ゴミ屋敷住人がサービス付き高齢者向け住宅に入居するまでの体験談
30代男性 これは社会福祉士の私が関わった、ゴミ屋敷住人Aさん(80代男性)が福祉支援と生活改善によりサ高住に入居した時の話です。
ある日、近隣住民から相談がありました。

近所の家から異臭がする。数年前に奥さんが亡くなって、ご主人はひとり暮らしのようだけど 最近顔を見なくなった。万が一のことがあったら…と思って相談しに来たんだけど。
私はすぐにその地域を担当する社会福祉士に連絡し、私・民生委員の3人で一緒にAさんの家を訪問しました。
Aさんのお宅の庭は荒れ果てており、家も今にも崩れ落ちてきそうな状態でした。インターフォンを押してみるもそれ自体が故障しているようで鳴りません。
どうしようか!?と3人で顔を見合わせていましたが このまま放置しておくわけにもいかず、伸び切ったボーボーの草をかき分けながら 玄関から家の中に呼びかけたところ、よろよろとAさんが出てきました。
玄関を開けると家の中は完全なゴミ屋敷状態で、相当な異臭がしました。
Aさんに事情を聴くと

家事を完全に妻に任せていたので自分は何もできない。妻に先立たれて、最初は自分なりに家事をしていたのだが、だんだん片づけられなくなり、最後はこうなってしまった。
Aさんは外出はほとんどせず、食べるものは宅配や遠方の娘から送ってもらっているとのこと。入浴も身体が痛み、思うようにできないといった問題もありました。
そこでこの状況をまずは地域包括支援センターに連絡したうえで「ゴミ屋敷を片づけること」「福祉サービスを利用して日常生活を取り戻すこと」を目標にした Aさん支援チームが組まれました。
ゴミ屋敷片付けを自力で!ボランティアの「おかたづけチーム」結成
まずはゴミ屋敷状態を解決するために、社会福祉士が周囲に呼びかけて「お片付けチーム」を組むことになりました。
その中で中心になってくれたのがボランティアのCさん(60代男性)でした。
Cさんは清掃会社で働いていた経験があり、片付けのボランティアを快諾してくれ、数日がかりでゴミ屋敷状態のAさんの家を片づけました。
さらに社会福祉士が入浴介助をして Aさんは身体も清潔にしてもらいました。

こんなにきれいにしてくれてありがたい。もうこのまま死ぬと思っていた。
…おっしゃっていたそうです。
介護認定を受けてサービス付き高齢者向け住宅に入居
Aさんには介護認定調査を受けていただき「要介護2」の判定がつきました。
地域包括支援センターからはデイサービスとホームヘルパーを利用することを勧められ、Aさんも

出かける先がある方がいい。また、家事も助けてもらえるのはありがたい。
…と喜んで納得していただきました。
一方、Aさんの家はバリアフリーとは程遠い段差だらけの家で 身体が衰えたAさんが日常生活を送るにはかなり大変でした。
Aさん自身もその環境でのひとり暮らしに不安がある様子だったので、比較的安価なサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)へ転居することになりました。
社会福祉士や地域包括支援センターなどといった専門職・専門機関はもとより、民生委員やボランティア、近所の人などの力が合わさって、Aさんは清潔な住居に住み、デイサービスで楽しく過ごせるようになりました。
サ高住(サービス付き高齢者向け住宅)と老人ホームの違いは?
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)は、主に要介護度が高くない高齢者を対象にしたバリアフリー住宅です。一般の住宅と変わらないような自由度の高い生活ができ、なおかつ安否確認や生活相談などのサービスが受けられます。建築時に補助金も出ることから、昨今サ高住の施設数は増加傾向にあり、入居に際して「入居待ち」になるケースもほとんどありません。
一方で有料老人ホームは、自立した生活が可能な高齢者から介護度の高い高齢者まで、幅広い方を対象にした民間の高齢者住宅・介護施設です。入居した高齢者が心身ともに健康に生活できるよう、食事や介護、健康管理などのサービスが提供されます。
サービス付き高齢者向け住宅は、基本的に住宅単体では介護サービスが付いていません。そのため、お元気なかたのみを対象としたサ高住もあり、これらのサ高住では本格的な介護が必要になった場合は住み替える必要が出てしまいます。
一方で、サ高住に訪問介護などの在宅介護サービスを併設した介護対応が可能なサ高住もあります。また、厚生労働省が定める「特定施設」に指定されているサ高住もあり、これは介護付き有料老人ホーム同様の介護サービスを受けられます。どちらも多くは介護職員が24時間常駐し、必要に応じて介護サービスを受けることが出来ます。
「サービス付き高齢者向け住宅」の「サービス」とは、安否確認と生活相談のサービスのことを指します。サ高住はこれらサービスの提供を義務付けられた施設です。介護や看護、医療の資格を有する職員が日中に常駐し、それらのサービスを提供します。
一方で食事の提供や生活支援、夜間の見守りといったサービスは、サ高住では任意のサービスです。これらのサービスは施設によっては提供されない場合もあるので、サービス内容の詳細は事前によく確認しておくことをおすすめします。 引用元:学研ココファン