家族の死で認知症とうつ病を患った限界家族が福祉支援で立ち直った話
これは2017年5月~2018年2月にあった、家族のの死去がきっかけで崩れた親子が福祉支援を得て社会復帰できた話です。
登場する人物
Aさん:60代男性、当事者
Bさん:60代男性、Aさんの弟で相談窓口に来た人
Cさん:30代男性、Aさんの息子
Dさん:40代女性、社会福祉士
Eさん:30代女性、精神保健福祉士
Fさん:40代女性、地域包括支援センター職員
Gさん:40代男性、市役所障害福祉課職員
私:30代男性、相談窓口担当(社会福祉士)
6030の限界家族
Aさん(60代男性)は定年退職したのち週数回のアルバイトをしていました。同居する息子のCさん(30代)も普通の会社員として働いており、Aさんの奥さんと3人暮らしでした。
しかしAさんの奥様が急病で亡くなり、そのショックでAさんはアルバイトどころか日常生活も満足に送ることが難しい状態となりました。また、Cさんも同じくショックが強く 仕事に行くことができなってしまい 日常生活を送ることが難しくなりました。
当初はBさん(60代男性・Aさんの弟)が仕事の傍らで食事を届けに行ったり、家事を手伝ったりなどしていましたが、Aさん・Cさん親子はともにどんどん精神的に落ち込んでしまう様子でした。
そのうちにAさんは物忘れが強くなってきて次第に覚えていないことが増えてきました。さらに生活が完全に乱れてしまい、片づけができない、深夜徘徊などといった行動も増えていきました。
息子のCさんは休職期間が満了したあと自然解雇となりました。
こんな状態を見て困り果てたBさんが相談窓口に来られたのです。
私はDさん(社会福祉士)とEさん(精神保健福祉士)にこの話を伝えました。
そしてこの事案は介護サービスや福祉サービスなど支援が必要な可能性があるため 地域包括支援センターと協働してAさん・Cさんの支援チームを組むことになりました。
若年性認知症の父親とうつ病の息子への福祉支援
まずAさんは若年性認知症の可能性があることから、認知症外来を受診するとともに、介護認定調査を受けてもらいました。結果、認知症と診断され「要介護1」の判定となりました。
次にCさんは、Eさんから見るとうつ病の可能性があることから、精神科の受診を勧めました。すぐの受診は難しかったようですが、約1ヶ月後に受診し、うつ病の診断が下りました。
父親のAさんに対する支援はFさん(地域包括支援センター職員)が中心になって、介護サービスを受けながら生活を整えていくことを目標としました。
具体的にはデイサービスとホームヘルパーを利用して、生活習慣を整えて、外出して人と交流する機会を持つとともに、家事などを手伝ってもらいながらやっていくことでした。
息子のCさんに対しては精神科での治療を受けるとともに、福祉サービスを利用して社会復帰することを目標としました。
支援の具体的内容は以下の3点です。
うつ病の度合いによっては精神障害者保健福祉手帳が取得できる可能性があること。
自立支援医療受給者証を取ることによって医療費が軽減されること。
リワークや精神科デイケアなどを利用して、少しずつ働ける状態を目指すというものでした。
Aさん・Cさん親子の生活の乱れや、病状・症状はすぐには良くなりませんでしたが、少しずつですが支援を受けながら親子ともに元気になりつつありました。
CさんはGさん(市役所障害福祉課職員)とFさん(地域包括支援センター職員)の紹介や手ほどきを受けながら福祉センターで行われる当事者の集まりなどに足を運ぶようになりました。
Bさんが相談窓口に来てから約9ヶ月経ち、Aさんのデイサービス通いと ホームヘルパーと一緒に家事を行うことが習慣として定着し、デイサービスでは仲の良い友達もできました。
また、Cさんは非正規雇用ではあるものの、少しずつ働くことができるようになりました。
Bさんが比較的早期に相談に来たことと、Aさん・Cさんともに治療意欲があったことで、早めの解決につながった事例です。
また、地域包括支援センターや市役所などと連携しながら支援チームを組んだことによって、専門的な支援に迅速につながりました。
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