【負動産の処分】空き家の相続放棄!土地を国庫に帰属させた体験談

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【監修者】
オレンジ@終活ガイド

生前整理(身辺整理)という名の断捨離にいそしみつつ、アラカンでの熟年離婚を画策中のおひとりさま予備軍・関東在住50代女性が「オレンジログ」の中の人です。

終活に活かすため終活ガイド1級とホームヘルパー2級資格を取得。最期まで在宅で過ごしたいおひとりさまの痛くない死に方を模索・実践していきたいと考えています。

「事実は小説よりも奇なり」このブログでは多くの方の体験談をもとに、人生100年時代に備えた使える生活&終活のお役立ち情報を紹介していきます。

【負動産の処分】空き家の相続放棄!土地を国庫に帰属させた体験談

空き家の相続放棄

今回のトラブルが起きたとき、僕は28歳でした。

亡くなった大叔父の年齢は78歳、僕の母方の祖父の弟です。

大叔父は昔に離婚しており、別れた奥さんとの間に娘さんが一人して存命していましたが、その事実を私たち親族が知るのは大叔父の葬儀の少し後でした。

今回のトラブルの解決に奔走したのは僕の両親で、当時父が56歳、母は54歳でした。さらに母の姉(伯母) 55歳が登場します。

大叔父はずいぶん前から体調が悪く時折入院したりしていましたが、面倒を見てくれる身寄りがいなかったので、何かある度に私の母が面倒を見にいっていました。

そんな状態が続いていましたが、2018年末に突然大叔父は倒れて救急車で運ばれましたが、搬送先でそのまま帰らぬ人となりました。

大叔父が住んでいた家の維持を誰が引き継ぐか問題

空き家の相続放棄

大叔父は 祖父が亡くなって祖母が施設に入居したときに、この家に住居を移しました。

当初はひいお婆ちゃんと2人で暮らしていましたが、そのひいお婆ちゃんもその数年後に亡くなり、以降はずっと一人暮らしでした。

私自身は大叔父のことはけっこう憶えており、子どものころによく遊んでもらった記憶がありますので、大叔父が亡くなったと聞いたときは本当にショックでした。

大叔父の葬儀が行われましたが、葬儀会場は質素で親戚がちらほらといる程度。集まった親族は高齢者ばかりで静かな葬儀だったのを覚えています。

葬儀の手配は僕の両親と親戚数人が取り仕切り、死後事務などの手続きで忙しそうな日々が続いていましたが、彼らの最大の悩みはそれとは別にありました。

それは大叔父が住んでいた、つまり母の実家の維持を今後は誰がどうするか?という問題が浮上したのです。

責任のなすり合いばかりで話が一向に進まない親族会議

空き家の相続放棄

大叔父は一人暮らしだったので、当然その家には誰も住んでいませんでした。

伯母(母の姉)も嫁いで家庭を築いていますから、大叔父の血縁者の伯母も母も その古い家に住むつもりは毛頭ありません。

大叔父が住んでいた家は とある限界集落化した田舎にあります。家屋もとても古く、そのまま住もうにもリフォームが必須なほど老朽化が進んでいました。

誰も住まないにしても 相続すれば不動産を維持していくのに固定資産税が毎年かかってきます。

親族会議で「それを誰が支払うのか?」という議題になったとき、私の両親は家を解体することを提案しました。

家を解体して更地にすれば建物にかかる固定資産税はなくなりますが、それは建物の税金分だけです。

更地にすることで土地に対する税の軽減措置がなくなります。

また更地にしないで老朽化した建物を放置しておけば、近い将来特定空き家に指定されることは間違いありません。

特定空き家に指定された場合、固定資産税は6倍に跳ね上がります。

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解体せずに老朽化した家をそのままにしておけば この先倒壊するなどの危険性もあります。

最悪 もしそんなことが起こって近隣に迷惑をかけるようなことがあれば、今度はこちらがその損害賠償を請求される羽目になる可能性さえあります。

空き家の相続放棄

どちらに転んでも救いがない状況の中で「結局、誰が空き家の対応をするのか?」という話になると、それ以上話が進まなくなるのです。

古い家だから やはり解体して更地にするのが最善ではないか…という意見の堂々めぐりとなりましたが、解体費を見積もってもらったところ、300万円以上かかることがわかりました。

その解体費をだれが払うのか?となると、みんなうつむいてしまいます。

特に母と叔母は 家の解体にそんな大金を払うのは嫌のようでした。

解体費の支払いを誰がするか?という話になると、お互いに言い争いこそしないものの、全員がほかの人になすりつけようとしていたわ。

…と、私は後に母から聞きました。

伯母も親戚たちも自分たちの生活があり、生きていくだけで精一杯の人たちです。そういう気持ちになるのは致し方ないところ。わからないではありません。

親族の誰も知らなかった大叔父の一人娘が登場

空き家の相続放棄

遺産相続協議についての事態が膠着状態になり、ただ時間だけが過ぎ去っていたころ、急展開が起こりました。

なんと、大叔父の娘さんが現れたのです。

大叔父には離婚した奥さんの娘がいたのですが、母も伯母も、親族会議に同席した人たちも そのことを全く知りませんでした。

大叔父とふだんから親交があった友人の1人がたまたまそのことを覚えていて、娘さんに大叔父の訃報連絡をしたということでした。

大叔父は離婚後、娘さんとの面識はまったくなかったようですが、一人娘のことをいつも気にかけていたとその友人は言っていました。

そしてその後に大叔父の娘さんを迎えてのさらなる親族会議を開き、相続や解体費に関する話し合いが行われました。

空き家の相続放棄

娘さんも家庭を持っているので、この実家に住居を移すつもりもないとのことでしたから、私の父が次の提案をしました。

これは「相続の放棄」という形をとったほうがいいのでは?300万円以上かかる建物の解体費用を個人で払うことも、動産を相続することも 現実問題として厳しい。

 

今このタイミングなら相続放棄をすれば問題を手放すことができるはず。家庭裁判所で手続きをすれば負債は最小限におさえられると思う。どうだろうか?

同席した親族も全員がこの意見に合意し、相続放棄の方向で話が進んだため、この問題はこれ以上のトラブルには発展しませんでした。

大叔父の負動産は国庫に帰属して一件落着

空き家の相続放棄

現在の大叔父の家があった土地はきれいに解体されて更地になっていますし、娘さんによるさまざまな手続きのおかげで土地は国が管理しているということです。

この体験を通して私が感じたことは、身寄りのないおひとりさまの親戚がいる人は 早めの終活を勧めるように助言した方がいいということです。

現在の日本は晩婚化が進んで独身の人が増えていますし、それは今後もさらに増えていくことでしょうが、おひとりさまだったり身寄りのない親戚が亡くなったりすれば 何らかの遺産相続のトラブルが起こります。

我が家の件では 相続で大叔父の戸籍を辿って遡れば遅かれ早かれ一人娘さんの存在には行きついたかもしれませんが、友人が先手を打ってくれたおかげで早々に事を運ぶことができ、ラッキーだったと思います。

親族会議で結論が出ずにずるずると時間が過ぎていたら、相続の放棄のタイムリミット(3か月)をうっかり切らしてしまっていたかもしれません。

相続放棄の届け出期限までに手続きが完了しなければ、不本意であっても負の遺産を相続することになります。

この体験は、相続や終活のトラブルを最小限に防ぐため、日頃から親戚同士で「遺産をどうするか?」についてを少しずつ話し合う機会を設ける重要性を痛感した出来事でした。

【参考】相続人全員が不動産の相続放棄をしたら?空き家の管理義務は?

空き家の相続放棄

不動産を相続する権利のある相続人(被相続人の子、親、兄弟姉妹)全員が、被相続人が所有していた実家などの不動産の相続を放棄すると、その不動産は国に継承されるのです。

ただし、不動産を国庫に帰属させる手続きを行うには、弁護士や司法書士などの第3者を「相続財産管理人」とする申請を行い受理された後、その不動産に相続人がいないことを法律的に確定させなければなりません。

また、たとえ相続放棄が成立して固定資産税の支払い義務がなくなったとしても、相続財産管理人が管理を開始するまでは、空き家の管理義務自体は所有者に残る可能性が大きいのです。そのため、万が一空き家をめぐって周辺の住民とトラブルが生じたり、賠償を要したりする事故が起きてしまった場合は、その責任を負わなければならない可能性があります。

相続放棄をしたとしても、相続財産管理人が決まるまでは、空き家の管理義務が完全になくなるわけではないため、空き家を放置しておくわけにはいきません。もし遠方に住んでいるなどの理由で、相続財産管理人が管理を開始するまで自身での空き家の管理が難しい場合は、専門業者への依頼を検討してみましょう。
引用元:日本空き家サポート