって、遺産分割でもめるケースが年々増加しています。
時代は大きく変わりましたし、法律や判例もたびたび変わっています。
認知症などで判断能力が喪失すると資産が凍結する
最近増えているのが、財産が凍結されるケースです。
どういうことかというと、認知症で判断能力を失っている場合などに起こり得るのです。
75歳以上の4人に1人は要介護認定であり、高齢者がお亡くなりになるまでの健康ではない期間の平均は約10年と言われています。
その間に高齢者の判断能力の喪失などにより資産が凍結すると、成年後見人をつけない限り 子どもは自分の財産で親の介護費用を賄わなければいけなくなる場合もあります。


遺贈される側にも判断能力がないと遺産相続後に凍結する
例えば父親が85歳で亡くなり、この時の母親が82歳とします。
年齢から考えると この母親が要介護者になっている可能性が低くありません。
そんな状態で父親が遺言書を残さず亡くなって相続が発生した場合、母親が認知症で判断能力を失っていたら、遺産分割協義そのものができません。
せっかく父親が遺言書を残していても、遺産のほとんどを母親に相続させる内容だった場合、その時点で母親に判断能力がない場合は相続した財産が凍結します。
相続時には認知症ではなく、判断能力があったとしても、のちに判断能力がなくなってしまえばやはり凍結します。
実家が凍結される原因まとめ
長生きは喜ばしいことですが、長生きすればするほどこういったリスクは高くなるため 資産の凍結という現実問題もますます増加していくでしょう。
所有者が重い認知症…判断能力の喪失により売買・賃貸ができない。
所有者の死亡+相続がまとまらない①…実家が故人名義のままで売却できない。
所有者の死亡+相続がまとまらない②…相続人が重い認知症で遺産分割協議ができない。
不動産の名義が共有①…共有者の合意が得られない。
不動産の名義が共有②…共有者の誰かが判断能力を喪失し 合意ができない。
不動産が負動産…買い手がつかない。
実家を売りたくなくて遺品整理もせずにそのまま放置…売れるタイミングが来ても処分ができない。
相続人全員が相続放棄(相続人不在)で実家が凍結状態。

2025年問題…団塊の世代と呼ばれる人たち(第一次ベビーブーム)が2025年前後に続々と75歳を迎えますので、今後こういった問題はさらに深刻化していく可能性もあります。
今のうちにできる事は、専門家に相談して、早めに手を打っておくのが賢明だと思われます。