エンディングノート・遺言・遺書の使い分けと安心安全な分冊のすすめ
一般的な市販のエンディングノートは紙の冊子タイプで、1冊にすべての情報をまとめるオールインワン型がほとんどです。
1冊のノートに情報が一元化されていると、必要な情報がすぐに見つかりますし、持ち運びも便利であるなど、取り扱いにメリットが多くあります。
ですが、すべての情報をひとつにまとめることは様々なリスクもあります。
ひとめでエンディングノートとわかり財産などの情報が書かれていれば、盗難・紛失に遭ったり、それがもとで犯罪に巻き込まれる可能性もあります。
財産相続のことが書かれている場合、誰かにノートを見られたら不都合なことがあるかもしれません。
自分史や大切な人へのメッセージにしても、書いておくのはいいけど それを生前に読まれたら気恥ずかしくて…となりませんか。

気恥ずかしい以前に、完全にフライング(汗)
基本的にエンディングノートに書き込む項目の多くが個人情報やプライバシー情報であるため、生前に見られたくないことが多いはずです。
エンディングノートに書き込む内容は「生前に見られてもいいもの」と「生前に見られては困るもの」に大別できることがわかります。
そこで大別できる項目のノートを分冊することを ここではおすすめします。
ノートは2冊以上に分冊して作ると安心・安全
エンディングノートは基本的に2冊以上に分けて作成・保管した方がいいのです。
2冊というのは、前述のとおり 生前に見られてOKなノートと、見られては困るノートです。
見られては困る情報は人によって様々ですから、どこで線引きするかも人それぞれですが、一般的には医療情報は見られてOK 財産や相続情報は見られてはNGでしょう。
- プロフィール・自分史
- 医療の情報
- 終末期医療の希望(延命措置など)
- 介護の希望
- 葬儀やお墓の希望
- 財産について
- 遺産相続
- 死後の様々な事務処理について
- 大切な人へのメッセージ
- プロフィール・自分史を見られたくない人もいる
エンディングノートの内容の実行者を決めておくことも重要!
エンディングノートを作り始めたら、それと同時に「エンディングノートの内容(希望)を誰に託すのか」も考えておきましょう。
いろいろな希望や思いを書き込んでも、それを読んでもらうだけでは「実行」までたどり着けない可能性もあります。

この希望を誰が受け止めてくれるのか。

エンディングノートを誰に頼むのがいちばんいいのか。
これらの点もとても重要です。
自分が亡くなった時に配偶者に頼めればそれがいちばんいいかもしれませんが、自分も相手も高齢だった場合、ノートを見ただけで終わってしまい、実行まで至らないかもしれません。
もし頼りになる人がいるのなら、そちらに頼んだ方が信頼性が高いでしょう。
ノートの表紙や、ノートを入れておく箱があるなら その箱のふたの上に、特定の人を指名して書いておくのがいいと思います。
こんな感じで明記しておきます ↓↓↓

袋とじ
こちらは↑↑↑ 東京都狛江市が無料配布しているエンディングノートに付属している「袋とじ」用のシートです。
これはネットでPDFファイルをダウンロードし、印刷して手書きして仕上げるタイプのエンディングノートです。
見られたくない情報に対してこのシートで袋とじにして 第三者による開封を防止するため(法的効力はないですが) 開封者を指名しているのですね。
袋とじまでにはしなくても、ノートの表紙や保管箱に、こういう文言を目立つように貼っておくのはいい手だなと思います。
遺言書と違ってエンディングノートは執行者を指定しても法的な強制力も拘束力もありませんから、その通りに実行されるとは限りません。
でも誰か特定の人を指名したり、宛名にして託した方が 内容次第ではもめる事柄でも「個人の意思だから」が通りやすくなることは考えられます。
つまり決定権の優先順位ははっきりさせておいた方がいいということです。
ただし、この「特定の人」が遺族以外、たとえば友人などの第三者であるときは注意が必要です。
指名された人が遺族から不審がられたり警戒されたりすることもあります。
そんな思いをさせては申し訳ないと思うなら、任意後見契約や財産管理等の委任契約を結んでおくなど、あらかじめ策を講じておくのが得策です。

ごく普通にエンディングノートを遺族の誰かに託すのであれば 個人の最後の意思としてすんなり希望が通るのではないかと思います。
エンディングノートと遺言・遺書の使い分け方
財産や遺産相続のような、生前に誰かに見られたり知られたくない内容は、はじめからエンディングノートに書かないのも一つの方法です。
エンディングノート=遺言書と思っている方が多いですが、これは間違いです。
これらは目的に応じた使い分けをしなければいけません。
法的効力が発生するのは遺言書のみで、エンディングノートは法的効力を持ちません。
エンディングノートも遺言も遺書も、自分の死後に思いを託す点では共通していますが、相違点は法的効力を持つか持たないか。
遺言は民法の定めに従って遺言書を作成すれば法的効力が発生しますが、エンディングノートと遺書にはそれがありません。
- 法的効力なし
- コストは無料~数千円程度
- 書き方は自由。書式やレイアウトも自由自在。
- 開封OK いつでも本人の自由
- 生前から死後のことまで自由に書ける
- 法的効力あり
- 公正証書遺言は数万円以上
- 書き方は民法の規定に則らないと無効になる。
- 自由勝手に開封できない。
- 死後のことについて書く
いずれも家族や特定の個人にあてて書いたものである点では同じですが、遺書は自分の死後に読んでもらうものであり、エンディングノートは生前と死後 どちらでも読むことはできます。
遺言は法律上の効力を持つので書かれていることの実現性が高いですが、遺書とエンディングノートではそれが不確実であり、あくまでも個人の希望を伝えるにとどまります。
受け取った人が故人の希望をかなえてあげる必要性も強制力も存在しません。
さらに遺書は誰かにあてたプライベートな手紙(私信)ですが、エンディングノートは自分の気持ちを整理するためのツールで、メッセージも書けますが 手紙ではありません。
これらは全くの別物ですが 終活グッズとしてそれぞれをうまく使い分けると、これからの人生をもっと楽しく豊かにすることができます。
財産関係の情報についてははじめから遺言書を作り、エンディングノートには「遺言書の有無」についてのみ記載しておくのが一番安全です。

遺言・相続
これは↑↑↑ 京都府京都市で無料配布しているエンディングノートの中の1ページです。
遺言の有無・作成日・保管場所・関係者の連絡先などを記録できるようになっています。
このように重要な部分だけ「備忘録」としてエンディングノートを利用すれば、「その日」が来るまで詳細事項を人目に触れさせることもなく、安心です。