自閉症スペクトラム支援方法の体験談!ある大人の引きこもり女性の話
30代男性 これは社会福祉士の私が関わった、長年引きこもっていたメンタルに障害を持つ女性が 行政の支援により社会参加できるようになった話です。
A子さん(20代女性)は幼少期から対人関係に鬱積しやすく、集団から孤立しがちでした。
高校時代から不登校気味になり、何とか卒業はしたものの 進学も就職もせずそのまま引きこもってしまいました。
両親(共に50代)は娘について「しばらくはゆっくりと進路を考えればよい」と思っていたのですが、やがてA子さんは外出すらしなくなり、自室から出てくることも少なくなりました。
そして引きこもり状態が10年近くになってきたため、父親が「さすがにこれはまずい」と感じて相談窓口にやってきたのでした。
相談に対応した社会福祉士の私は A子さんが女性であることから 女性の精神保健福祉士に一緒に担当してもらうことになり、精神保健福祉士が家庭訪問をしてA子さんと直接会うことができました。
当初はA子さんに何を聞いても何も答えてくれない状態が続いていました。
それでも粘り強く訪問を繰り返していくうちに A子さんはこんな要望を出してきました。

精神保健福祉士だけに話すのは嫌だ。他の人も、男の人でもいいから 複数の人に話を聴いてほしい。
そこで男性である私も一緒に訪問して話を聴くことができました。
A子さんは話し方がぎこちなく、私たちと目を合わせることがほとんどなく、手をぶらぶらさせるなどの独特の行動も見られました。
A子さんが学生時代に特段にいじめられたとか、きつく怒られたなどといった体験があったわけではなく、

なんとなく 集団になじめない。
…とずっと感じてきたということでした。
現状についてはA子さんなりに危機感は持っており、働くなど社会参加の希望はあるものの 外の世界に出ていくことに対する不安が強いということでした。

A子さんの状態は単なる性格等の問題ではないかもしれない。実際に社会的・精神的にしんどさを抱えていることから、精神医療を受けることが望ましいでしょう。
A子さんの両親もそれには賛成でしたが「病院に行く=外出する」ということ自体にA子さんには不安がありました。
そこで精神保健福祉士がA子さんが医師に会うまで なるべく誰にも会わないような状況を作るべく、

病院で受付を済ませたら車で待期する。そのあと診察のタイミングで診察室に入って、終わったらすぐに車に戻る…という流れはどうですか?
…と提案をしたところ、A子さんは

お父さんかお母さんと一緒なら…それでもいい。
精神科の初回診察ではA子さんに明確な診断は下りず、以後も両親どちらかの付き添いで通院を重ねて心理検査を受けたところ 自閉症スペクトラム障害および社交不安障害との診断が下りました。
医師から今後の治療方針について

まずは不安感については薬物療法をします。できればどんな形でもいいので どこかに通って社会とのつながりを持つことが望ましいです。
…とすすめられました。
※発達障害を放置すると二次障害(重ね着症候群)が起こることがよくあります。社交不安障害も二次障害のひとつと考えられています。
この件を私の知人で自立訓練事業所の経営者に相談したところ、

医師の診断があれば事業所をを利用ができるから、よかったら見学をしてみては?
…との提案を受け、精神保健福祉士とA子さん・両親に伝えたところ、

誰もいない状況なら 場所だけでも見学したい。

じゃあ 利用者が帰った後の時間を取るので、そのときに来てください。
その自立訓練事業所は皆で交流したり作業したりするスペースもありますが、A子さんのように集団に対する不安が強い人のために 個別で作業などができるブースも多く設けられていました。

実際は個別ブースじゃないとしんどい人が多いですよ。でもほとんどの人が、やがて個別ブースを出て 他の人と交流するようになります。
両親は「是非とも通ってほしい」と言いましたが、実際にA子さんがこの事業所を利用するまでには数ヶ月かかりました。
偶然にも、初回利用のときにA子さんの対応をした支援員は A子さんの同級生のB子さんでした。

A子さん!?小学校・中学校で一緒だったB子だよ!覚えてる?

えぇ?私なんかのことを覚えてくれている人がいるんだ!
自分のことを覚えていてくれた人がいることがA子さんにとっては嬉しく、このこともあって彼女は周囲が予想していたよりもスムーズに自立訓練事業所に通うことができるようになりました。
その後、A子さんは自立訓練事業所でパソコンをはじめ色んな訓練を受け、やがて個別ブースから出てきて 少しずつですが他の利用者とも遊んだりするようになりました。
またB子さんの勧めもあって地域のボランティア活動で掃除などを行うなどの社会参加ができるようにもなったということです。
自立訓練事業所の利用期間が終了した後のA子さんは、福祉的就労で働くことも予定されています。
社交不安障害とは?
社交不安障害は、社会恐怖とも呼ばれ、日本では、対人恐怖症、赤面恐怖症といわれていたものです。人前で恥をかいたり、恥ずかしい思いをすることを極度に恐れ、そのような社会的状況に強い不安や苦しみを感じ、避けてしまいます。
人前に出ると緊張する、わけもなく不安・恐怖するなどの症状から、その程度が大きくなると社会生活にも支障をきたすようになります。以前は「気の持ちよう」「性格の問題」とされることもありましたが、れっきとした障害です。現在では、10人に1-2人がかかるともいわれております。
「人前であがってしまったと」というようなことはだれでも経験するものです。またシャイな人もどこにでもいます。しかし、社交不安障害では、人前で恥をかいたり、恥ずかしい思いをすることを怖れるあまり、そのような社会的状況をすべて避けてしまい、外出や通勤・通学もできなくなるなど、日常生活や職業的あるいは社会的な機能が著しく障害されます。
すべての社会的状況を避けてしまう場合を「全般性の社交不安障害」、限定された2、3の社会的状況のみを回避する場合を「非全般型の社交不安障害」と、症状の程度で2つに分ける場合もあります。
小児期でもみられますが、10代半ばでの発症が多く、25歳以上での発症はまれといわれています。強いストレスを受けたり恥ずかしい思いをしたりした時に突然発症することもありますが、知らないうちに徐々に強くなっていく場合もあります。
引用元:ながうしクリニック
大人の自閉症スペクトラム(ASD)とは?
自閉症スペクトラム(ASD)は、大きく分けて 知的障害を伴う自閉症 知的障害を伴わない自閉症(アスペルガー症候群)の2つがあります。特に知的障害を伴わない自閉症(アスペルガー症候群)の場合、知的発達の遅れがないため、子どものころは学業成績や生活態度などにも問題がみられず、診断や支援を受けないまま大人になることが多いといわれています。
しかし、大人になればなるほど、コミュニケーションが難しくなり、対人関係などの悩みが発生します。大人になってから対人関係などがうまくいかない状況が続くと「どうして周りの人と同じようにできないのだろう」「自分は当たり前のことができていない」といったような違和感があり、生きづらく感じ、自尊心の低下につながることがあるといわれています。そのような不安な気持ちを持ち続けると、二次障害が発症することもあります。
ASDは「空気が読むことが難しい」「こだわりが強い」などといったような苦手がありますが、一方で「ルーティンが得意」「真面目」などといったような得意もあります。誰にでも得意・苦手を持っています。そのため、自分の得意を活かせること・苦手をカバーできることを整理し、環境を整えていくことが大切です。1人で整理することが難しければ、ASDをサポートする支援機関など活用しながら見つけていくという方法もあります。
引用元:りたりこワークス
