延命治療しない終活【リビングウイル】終末期医療の意思表示のやり方


延命治療しない終活【リビングウイル】終末期医療の意思表示のやり方

リビングウイル

もし家族が意識不明になったとして医師から延命措置について尋ねられたらどうする?延命治療をする?しない?そんな苦渋の決断を自分に下せるのか!?

この問いに、あなたならどう答えますか?

延命治療をしない選択ができるか否か!?問題~死にざまの選択肢は2つ

リビングウイル

あなたの家族が末期がんで意識不明に陥っているとします。

当然食べる力もありませんから、家族は医師からは「胃ろう」の決断を迫られています。胃ろうとは 腹と胃に穴をあけて管を通し、人工的に栄養補給して命をつなぐ方法です。

意識不明の本人に希望を尋ねることはできません。この状態がどのくらい続くかもわかりません。ですが一度胃ろうをすると心肺停止まで管を外すことはありません。

こんな場面に直面したら、あなたは胃ろうをさせますか。もしこれが自分の身に起こったなら 胃ろうをしてほしいですか。

人により考え方は様々ですので こんな言い方は賛否両論ありますが、一般論としては胃ろうは自然な死を妨げるものと解釈できます。人が自然な死を迎えるときには 食べ物が食べられなくなり、やせ細り静かに息を引き取りますが、それを妨げるものであることに変わりがないからです。

自分の病気が治る見込みがないほど重篤になった場合の「死にざま」は 元気な今はとても想像できないかもしれませんが、終活を進める上では あらかじめ考えておかなくてはならないことのひとつです。

死にざまの選択肢は2つ。とことん治療を重ねた上で 最期は力尽きて死んでいくのか。人工的に命を永らえさせるのをやめて、自然に亡くなるのか。

胃ろうや人工呼吸器などの延命施術をすると 亡くなるまで外せません。日本では尊厳死に関する法律が整っていないため、もし外せば、殺人罪に問われる可能性があるからです。実際、日本では患者を安楽死させた事件で、医師の有罪判決が確定しています。

※安楽死…助かる見込みのない病人を 本人の希望に従って苦痛の少ない方法で死に至らしめること。

延命治療と救命治療~救急車を呼ぶことの意味をわかっていますか?

リビングウイル

医療とは生命の維持と回復を目的として治療することです。そして治療には 命を救い元通りの生活に戻すための「救命治療」と、生命を維持するための「延命治療」があります。

在宅介護している終末期の家族の容体が急変し 家族があわてて救急車を呼んだとして、駆け付けた救急隊員に「終末期なので延命措置はしないでください」と言うケースもあるそうです。しかし救急は救命のためのもので「延命措置しないで」というのは 矛盾しています(パニックになる気持ちはわかりますが)

終末期にあって訪問診療や訪問看護を受けている在宅介護の場合、家族が延命治療をしないと決めていれば 救急車を呼ばないことも多いそうです。患者の容体が急変した時には訪問看護の緊急連絡先に電話するなど、相応の措置をしつつ最期の時に対応するということです。

リビングウイル
引用元:熊本市

医療技術の進歩により多くの命が救われる一方で、回復の見込みがないのに「死なせない」ためだけの治療が行われていることも事実です。

この場合の延命が患者にとって幸せなことなのかは甚だ疑問ですし、見守る家族にとっては さらなる医療費が投入される経済的負担がかかることも 目をそらすわけにはいかない現実です。

終末期っていつなの?延命治療は本当に必要なの?

リビングウイル

治る見込みがない病気で 数週間から半年程度で死に至ると予想される時期を「終末期」といいます。ただこの定義ではかなりアバウトです。

終末期はいつ?予想がつかないことが多い

リビングウイル

例えばがんが転移していても 5年生存率がゼロということはないです。終末期がいつ頃なのかは医師でもはっきりとわからないことも多いはずです。

私自身も42歳の時に乳がんを経験していますが、自分が当事者でありながら 当時は生存率とかピンと来なかったです。

本当の末期状態にでもない限り、みな同じように感じるのではないでしょうか。ある程度元気であれば、自分の死など想像できないものです。

ちなみに、終末期の容態の変化は 3パターンあります。

①2~3カ月で急速に悪化し死に至るケース(末期がんなど)

②良くなったり悪くなったりを繰り返しながら徐々に悪化して死に至るケース(心不全など)

③ゆるやかに状態が悪化していき死に至るケース(老衰・認知症など)

こうしてみても、余命宣告を受けるほど進んでしまった末期がん状態でもない限り、自分の終末期など予想できないのではないかと思います。

昨今は原則として病名と症状を告知するようになっていますが、余命告知はやはり難しいそうです。やはり医師でも 人の余命を正確に予測することは難しいからです。

延命治療は必要かどうかはその人次第

リビングウイル

生命の維持は、胃と肺と心臓(栄養と酸素と血液)を医療機器などでサポートすれば、何とか命を永らえさせることができるのだそうです。

自分で飲み込めなくなったらチューブで胃に直接栄養を流し込みますし、胃がダメになったら、大静脈から栄養を入れます。自分で呼吸ができなくなったら、喉に穴をあけて気管から人工呼吸器をつなげば 機械が呼吸を制御してくれます。

心臓が止まってしまったら心臓マッサージを施したり、AEDで心臓を動かしたりと できる限りの手を尽くします。人間の死は心肺停止ですから、それが確認されるまで ふつうは延命治療はつづけられます。

そんな状態で その人のいつまで命が続くのかは誰にもわかりませんが、それって本当に必要なことなのでしょうか。

人それぞれいろいろな考え方がありますが、私 個人的には、自分にはそういうものは一切必要ないなと思っています。

リビングウイルとは?【終末期医療の意思表示の手順】

リビングウイル

尊厳死の定義は 人間が人間としての尊厳を保って死に臨むこと。これはインフォームド・コンセントのひとつとされています。

回復の見込みがないなら 機械をつないで生かさずに、そのままにして自然に逝かせてほしい…ということだと思います。

医療が発達することはたいへん喜ばしいですが、同時に延命の技術が進み、命を永らえさせることも可能になりました。

医療機関の使命は人の生命を維持すること、回復させることなので、本人の意思はともかく、担ぎ込まれた患者に対して何もしないでおくということはまずありません。

もしあなたが尊厳死という「死にざま」を選ぶのであれば、延命治療を拒否する意思をはっきりと表明しておくことはとても大切です。

リビングウイルとは延命治療を拒否する意思を示した事前指示書を指します。

これは自分の意思として、本人がしっかりした意識があるうちに作成しなければなりません。

延命治療を拒否するのであれば まずはリビングウイルを作成し、家族に知らせて同意を得た上で 医師に渡しておきます。

リビングウイルの書式や書き方とエンディングノートの尊厳死宣言書

リビングウイル

日本尊厳死協会の正式な書式

公益社団法人 日本尊厳死協会に入会するとリビングウイルの正式な書式を協会で保管してもらえます。

リビングウイル
引用元:日本尊厳死協会

エンディングノートの尊厳死宣言書

京都市で配布しているエンディングノートの中には、尊厳死宣言書のページがあります。

リビングウイル

引用元:京都市朱雀地域包括支援センター

リビングウイルに特化したエンディングノートもあります。

公正証書で尊厳死宣言書を作ることができる

リビングウイル

リビングウイルは公証人役場で公正証書で作ることもできます。

公正証書とは?相続と終活のための公正証書の種類をわかりやすく解説
公正証書とは?終活準備の書類は遺言書だけでいい?老後の心配事に備えるには?

リビングウイルの文書を作成したら 本人と家族全員が目を通して 自署・捺印します。後見人がいる人は、後見人からも署名と捺印をもらっておくといいです。

リビングウイルは2部用意し、1部は携帯しておくのがおすすめです。保険証などと一緒に保管していれば、いざというときに見つけやすくなります。

その後の将来、本人が介護状態や寝たきりになったときに かかりつけ医に提出し、医師にも延命治療を施さないでほしい旨を了解してもらいます。

リビングウイルには法的効力がない

リビングウイル

2021年8月現在、尊厳死に関する法律はありません。つまり ネットでダウンロードして作ったものであろうと公証人役場で公正証書を作成したものであろうと、実はリビングウイル(尊厳死宣言書)には法的効力はありません。

公正証書でリビングウイルを作れば、個人で作成したものよりは社会的な信用は得られますが、現在は医師や病院に延命治療の拒否などを伝え、本人の意思を尊重してもらうためのツールとして利用するにとどまります。

尊厳死宣言書作成のほかに自分の意思を反映させる方法にアドバンス・ケア・プランニング(ACP)という方法もあります。「人生会議」とも呼ばれています。

「人生会議」とは、もしものときのために、あなたが望む医療やケアについて前もって考え、家族等や医療・ケアチームと繰り返し話し合い、共有する取組のことです。厚生労働省では、今まで「ACP:アドバンス・ケア・プランニング」として普及・啓発を進めていましたが、より馴染みやすい言葉となるよう「人生会議」という愛称で呼ぶことになりました。
引用元:厚生労働省

終末期医療の希望や意思を、家族に医師や介護関係者を交えて定期的に話し合い、共有していく取り組みのひとつです。

ACP人生会議ノートとやり方!情報共有にエンディングノートは必須
acp人生会議で自分の最後の希望を伝えるやり方とエンディングノートの使い方を解説。

リビングウイルを受け入れてもらえるかどうかは医療機関や医師次第ではありますが、最近は尊厳死やリビングウイルについて理解を示す医師が増えてきているということですから、事前に周知しておけば、万が一の場合に自分の希望が叶う確率はだいぶ上がると思います。

協会は今年もリビングウイル(LW)が役立ったかどうかのアンケート調査を行いました。

2020年は675人から回答を頂きました。568人(84%)がLWを医療者に伝えていて、「LWは受け入れられましたか」との質問には、「十分受け入れられたと思う」が71% 「どちらかといえば受け入れられたと思う」は24%で、95%のご遺族がLWの効果を認めています。

「LWはご家族にとってどういう意味を持ったか」を伺うアンケートは 複数回答で、一番多かったのは「本人の意思を実現出来た。(413人)」 次に「医療方針を決定するに当たり、家族にとって迷いがなくなった。(350人)」更に「医師とのコミュニケーションに役立った(226人)」「LWを持っていることで本人が安心して暮らせた(190人)」でした。
引用元:日本尊厳死協会

リビングウイルと同時に最期の緩和ケアや終の住処について考えておく

リビングウイル

リビングウイルと併せて 最期に自分がどこで息を引き取りたいかを考えておくことも大切です。

終の住処を慣れ親しんだ自宅にするのか、子どものところで世話になるのか、あるいは病院や老人ホーム、緩和ケア病棟、ホスピスなどの施設という選択肢があります。

病院は人を生かすために治療を行うと同時に 終末期で延命治療をやめた後の看取りは緩和ケア病棟などで担当します。

終末期には 誰でも高い確率で肉体的苦痛が発生しているはずですが、痛みだけではなくさまざまな不快感や苦しさがあるなら緩和ケアを積極的に行ってもらった方がいいと思います。

最期の日までできるだけ苦痛の少ない日々を過ごし、最期は「痛くない死に方」をしたいと思うのは万人共通の思いです。

【大原則】医療行為への同意は本人しかできない

リビングウイル

最後に、大原則として 医療行為への同意は本人にしかできないことを押さえておきましょう。

そうはいっても往々にしてあるのは 本人が急変した場合や意識不明下で 今後の医療方針につて家族が決断を迫られるケースです。

もっとも身近な家族であっても、人の生死に関する決断は非常に責任が重く、下した決断が本当に良かったのだろうか!?などと 後々思い悩むことも多々あります。

そんな苦渋の決断を家族にさせるのは、誰もが本意でないでしょう。できる限り生前に自分の意思を形に残しておくのがいいと思います。

リビングウイル

私の父は12年前に他界しています。食道がんで2年ほど闘病していました。何度か入退院を繰り返していましたが、最後に入院した時には医師から「余命1カ月」と言われました。そのときの余命宣告は家族だけでした(当然と言えば当然ですが)

余命1カ月と言われた父は3週間後に亡くなりましたので、医師の読みはほぼ当たっていました。最期は多臓器不全から意識不明になり、半日ほど昏睡状態が続いたのち、眠るようにしてこの世を去りました。

それまで父の苦しんでいる姿をずっと見てきたので、力尽きるときにはもうそのまま逝かせてあげたい。父に延命治療など絶対いらない!と私は思っていました。当時は尊厳死のことなど全然知りませんでしたが。

医師から余命1カ月を告げられた時 同時に延命治療についての選択も 家族が迫られました。その病院では本人にはそのことを尋ねなかったようです。聞かれたとしても、おそらく本人も延命など望んでいなかったと思いますが。

うちでは父の終末期医療について このような選択をしましたが、同じ境遇でも 延命治療を選択するご家庭はたくさんあるでしょう。家族としては 少しでも長く生きていてほしいという気持ちからです。

うちの息子なども、こういう話をたまにすると「それでもずっと生きててほしい」と言うんですよね。

オレンジ
オレンジ

これはちょっとヤバいんじゃないかな…。万が一の時、下手すると延命治療されちゃうんじゃないかな(汗)

・・・なんて思ってるんですけれども。

息子は死に関する話題をすごく嫌がりますし、尊厳死についても否定します。彼は今 大学生、若いんです。たぶんこういう話は先延ばしにしたいお年頃。これは時間をかけて説得していくしかないなと思っています。

リビングウイル

とにかく延命治療をしないと考えている人は 自分の体と頭がしっかりしている間に尊厳死の意向を示す書類を作成し、家族に伝えておくことが重要です。

本人が延命治療しないことに同意していても、家族の理解がなければ希望通りにはなりませんから。

みなさんもこの機会に、リビングウイルについて一度考えてみませんか。