私が死んだらデジタル遺品はどうなる?家族でも相続できない一身専属
この記事でいうところの「デジタル遺品」は 主に「オフラインのデジタルデータ」と「オンラインのインターネットサービスのアカウント等」を指します。
そもそもデジタル遺品とは?
2021年現在、デジタル遺品についての法的な定義は存在していません。
「デジタル遺品」という呼び名からして 故人が遺した「デジタルデータ」にまつわるものだということはわかりますが、明確な法的定義はないのです。
現時点では、パソコンやスマートフォンなどのデジタル機器そのものもデジタル遺品と呼ばれていますが、これらは実体のある「物」ですから「遺品」としての取り扱いは難しくはありません。
しかし難しいのはその中身であるデジタルデータやインターネットサービスにまつわるアカウントなどの実体がないもの。
これらもすべて含めて「デジタル遺品」と呼びますが、明確な法的定義がないだけに その取り扱いが難しいものとなっているのが現状です。
デジタル「遺品」なのに相続できないものがある!?
ひと言で「デジタル遺品」といっても、それがインターネットにつながっているオンラインなのか、ネットにつながっていないオフラインなのかによっても、だいぶ取り扱いが違ってきます。
オフラインなら故人が遺したデジタルデータはきちんと手順を踏みさえすれば「自分だけのもの」として処理することが可能です。
しかしオンラインとなると第三者をまき込み、サービス契約をしていることがほとんどなので その取扱いがデリケートだったり 複雑だったり、気を付けないと後々ビミョーな展開になることもありますので注意が必要です。
- デジタル機器に保存されたデジタルデータ。ネットなしでも機能するもの。
- 文書ファイル
- 画像データ
- インストールしたアプリ
- 閲覧履歴
- PCやスマホに保存されているデータは所有権が認められない=相続できない。
- インターネット接続を前提とし、契約をはさんでいるもの。相続人とサービス提供者間で処理をする。
- インターネットサービスのアカウント
- ネットバンク・ネット証券口座のアカウント
- SNSアカウント
- クラウドサービス
- 一身専属性であれば相続の対象外となる。
オフラインのデジタル遺品には所有権がない=相続できない
デジタルデータは「実体」がありません。実体がないものは民法上では所有権の対象にならないとされています。
原則として 所有権を認められないものは相続ができません。ただし、

データが保存されているデジタル機器なら「物」だから所有権がある=相続の対象
デジタル機器の所有権の相続から 機器内に保存されているデータを相続人が引き継ぐことができます。
そこで相続人はデジタル機器内のデータを処分することは自由と考えられています。
故人のオフラインのデジタル遺品をどうしても欲しい場合は、相続人の遺産分割協議で、そのデジタルデータが保存されているデジタル機器を相続するのがいちばん簡単なやり方です。
もしもほかの相続人がそのデジタル機器を相続する場合は「データの共有を条件に相続を認める」などの条件をつけさえすれば お目当てのデータを手に入れることができます。
ちなみに、ちょっとややこしいのですが、オフラインのデジタル遺品の所有権は認められなくても、デジタル遺品の知的財産権(著作権など)は相続の対象です。※著作物に該当するオフラインのデジタル遺品限定。これ以上の詳細が必要な方は専門家にお尋ねください。
【一身専属】オンラインのデジタル遺品には相続できないものがある
オンラインのデジタル遺品の場合は、それに一身専属があるかどうかによって相続の可否が分かれます。
オンラインのデジタル遺品の中には「個人の一身に専属したもの」(一身専属)が結構あります。
一身専属とはわかりやすく言えば「契約した人にしか使えない」という意味です。

一身専属性があれば、それは相続人にも承継されません。つまり相続の対象外です。
一身専属であるかどうかを確かめるには、インターネットサービスの利用規約を確認します。
利用規約や「よくある質問」の中に

本サービスはお客様に一身専属的に帰属します。

「会員の死亡時の手続き」について・・・
「利用者の死亡によりサービスが停止します」
…等の記載があれば、それは一身専属性があると考えられます。逆に一身専属性がないなら、それは相続の対象になります。よくわからなくて心配な方はサービス提供者に問い合わせてみましょう。
どうしても故人から引き継ぎたいデジタルデータ(ブログやアフィリエイトサイトなど)は 相続が発生する前に運営会社に相談して対処法を確認しておかないと泣きを見ることもありますので、しっかりとチェックしておくことをおすすめします。
このようにデジタル遺品の取扱には注意が必要です。
生前整理も兼ねて、自分や家族が利用しているインターネットサービスの利用規約などを、面倒でも一度確認しておくと安心です。