対人恐怖症のひきこもりを脱出して就労移行支援事業所に通った体験談
30代男性 これは私が1年くらいほとんど家から出られなくなった引きこもり生活を、福祉支援を利用しながら時間をかけて改めていった話です。
私は高校時代にいじめに遭って双極性障害と社交不安障害を患いました。
大学では潰瘍性大腸炎にかかって中退することになり、入院して治してから社会復帰して事務職に就いていました。
しかしある日、勤めていた会社で 仕事中にお喋りばかりして部下に仕事をほとんど丸投げしている上司が誤発注のミスが発覚。
その上司の上司から「この業務は誰が行ったのですか?」と聞かれて私が正直に答えたところ、直属の上司からの仕事はずしやパワハラを受け、退職するに至りました。
このパワハラについては労働基準監督署に相談に行ったのですが、ほとんど相手にしてもらえませんでした。
対人恐怖症について心理カウンセリングでアドバイスされたこと
パワハラ退職以降、私は人や社会というものが怖くなり家から出ることができなくなりました。
そこで高校時代に通っていた心療内科を再び受診して 心理カウンセリングを受けました。
その心療内科ではこのようなアドバイスをもらいました。
障害者支援サービスをフル活用しながら1年間療養してみた
うつ状態の時はとにかく寝て治すのが重要なので 処方された2種類の睡眠薬と3種類の精神安定剤で精神を落ち着かせることに努めました。
就労支援事業所に行くためには 自立支援の手続きを市役所で行います。
この手続きを行うと発行される自立支援医療受給者証を持っていると 診療代が1割負担になるので その点がとても助かりました。
その後は少しずつ外に出るようにし、最初は近所の古本屋によく行きました。日光を浴びることで脳内伝達物質が出ると うつ状態改善に良いと言われたからです。
またスポーツをすると体力も付き社会復帰に良いので 近所の体育館でランニングマシン等の機材を使いました。
その体育館は精神障害者手帳を持っていると利用料が無料になるのでとても助かりました。
そうして1年ほど経ってから、私は就労移行支援事業所に通い始めました。



一般就労を経て就労継続支援事業所に通うことになった
私が通っていた就労移行支援事業所では主にパソコンの資格取得のための勉強ができるのですが、パソコンは改めて勉強するほど苦手ではないので そこでは主にコミュニケーション能力を培うために利用しました。
手芸やレジンの作業をして実際にそれを販売することで社会復帰を目指しました。
その後は 一般就労のバイトを入れて過ごしました。
単発のバイトは交通量調査やイベント会場設営や倉庫内軽作業などでしたが、ほとんど人とのやり取りがなく、それまでの1年間に体育館で体力を付けていたので やり通すことができました。
しかしこれが長期の仕事になるとどうしても上手くいかず、一度はお歳暮のデータ入力の仕事に就いたのですが、人とのやり取りが発生すると緊張してしまって すぐに辞めてしまいました。
再び主治医とカウンセリングをし、
…と言われたので 現在は工場内軽作業の就労継続支援事業所に通っています。
対人恐怖症の引きこもりが精神疾患かどうかを見極めるポイント
人が怖い、何を話したらいいのかわからないなど、対人恐怖症の悩みを抱えた人は多いです。
ただ、誰でも多かれ少なかれ「対人恐怖」の感情を持って生きています。
あがり症だとかコミュ障だとかは程度にもよりますが 多くの人が抱える悩みでしょう。
しかし本物の「対人恐怖」はそんな単純なものではありません。
対人恐怖は被害妄想的に「わけもなく自分は人から嫌われる」という悩みを抱えています。
本当の悩みは「人が怖い」のではなくて「加害妄想」「加害恐怖」…つまり、自分の存在そのものが他人の迷惑になる、害になる…という思い込みです。
対人恐怖症の人は意外と人との「初対面」は平気という ある種の矛盾があって、いちばん苦手とするのは「半知り」…名前くらいは知っているけれどあまり親しくない相手です。
たとえば同じクラスだけど顔と名前を知ってるだけ、挨拶を交わすくらいしか知らない近所の人などが「半知り」で、こういうあいまいな関係を対人恐怖症の人はいちばん嫌います。
全然知らない人はどうでもいい。すごく親しい相手も緊張しないし大丈夫。だけどその中間にいる「半知り」に対しては

この人は自分のことをどう思っているんだろう
…という部分で大きく不安を感じてしまうのです。
だから初対面は平気、次に会うときが怖い。二度目が怖いのが病的な対人恐怖症の人の共通点といえます。
ただ対人恐怖の人は自分がどう見られているかについては敏感でも、他人についてはそんなに関心がなく鈍感なことが多く、ある意味「自己中心的な人」であるともいえます。
対人恐怖の人は他人を「鏡」にしてしまっているので、他人の目に映る自分の姿が気になって仕方がないのです。

相手の視線が怖い。自分の容姿が醜いのではないか!?自分の身体が臭いからみんなが自分を避けているんじゃないか!?
…など、考えが妄想レベルまで及び、最終的には「自分の醜さや臭さが他人に迷惑をかけている」=加害妄想に陥ります。
しかし対人恐怖の人に

だれもあなたのことをそんなに気にしていないよ。
…と本当のことを言ってもあまり意味がありません。
このセリフは自意識過剰な人には効果がありますが、対人恐怖の人には効果がないのです。
なぜなら対人恐怖の人は「自分が他人から嫌われている」と考えること自体が自分の「存在理由」になってしまっているから。
悩むことで自己愛を支えているややこしい状態です。
引きこもりの8割は対人恐怖を持っていて 被害妄想があると言われていますが、引きこもりの中から出てくる被害妄想は環境を変えると消えることが多いということです。
もし環境を変えても被害妄想が消えないなら、精神疾患を疑った方がいいでしょう。
精神病だと環境を変えても妄想が消えることはありません。
出来るだけ早めに心理カウンセリングを受けるか、メンタルクリニックを受診してみることをおすすめします。

